追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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最終章

五話 幼女、覚醒する

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「何で服を脱いだのですか?」
「破れてはいかんじゃろぉが」

 再び服を着たルスカの雰囲気は変わっておらず、一体さっきのは何だったのだろうかと不思議そうな表情のアカツキ。
一、二度ルスカは、確かめるように拳を握りしめると、タレ目がちな表情から目付きが鋭くなり、緋色の瞳にくっきりと魔王紋を浮かべる。

 すると、ルスカ本人というより纏う雰囲気が一変する。空気が重く近づき難い。弥生達がルスカに、それが何なのか聞こうと思っても声が出ないほど。

「ルスカ、それは?」

 そんな中、唯一アカツキだけはルスカに声をかける。それどころか、近づいていく。

「……言いたくないのじゃ。ただ、ワシの中には化け物がおる。それの一部を外に出しただけじゃ」
「そうですか。それじゃ、そろそろ行けますか?」
「行こう、ルスカちゃん、アカツキくん!」

 平然とルスカの横に立つアカツキを見て、弥生も二人の隣に立つ。
ルスカの周囲の空気に押し潰されそうになるものの、二人だけの親密な空間に嫉妬がまさったのであった。

「あまり、ワシに近づき過ぎるなよ! 削り取られるぞ!」

 果敢に先頭を走り出したルスカはアスモデスに向かっていく。その速度は、普段のルスカからは考えられないほど速く弥生やアカツキは追い付けずにいた。
アスモデスも向かってくるルスカに対抗して拳を振り上げる。

「ルスカちゃん! その距離じゃ、障壁が張れないわ‼️」
「ワシには無用じゃ!」

 弥生はルスカに障壁を張るために距離を詰めようと懸命に走る。しかし、一向に追い付けそうにない。

 ルスカに向かって振り下ろしてきたアスモデスの拳を頭上ギリギリで横に飛び躱す。アスモデスの拳は地面にヒビを入れるほどの威力。
しかし、ルスカは躱すと同時にジャンプして拳にしがみついて登って行く。

 前にアドメラルクがやったようにアスモデスの腕を駆け上がって行くルスカ。
アドメラルクと違ったのは、ルスカの通った跡。ルスカの足が触れる場所から、アスモデスの腕の皮膚が剥がれ肉が崩れていく。
ルスカに触れるとまるで腐るかのように。

「グゥゥ……グワァアアアアアッ‼️」

 痛みなど感じないだろうが、まるで悲鳴のようにアスモデスは咆哮すると、ルスカに向かって赤い光を放つ。

「無駄じゃ!」

 ルスカが赤い光に手のひらで触れると、赤い光はまるで花火の最後のように、パラパラと光の粒子となって崩れていく。

「アカツキくん、ルスカちゃんのアレは……何なの?」
「わかりません。わかりませんが、私達はルスカのフォローに集中しましょう」

 なるべくルスカに近づき障壁を張れるように走る弥生に、二人をいつでも手元へ引き戻せるように走りながら蔦を伸ばすアカツキ。
アスモデスの筋肉の張りを利用して肩まで登ってきたルスカは、顔の至近距離でバーンブラストを放った。

 勢いよく爆発すると、アスモデスの顔の左半分が吹き飛ぶ。

「魔法が……効いた!?」

 爆風により肩から落ちてくるルスカを、魔法反射が施されているアスモデスに魔法が効いたことに驚いていたアカツキが、蔦を使い引き寄せる。
吹き飛んだアスモデスの顔は、ルスカが触った時と同じように崩れていくのと、同時に再生を繰り返す。

「ルスカ、これは一体!?」
「話は後じゃ! 一気に決めるぞ」

 ルスカを引き寄せた蔦に異常は見られない。それに重い空気感も今はない。
少なくとも、ルスカのあの現象は意識してコントロールが出来るようであった。

 いまだに再生と崩壊を繰り返すアスモデスだが、若干ながら再生の方が速いようで、徐々にだが顔の輪郭を取り戻しつつあった。
そんな状態であってもアスモデスの闘争本能は収まらず、顔と同じように再生と崩壊を繰り返す手で、アカツキとルスカ目掛けて邪魔だと言わんばかりに払ってくる。

「ルスカちゃん、アカツキくん! “障壁”」

 しかし、ルスカを守るべくアスモデスの懐近くにいた弥生は、きびすを返してアカツキ達へと駆け寄り障壁を張ろうとするが、距離がありすぎた。
咄嗟にアカツキは残った一本の蔦を弥生に向けて伸ばすと、弥生も自分達の元へと一気に引き寄せる。

