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王族の影の盾
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母とカルディア叔母様の実家である“ハイネル伯爵家”は、伯爵ではあるが、この国が創立された時から続いている名家である。その初代伯爵が、初代国王となった3番目の王子でもあった。それから数百年から今の間にも、何度か王族と婚姻を結んだ事もあった為、伯爵の位ではあるが、血筋としては高いモノを持っている。
だから、例えエレーナとアーロンの実父が平民であろうとも、ハイネル伯爵家の娘の子である事には変わらないから、エレーナがマクウェル様の婚約者候補に上がっても、異を唱える者は少ないのだろう。
そして、我が“キリクス伯爵家”は──更に特殊な名家である。
直系に連なる王族─国王陛下と、その国王陛下が信を置いた者にだけしか知られていない存在。
キリクス一族も、この国の創立当初から存在し、そしてその役割を途切れる事なく受け継いで来ている。
キリクス一族は
“王族の影の盾”
なのである。
初代キリクス伯爵は、非常に魔力が優れていた。水と火の魔力の扱いが長けていた上に、ある特殊な能力も持っていた。その特殊な能力があったが故に、“王族の影の盾”となったのだ。
そして、その特殊な能力は、直結の血筋には必ず引き継がれていった為、父や兄は勿論の事、シルフィーもその能力を引き継いでいる。
ただ、この“王族の影の盾”は、存在を明らかにする事はできない為、表向きは“代々王付きの文官として名を連ねている名家”で通している。
実際、キリクス伯爵は、初代より途切れる事なく国王の代が変わろうとも、必ず王付きの文官として在籍し続けているのだ。キリクスは、文官としても有能なのである。
それに、何度か王女と結婚した者も居た為、キリクスも伯爵の位ではあるが、一目置かれる存在になっている。
そんなキリクス伯爵の娘であるから、傷痕があっても─と言っているのだろう。
「アヤメさんは、エレーナがマクウェル様の婚約者になる事が嫌なんですか?どちらかと言うと、エレーナは、マクウェル様に…好意を持っている…と思うんだけど…。」
お互いが良い印象を持っているなら、エレーナがマクウェル様の婚約者になったら───
「確かに、エレーナはマクウェル様の事を…慕っていると思うわ。でもね…。その前に、シルフィーちゃんはどうなの?あなただって、候補に上がってるのよ?」
「どうなの?と言われても…私は…結婚する気は…ないから…。」
「それは…傷痕があるから?」
アヤメさんに訊かれてコクリと頷くと、アヤメさんは少し微笑んで
「マクウェル様なら、その傷痕があっても、シルフィーちゃんに対する態度は変わらないと思うけど。」
「そう…かもしれないけど…。傷痕がある事を知られる事も、見られる事も…嫌なんです。受け入れてくれるかもしれないけど…知られて拒絶されたら、それこそ…私は…。それに、私、決めたんです。」
「え?何を?」
キョトンとした顔をするアヤメさん。
「私もキリクス伯爵家の一員として、誰かの為に役に立とうと。なので、これから、侍女としての仕事を身に付けて、武術や剣術も習おうと思ってます!」
「え?侍女?武術?剣術???え?ちょっと意味が分からないわ…。あれ?こんな展開…あった???」
何やらアヤメさんはブツブツと呟いていたけど、よくは聞こえなくて、私はその勢いのまま、アヤメさんの部屋を出てお祖父様の元へと向かった。
ー何だろう…口に出したら…少し気持ちが軽くなった気がするわー
アヤメは、自室の椅子に腰を掛けたまま、今シルフィーが出て行った扉を見詰めた。
シルフィーちゃんが…侍女?あれ?こんな展開なかったわよね?それに、さっきは、また少し笑顔だったわよね?
