追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

文字の大きさ
83 / 249
第四章 戦争と勇者編

三話 青年、疑惑を抱く

しおりを挟む
「申し訳ありませんでしたぁ!!」

 鬼の形相で迫りくるルスカに対して、地面と一体化するのではないかと思うほど両手をついて額を擦りつける老魔導師クリストファー。
先ほどまで腰が曲がった老齢な男性と同じとは思えない程に、綺麗に背筋が伸びた土下座。
どうしてやろうかと考えていた最中に現れたクリストファーに対して、すっかり毒気を抜かれただけでなく、一見これは世間体が悪すぎる。

「ま、まぁ今後ワシの弟子などと名乗らなければ良いのじゃ」
「申し訳ありませんでしたぁ!!」
「もう立つのじゃ、年寄りにそんな事させていたら、何かワシが悪く見えるのじゃ」

 クリストファーはゆっくり立ち上がり腰を曲げて杖を支えに皆に歩み寄ると、一礼する。
物腰の柔らかそうな表情をしてはいるが、目を覆う位太く真っ白な眉の隙間から覗く眼光は、アカツキでも分かるほど鋭く、凄みを感じていた。

「お久しぶりですのぉ、ルスカ様」
「うむ、まぁ元気そうで何よりじゃ」

 クリストファーは、改めてルスカにだけに一礼すると流星とカホを一瞥する。

「どうやら、不肖の弟子を助けて頂いたご様子。痛み入りますのぉ」
「気にする必要はないのじゃ」
「良ければ儂の家へ来てくだされ。こんな所で立ち話なんですのでのぉ」

 言葉に甘えお邪魔する事にするが、流星とカホは荷物を自宅に置いたら駆け付けるといい、彼らにとって懐かしい自宅へと入っていった。

「初めましてクリストファーさん。私はアカツキ・タシロと言います。つかぬことお伺いするのですが、雨宮さんもクリストファーさんの弟子だと聞いたのですが」
「レイカくんの事かのぉ。そうか、お主も転移してきた者なのだな。うむ、今は家におるぞい」

 雨宮麗華。アカツキのクラスメイトで、その立ち振舞いと名前からどっかのご令嬢によく間違えられるが、両親はサラリーマンである。
二人のクラスメイトを従えて歩く姿は、どこかの悪役令嬢のように見えていた。
アカツキとは、違った意味でクラスの輪に溶け込まない生徒、それが雨宮麗華だった。

「レイちゃん……」

 弥生は、そう呼ぶが麗華が弥生を呼ぶ時は“弥生さん”だった。弥生の悪口を言っていた……そう、噂されるほど二人の距離感は違っていたのをアカツキは、いつも遠巻きにも感じていた。

「ここですのぉ」

 石造りの家は、黒く塗られた外壁に赤い屋根と中々周りの家々に比べて突出した異様さを孕んでいる。
敷地はかなり広く、門前には“あのルスカ・シャウザードの弟子、魔導師クリストファーの魔法道場 弟子随時募集”と看板が張られていた。

 赤い屋根に黒い壁と目立つ様にしているのは、弟子を募集するのに一役買う為だろうと推測できる。

「か、看板は後で外して付け替えますので今は何卒」
「絶対じゃぞ」

 看板を見て不快感を露にしていたルスカに気付き、クリストファーは慌てて直す事を約束する。

「あれ? まだ、入ってねぇの?」

 後から追いかけてきた流星とカホが追い付き、背後から声をかけられると、ほぼ同時に家の玄関扉が開かれる。
そこにはウェーブのかかった黒髪ロングヘアーの女性が。

「先生、帰ってきたなら──流星、カホ!」
「おう、今帰ったぜぇ」
「ただいま、麗華ちゃん」

 外が騒がしく思った麗華は、扉を開けると家の前にいた流星とカホを見て驚き、思わず二人に抱きついた。
そんな麗華を見たアカツキは、嬉しそうな流星やカホとは違い、違和感を感じた。
昔の麗華ならあり得ない行動だ。
もちろん自分自身もこちらの世界に来てから、少しは変わったという自覚はある。
もしかしたら麗華も……と思うが、言葉に表せない違和感が拭えずにいた。

「レイちゃん! 久しぶり」
「え!? 弥生さん!?」

 弥生は、アカツキと違い違和感を感じていないらしく、気軽に話かける。

「弥生さん……少しお痩せになりました?」
「え、うん。ちょっと色々あって……レイちゃんは、元気そうで良かったよ」
「そうなんですの? あら、貴方。もしかして田代くん?」
「お久しぶりです。雨宮さん」

