追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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第四章 レイン自治領の危機と聖霊王

一話 レイン自治領の危機

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 アカツキと流星、そして神獣のガロンは、炎上した森で拾った森エルフを連れてレイン自治領へと戻ろうとしていた。
この森エルフ、名前をハーミーといい、リンドウの街のナーちゃんとは幼馴染みということからリンドウの街まで連れていくことに。
しかし、アカツキ達には目的がある為に、一時レイン自治領のヴァレッタに預かってもらおうとしていた。

 皮肉にもレイン自治領が再び戦乱に巻き込まれるとも知らずに……。


◇◇◇


 レイン自治領にある孤児院、そこでヴァレッタと子供達が協力して切り盛りしている“青空パン工房”。
アカツキが居なくなったあとも盛況で、この日も早朝焼いたパンは完売となっていた。

 初めこそは、孤児達に憐れみの目で購入していた者達も、やがてその柔らかく美味しいパンの虜となり、常連客も増えてヴァレッタは焼く回数を増やそうかと考えていた。
子供達も自発的に手伝ってくれている。
理想に掲げたのは、レベッカからの支援無しでも孤児院を経営出来るようにすることだと。

「ちぇんちぇー、おかわりー」
「はいはい、エッタちゃん。ちょっと待ってね」

 少し遅めの朝食を摂っていたヴァレッタ達。今日も子供達の笑いが絶えることはない。

「先生、今何か聞こえなかった?」

 一番年上の男の子が不意にヴァレッタに話しかける。子供達の声で何も聞こえていなかったヴァレッタは、窓を開くと外からは悲鳴があちこちから上がり始める。
何事かと本来外を見るのだが、ヴァレッタは異変にいち早く気づく。
以前のレイン帝国崩壊を経験が活かされていたのだ。

「みんな、集まって!!」

 子供達を集めるために声をかけると、ヴァレッタは窓を閉めカーテンを閉める。
ここで、ヴァレッタは二択を迫られる。

 ──地下にある倉庫に逃げ隠れるか否か。

 ヴァレッタが決断したのは、否だった。万一を考えて包丁を片手に持ち、エッタを抱き抱える。年長組もヴァレッタの指示に従い幼い子供の手を繋ぐ。

 再びヴァレッタに二択が。

 ──すぐに外へ逃げるか、様子を見るか。

 ヴァレッタは逃げを選択する。パン屋の経験がここでも活かされる。
パンの致命的なのは、焼きすぎである。焦げ臭いに何度も泣かされた経験。
そう、焦げ臭いが微かに漂い始めていたのだ。

 裏口からパン屋がある庭へと飛び出ると、焦げ臭い匂いの原因がすぐにわかる。孤児院の屋根が燃え出していたのだ。
もし地下へ逃げていたら蒸し焼きにされていた。

 しかし、ヴァレッタの運も底をつく。庭から身を屈めて人目に付かないように裏路地へと出たのだが、ヴァレッタ達の目の前に急に男性が出現する。
男性の手には、キラリと怪しく光る剣が。

「俺達の土地を取り戻す!!」

 男性は、一瞬の躊躇いもなくヴァレッタへ向けて剣を振り上げる。もし、強盗や盗賊相手なら自分の身を差し出して犠牲にしてでも子供達を守ろうとするだろう。
しかし、この男性は、いきなり訳の分からないことを発して目には躊躇う色もない。
初めから人を殺す気でいることに、ピンときたのだった。


◇◇◇


 天高く黒煙を上げているのを進行方向に見つけたアカツキ達は、その速度を全力に上げていた。

「急がなければ。嫌な予感がします!!」

 馬を飛ばすアカツキ達は、目的地のレイン自治領に近づく度に顔色が青ざめてくる。
街の一角が見え始めた時、アカツキ達は言葉を失った。

 燃え盛る炎の山に大勢の人々の声。やっと復旧し始めた街は再び瓦礫の山と変わり出していた。
黒煙立ち上り臭いも酷く、同じように燃え盛る森を思い出した森エルフのハーミーは、気を失ってしまう。

 茫然としてしまったアカツキは奥歯をギリッと噛みしめ眉間に皺を寄せる。それは流星やガロンも同じであった。

「急ぎましょう、お嬢様や子供達も心配です」

 無事であることを願いながら、アカツキ達は燃え盛る街の中へと入っていく。
真っ先に向かったのは、ヴァレッタの孤児院。
すっかり様相が変わってしまった街に迷いながらも孤児院の形状を思い出しながら探す。

「こ、これは……!?」

 壁は崩れ落ち、屋根もなく、辛うじて柱が家の形状を表す。側には瓦礫で造られた見覚えのある窯。
間違いなく、ヴァレッタの孤児院であった。

「あ、アカツキ?」
「許せない……許せません! 何より私の恩人である旦那様の忘れ形見ヴァレッタを守れなかった自分が……うおおおおおおおおおーーっ!!!!」

 アカツキは、咆哮とも呼べる叫び声を天に向かってあげた……。


◇◇◇


 一方、ルスカ達も異変に気づいていた。自分たちとは真逆の方向に逃げ惑う人達に押し込まれながら中々進めずにいた。
ようやく、空に上がっていく黒煙の正体が街を燃やす炎だとわかるところまでやって来たのだが、馬車の速度を上げれずに、ルスカは窓から眺めるだけに苛立ち始めていた。

「タツロウ! 右に移動出来ないか?」
「ルスカ様、無理やで、こんな人混みじゃ。何かあったんか?」
「あれ……ヴァレッタなのじゃ?」

 人混みから少し離れた木の陰に女性の人影がタツロウにも見えた。目を凝らし、よくよく見るとルスカの言うようにヴァレッタであった。
しかし、明らかに異変。煤で汚れ怪我もしてみたいだ。

「くそっ、走った方が速いのじゃ。タツロウ、馬車を頼むのじゃ」

 ルスカはカーゴから飛び降りると、侍女のキャシーと共に走り出す。

「ヴァレッタ! お主、ヴァレッタじゃろ!? ……!! これ、は……」

 木にもたれ座るその目には力なく今にも目の光が失われそう。右腕からは大量の出血のあとが見られ、何よりその右腕が見当たらない。左手一つで抱えた小さな女の子は、ぐったりと項垂れておりピクリとも動かなかった。
そんなヴァレッタに身を寄せ三人の子供達が泣きじゃくる。

「わかるか、ワシじゃ! ルスカじゃ!!」
「る、ルスカ……さ、ま」
「喋る必要はない! タツロウ、早くしろ!!」

 ようやくタツロウが操る馬車が近づいてくる。ルスカは馬車の中の荷物から回復薬を取り出すと、すぐさまヴァレッタの口へと運ぶ。
初めは力なく少しずつ回復薬を流し入れる程度だったが、徐々に自ら喉を動かし飲み始める。

「こ、この子にも……」

 ルスカに左腕に抱いた幼い女の子エッタにも回復薬をとお願いする。
しかし、ルスカは小さく首を横に振るだけで与えようとはしなかった。
ヴァレッタは、ルスカの仕草に全てを悟る。
もう回復薬を飲ませる必要はないのだと。

「あ、あ、ああああああああっ…………」

 嗚咽混じりの声にならない声をヴァレッタは大量の涙を流し叫ぶのであった
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