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第三章 ローレライの負の遺産編
五話 弥生、魔石を捜索する
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弥生達の旅は順調であった。アルステル領内までの道程も、特に魔物に襲われる事なく進んでいた。
にもかかわらず、弥生は馬車のカーゴの中で、キョロキョロと辺りを見渡していた。
「やよちゃん、どうかしたの? ずっと、落ち着かないみたいだけど」
「うん……城にいる間は、そうでも無かったのだけど。旅に出始める前から、ずっと視線を感じるのよ。だけど、馬車には、わたし達しか居ないのにね」
弥生は、ここ数日、特に城を出てからその視線を色濃く感じていた。粘っこく、じっと自分を見ているような……。
しかし、馬車もそこそこ速度を出しているし、並走しながら視線を送れば、直ぐに見つかりそうなもの。
「あー」
フウカが弥生へ両手を伸ばす。弥生は、フウカを抱えるとぎゅっと抱きしめて、その不安を誤魔化すのであった。
◇◇◇
アルステル領内に到着した一行は、まずは領主へと挨拶に訪れた。弥生達だけなら問題無いものの、別の領地の領主であるナック、ギルドを管轄しているアイシャがいるのだから、無視することは出来ない。
アルステル領内の領主は、至って普通の男性であった。年はナックとそう変わらないくらいで、見た目も物腰も穏やかな人物。それが、皆が抱いた彼への印象だった。
アルステル領は、一度ワズ大公の息子ラーズにより滅ぼされている。麻薬の栽培、販売が横行していたのだから仕方はないものの、その後徹底的に厳しく取り締まられ、それを引き継いだのが現在の領主ヘンリーであった。
復興は、ワズ大公の後ろ楯もあり、順調に進み今では、とても麻薬で腐敗した街とは思えなかった。
街も特に争い事など、起きておらず平和そのもの。
それが、ヘンリーの手腕ということなのだろうと、弥生やカホだけでなく、ナックも参考にしようと街を散策するほどであった。
「そろそろ実家に向かいませんか? この街の郊外にありますから」
アイシャに同意して出発する直前、大々的にエルヴィス国王の正式な結婚の発表の報せが街に届いた。
街の人たちは、歓迎し、お祭り騒ぎへと一変するが、名残惜しくも弥生達は、出立した。
◇◇◇
郊外も郊外、林の中に佇む古い屋敷。その雰囲気は、まさにお化け屋敷と変わらない。絶対夜には近寄りたくないと、カホは考えていた。
お店でもやっていたのか、屋敷の二階には大きな看板が付いているが、如何せん文字が消えかけている上に埃や砂で読めない。
「久しぶりですね。わたし自身は、それほど長く住んではいませんでしたが……さぁ、魔石、探しますか? 赤い宝石のようなものでしたね」
「えぇーっ、入りたくないなぁ」
カホは、入り口にて躊躇う。お化け屋敷自体もそうだが、ゴブリンとの生活でもカホは無類のきれい好き。
埃やクモの巣なんて言語道断なのである。
「ううー、どうしてナックさんが、入り口で留守番なのぉ?」
「仕方ないでしょ。万一に備えてフウカとクリスくんを守る為には、アイシャさんかナックが残るしかないんだから」
弥生が視線が気になると聞いたナックは、赤ん坊を埃立つ場所に連れていくのも問題があると自ら護衛を買って出たのだ。
「しかし、凄い状況ね」
お店の名残そのままで、カウンターには商品らしきものが埃を被り白くなっている。埃を払うと咳き込んでしまう。
その商品自体も最早形状をとどめておらず、一体何を売っていたのかがわからない。
「ないですねー。店内には……二階に行ってみましょうか」
アイシャのあとをついていく弥生とカホ。時折クモの巣に驚きながらも、二階へと上がっていく。
台所と思わしきものがあるところから、居住区なのだろう。一部屋一部屋確かめていくが、魔石らしきものは見つからなかった。
「ここは、昔曾祖父の部屋だった所です。ここに無かったら……」
可能性は一番高い。三人は立て付けが悪くなった扉を開いて中へと入っていく。壁には錆び付いているものの立派な斧と剣がかけられている。
三人は、部屋を一通り見て回って見たがやはり見つからない。
「ここを出た時に持っていかれたのでは?」
「それは、多分無いとは思いますよ。わたしの家族は、ほぼここを捨てるつもりで出ていきましたから。正直、わたしの一族に商才は無かったみたいですし」
アイシャ曰く、借金を作って逃げるように出ていったのだと言う。
「もしかして、売った……とか?」
「……可能性はあります」
アイシャが申し訳なさそうな顔をするので、二人はアイシャのせいではないと慰める。
その頃、ナックは二人の赤ん坊に囲まれて幸せそうであった。
「しっかし、十年やそこらでここまで荒廃するって一体なんの商売していたんだ?」
古びた看板の文字を読み取ろうと、頭の角度を変えたり目を細めたりするが、なんて書いてあるかはわからない。
ただ……。
「ナック、お守りありがとう。残念ながら、無かった──って、どうしたのよ?」
「いや、あれ──」
ナックは看板を指差してみせる。弥生だけでなく、アイシャやカホも家から出てくるとナックが指し示す方向を向いた。