 弥生を何時如何なる時でも引き寄せられるように警戒していたアカツキにとっては、想定の範囲内の出来事。
引き寄せられた為に不十分の態勢であった弥生は踏ん張る事が出来なかったが、自分を含めたアカツキとルスカに障壁を張りアスモデスの攻撃に耐える。

「うわあっ!」
「きゃあっ!」

 アカツキと弥生、そしてルスカは直撃を避けたが障壁毎、押し出されるように払われた為、丘を転がり落ちる。

「くっ……!」

 損傷した為に一度自分の中に仕舞った蔦でも支えるくらいは出来るかもと、アカツキは再び蔦を背中から出して地面に突き立てる。

「これは……!」

 態勢を立て直しルスカと弥生を蔦から外したアカツキは、自分達を支えようと出した蔦の先端が鋭く尖っていることに気づく。
損傷した蔦が再生したのか、それとも新たに別の蔦なのか、それはアカツキには分からなかったが、エイル自身が多数の蔦で覆われていたことから、後者なのだろうと推測する。

 しかし、これでアカツキも万全の態勢が整う。

「ルスカ、どうしますか?」
「今のワシの力は、ワシの内なる者の力を借りておる状態でな……っと!」

 二人が話しているところを、アスモデスの拳が飛んでくる。弥生を蔦で掴んだアカツキ、そしてルスカは、横っ飛びで躱す。

「詳しく話をしている暇は無さそうじゃ。とにかく下手をすればワシの体が乗っ取られかねん! なので余力は残さねばならん。何とかアスモデスの内側へシャインバーストを撃ち込めば!」

 ルスカはそれだけを話すとアカツキと二手に別れ、単独でアスモデスへ向かう。アカツキも何時でもルスカのフォローが出来るように、ルスカを目で追いながら反対側から向かっていく。

 やぶれかぶれかのようにアスモデスは、ルスカに、そしてアカツキに向けて両手で殴りかかる。顔の再生は半分ほど戻ってきているが、魔法を撃てるまでではなさそうで、咆哮する気配がない。

 拳が雨あられのように降り注ぎ、ルスカは躱すだけで、アカツキも弥生の障壁で守られるので精一杯だ。魔法の撃てない今が好機なのだと、焦りも見え始める。
アスモデスの腕の動きを止める必要があった。

「弥生さん! 次、攻撃を防いだら私から離れて!」

 アカツキはその場で無防備に立ち止まると、狙ったように拳が襲ってくる。

“障壁!”

 アカツキを守るように光の壁が立ちはだかりアスモデスの拳を防ぐのを確認した弥生は、アカツキから離れていく。

「今です!」

 アカツキの背中から伸びる蔦は四本とも地面へと突き刺さっていた。地面を通り抜けアスモデスの拳の下から勢いよく這い出でる。
四本の蔦は互いに絡まり一本の太い蔦となり、先端は鋭くドリルのように尖っていた。

 一本となった太い蔦は、アスモデスの手首を突き抜けると、蕾が花開くように絡んでいた蔦は広がり、再び地面へと突き刺し地面へと縫い付ける形となる。
アスモデスの腕を縫いつけたアカツキは、貫かれた手首を引き抜こうとしてくるのを、力を込めて抑え込む。

「ルスカ! 今です‼️」

 ルスカは、既に両手の手のひらをアスモデスに向けており黄色い光が集まって準備が出来ていた。

“ストーンバレット!”

 本来、無数の石礫が飛んでいく筈が、アスモデスの右肩を狙って飛んで行ったのは、弾丸のように回転して貫通力が上がった大岩一つだけであった。
右肩に当たったものの貫けず、アスモデスは魔法反射と右腕の力で跳ね返してくる。

「まだじゃ! “ストーンバレット!”」

 もう一つの大岩が、今まさに跳ね返そうとする大岩とぶつかると、ルスカは、押し込もうと力を込めていく。
ルスカの、相手を崩す内なる力が魔法に加わり、アスモデスの肩は徐々に崩れ始めており、ミシミシと音を立てて右肩へめり込んでいく

「もういっちょうじゃあ! “ストーンバレット!”」

 三つ目の大岩が弾丸のように回転して大岩同士をぶつけると、一つ目の大岩は崩れたものの、二つ目、そして三つ目の大岩は、アスモデスの肩を貫通して、風穴を開けたのだった。
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