 アカツキに気付いた麗華は、手を取りニッコリと微笑む。

「ほらほら、皆さん、中へどうぞ。ほら、レイカくん皆を客間に案内して」
「はい。クリストファー先生」

 麗華はアカツキから離れると、弥生の背中を押して家の中へと入れる。昔はこれほど親しみやすい性格をしておらず、どちらかと言えば冷たい性格だったはずだ。
何より弥生への噂の件もある。
そして、アカツキが何より一番不可解な感じがした事が……

「一発で私とわかりますか……」
「アカツキ、どうしたのじゃ? 入らんのか?」
「いえいえ、何でもありません。気のせいでしょう、恐らくは」

 アカツキは最後にルスカと並んでクリストファーの家へと入っていった。


◇◇◇


「それでは、私はお茶を用意してきますわ」

 客間に皆を案内した麗華は、客間をそそくさと出ていく。
お茶が出るまでの間、流星はクリストファーに今まで何をしていたのかを説明していた。

「そうか。ゴブリンと……いやいや、しかし、流石はルスカ様ですのぉ。改造魔族を倒してしまわれるとは」
「ワシ一人では無理だったのじゃ。アカツキも皆も頑張ったのじゃ」

 ラーズの変の一部始終を説明し終えると、クリストファーは白い顎髭を弄りながら話を噛み締める。

「なるほどのぉ。どおりでワズ大公の国軍をここの兵士が足止めしにかかったのですな」
「爺さんは何してたんだよ!?」
「儂か? 儂はここに居ったよ。兵士がここにこの街の子供を預けに来てのぉ。まぁ、それは名目で儂をここに留める為の人質だったのじゃが」

 ワズ大公の国軍に逆らおうとした兵士にとって、魔導師として有名なクリストファーに内側から暴れられたら大変だったからだろう。
実質挟撃されるのだから。

「ここの兵士を取りまとめて人はどうなりましたか?」
「うん? 恐らく亡くなったと思うがのぉ」
「思う? 確認されていないのですか?」

 兵士達が洗脳に近い状態だったとしても、高々一兵卒に過ぎない。
抵抗を決めたのは必ず他にいるはずだと、アカツキは話をした。

「うーむ、言われてみるとそうじゃのぉ。ふむ、一度他の住人に確認を取るか。アカツキと言ったか? 感謝するぞい」

 クリストファーは早速と筆を取り手紙を書くと、門下生だろうか、まだ年端のいかぬ男の子に渡し使いをまかせるのだった。


◇◇◇


「どうして、生きてますの!? 話が違うじゃないですか。麻薬漬けで死んだと思っていたのに……」

 一方、一人台所でお茶を用意していた麗華は、お茶の用意を進めるものの、怒り心頭という感じだ。

「大体、どうしてあの二人も戻って来るのよ!? ゴブリンと一緒にずっと過ごしておけばいいじやない!」

 思わず力が強く入り、お茶の葉を掬っていたスプーンを潰す。

「それにどうして田代くんまで居るんですの?」

 全てが上手くいかずに癇癪をおこす麗華は、ミニ丈のスカートのポケットに手を突っ込むと布にくるまれた何かを取り出す。
布を広げると、そこには植物の茎が数本置かれていた。


◇◇◇


「遅くなって申し訳ございませんわ」

 麗華がお茶を各自の前に置いていく。

「はい。弥生さん」
「ありがとう、レイちゃん」

 最後に麗華自らが弥生の前にお茶を置かれると、弥生がお茶のコップに手を伸ばす。

「あ! すいません、弥生さん」
「え? 何?」

 弥生は伸ばした手を引っ込めると、アカツキに顔を嬉しそうに近づける。

「いえ、馬に繋いである水筒で水を汲んできて貰えませんか? あ、雨宮さん、弥生さんに井戸の場所まで案内してもらえますか?」
「ええ。どうぞ、弥生さん。こちらですわ」

 アカツキに頼りにされたの事が嬉しいのか、嬉々としてアカツキの馬の元にいく弥生、そして案内をしにいく麗華が客間を離れる。

 出て行った後暫くは、アカツキに何故今頃水の補給? と注目が集まるが、その後、注目が逸れてアカツキは視線を感じなくなると、素早く弥生のお茶と自分のお茶を入れ替えたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。 森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。 一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。 これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。

処理中です...