看板の文字と文字の間、埃で見にくいがそこには確かにうっすらと赤く煌めく石が嵌め込まれていた。
にもかかわらず、弥生は馬車のカーゴの中で、キョロキョロと辺りを見渡していた。
「やよちゃん、どうかしたの? ずっと、落ち着かないみたいだけど」
「うん……城にいる間は、そうでも無かったのだけど。旅に出始める前から、ずっと視線を感じるのよ。だけど、馬車には、わたし達しか居ないのにね」
弥生は、ここ数日、特に城を出てからその視線を色濃く感じていた。粘っこく、じっと自分を見ているような……。
しかし、馬車もそこそこ速度を出しているし、並走しながら視線を送れば、直ぐに見つかりそうなもの。
「あー」
フウカが弥生へ両手を伸ばす。弥生は、フウカを抱えるとぎゅっと抱きしめて、その不安を誤魔化すのであった。
◇◇◇
アルステル領内に到着した一行は、まずは領主へと挨拶に訪れた。弥生達だけなら問題無いものの、別の領地の領主であるナック、ギルドを管轄しているアイシャがいるのだから、無視することは出来ない。
アルステル領内の領主は、至って普通の男性であった。年はナックとそう変わらないくらいで、見た目も物腰も穏やかな人物。それが、皆が抱いた彼への印象だった。
アルステル領は、一度ワズ大公の息子ラーズにより滅ぼされている。麻薬の栽培、販売が横行していたのだから仕方はないものの、その後徹底的に厳しく取り締まられ、それを引き継いだのが現在の領主ヘンリーであった。
復興は、ワズ大公の後ろ楯もあり、順調に進み今では、とても麻薬で腐敗した街とは思えなかった。
街も特に争い事など、起きておらず平和そのもの。
それが、ヘンリーの手腕ということなのだろうと、弥生やカホだけでなく、ナックも参考にしようと街を散策するほどであった。
「そろそろ実家に向かいませんか? この街の郊外にありますから」
アイシャに同意して出発する直前、大々的にエルヴィス国王の正式な結婚の発表の報せが街に届いた。
街の人たちは、歓迎し、お祭り騒ぎへと一変するが、名残惜しくも弥生達は、出立した。
◇◇◇
郊外も郊外、林の中に佇む古い屋敷。その雰囲気は、まさにお化け屋敷と変わらない。絶対夜には近寄りたくないと、カホは考えていた。
お店でもやっていたのか、屋敷の二階には大きな看板が付いているが、如何せん文字が消えかけている上に埃や砂で読めない。
「久しぶりですね。わたし自身は、それほど長く住んではいませんでしたが……さぁ、魔石、探しますか? 赤い宝石のようなものでしたね」
「えぇーっ、入りたくないなぁ」
カホは、入り口にて躊躇う。お化け屋敷自体もそうだが、ゴブリンとの生活でもカホは無類のきれい好き。
埃やクモの巣なんて言語道断なのである。
「ううー、どうしてナックさんが、入り口で留守番なのぉ?」
「仕方ないでしょ。万一に備えてフウカとクリスくんを守る為には、アイシャさんかナックが残るしかないんだから」
弥生が視線が気になると聞いたナックは、赤ん坊を埃立つ場所に連れていくのも問題があると自ら護衛を買って出たのだ。
「しかし、凄い状況ね」
お店の名残そのままで、カウンターには商品らしきものが埃を被り白くなっている。埃を払うと咳き込んでしまう。
その商品自体も最早形状をとどめておらず、一体何を売っていたのかがわからない。
「ないですねー。店内には……二階に行ってみましょうか」
アイシャのあとをついていく弥生とカホ。時折クモの巣に驚きながらも、二階へと上がっていく。
台所と思わしきものがあるところから、居住区なのだろう。一部屋一部屋確かめていくが、魔石らしきものは見つからなかった。
「ここは、昔曾祖父の部屋だった所です。ここに無かったら……」
可能性は一番高い。三人は立て付けが悪くなった扉を開いて中へと入っていく。壁には錆び付いているものの立派な斧と剣がかけられている。
三人は、部屋を一通り見て回って見たがやはり見つからない。
「ここを出た時に持っていかれたのでは?」
「それは、多分無いとは思いますよ。わたしの家族は、ほぼここを捨てるつもりで出ていきましたから。正直、わたしの一族に商才は無かったみたいですし」
アイシャ曰く、借金を作って逃げるように出ていったのだと言う。
「もしかして、売った……とか?」
「……可能性はあります」
アイシャが申し訳なさそうな顔をするので、二人はアイシャのせいではないと慰める。
その頃、ナックは二人の赤ん坊に囲まれて幸せそうであった。
「しっかし、十年やそこらでここまで荒廃するって一体なんの商売していたんだ?」
古びた看板の文字を読み取ろうと、頭の角度を変えたり目を細めたりするが、なんて書いてあるかはわからない。
ただ……。
「ナック、お守りありがとう。残念ながら、無かった──って、どうしたのよ?」
「いや、あれ──」
ナックは看板を指差してみせる。弥生だけでなく、アイシャやカホも家から出てくるとナックが指し示す方向を向いた。
看板の文字と文字の間、埃で見にくいがそこには確かにうっすらと赤く煌めく石が嵌め込まれていた。
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