「くぅーっ!めっちゃ可愛いかった!」
これは、予想外だけど嬉しい展開よね?漫画では、彼女と一緒に学園生活を送るようになってから笑顔が少しずつ増えていったんだけど。
シルフィーちゃんの方は、良い方向に進んでいるのかもしれない。
「問題は……」
エレーナだ。
漫画のストーリーと違ってきている事は、もう気付いている筈。今のエレーナの性格を考えると…このまま黙って引き下がるとは思えない。
エレーナがこれからどう動いて、誰を狙うのか──
「ホント、我が子を監視するみたいで…嫌になるわ。」
そう呟いた後、アヤメもシルフィーが向かったであろう、ジュードの執務室へと向かった。
「侍女に?それに…武術を?」
「はい。私…魔力も殆ど無いから、あの能力は使えないと思うけど…。でも、キリクスの者として、誰かの役に立ちたいと思って。だから、私に、武術や剣術を教えてくれませんか?」
シルフィーは俯くことなく、ジュードの目をしっかりと見据えながらお願いをする。
「…魔力が無いぶん…他の者よりも、何倍もの努力が必要になるぞ?それでもか?」
「はい。それは、覚悟しています。」
「──そうか…分かった。」
「お祖父様!ありがとうございます!」
「ただし、条件がある。」
パッと喜んだシルフィーだが、ジュードからは条件がつけられた。
だから、例えエレーナとアーロンの実父が平民であろうとも、ハイネル伯爵家の娘の子である事には変わらないから、エレーナがマクウェル様の婚約者候補に上がっても、異を唱える者は少ないのだろう。
そして、我が“キリクス伯爵家”は──更に特殊な名家である。
直系に連なる王族─国王陛下と、その国王陛下が信を置いた者にだけしか知られていない存在。
キリクス一族も、この国の創立当初から存在し、そしてその役割を途切れる事なく受け継いで来ている。
キリクス一族は
“王族の影の盾”
なのである。
初代キリクス伯爵は、非常に魔力が優れていた。水と火の魔力の扱いが長けていた上に、ある特殊な能力も持っていた。その特殊な能力があったが故に、“王族の影の盾”となったのだ。
そして、その特殊な能力は、直結の血筋には必ず引き継がれていった為、父や兄は勿論の事、シルフィーもその能力を引き継いでいる。
ただ、この“王族の影の盾”は、存在を明らかにする事はできない為、表向きは“代々王付きの文官として名を連ねている名家”で通している。
実際、キリクス伯爵は、初代より途切れる事なく国王の代が変わろうとも、必ず王付きの文官として在籍し続けているのだ。キリクスは、文官としても有能なのである。
それに、何度か王女と結婚した者も居た為、キリクスも伯爵の位ではあるが、一目置かれる存在になっている。
そんなキリクス伯爵の娘であるから、傷痕があっても─と言っているのだろう。
「アヤメさんは、エレーナがマクウェル様の婚約者になる事が嫌なんですか?どちらかと言うと、エレーナは、マクウェル様に…好意を持っている…と思うんだけど…。」
お互いが良い印象を持っているなら、エレーナがマクウェル様の婚約者になったら───
「確かに、エレーナはマクウェル様の事を…慕っていると思うわ。でもね…。その前に、シルフィーちゃんはどうなの?あなただって、候補に上がってるのよ?」
「どうなの?と言われても…私は…結婚する気は…ないから…。」
「それは…傷痕があるから?」
アヤメさんに訊かれてコクリと頷くと、アヤメさんは少し微笑んで
「マクウェル様なら、その傷痕があっても、シルフィーちゃんに対する態度は変わらないと思うけど。」
「そう…かもしれないけど…。傷痕がある事を知られる事も、見られる事も…嫌なんです。受け入れてくれるかもしれないけど…知られて拒絶されたら、それこそ…私は…。それに、私、決めたんです。」
「え?何を?」
キョトンとした顔をするアヤメさん。
「私もキリクス伯爵家の一員として、誰かの為に役に立とうと。なので、これから、侍女としての仕事を身に付けて、武術や剣術も習おうと思ってます!」
「え?侍女?武術?剣術???え?ちょっと意味が分からないわ…。あれ?こんな展開…あった???」
何やらアヤメさんはブツブツと呟いていたけど、よくは聞こえなくて、私はその勢いのまま、アヤメさんの部屋を出てお祖父様の元へと向かった。
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アヤメは、自室の椅子に腰を掛けたまま、今シルフィーが出て行った扉を見詰めた。
シルフィーちゃんが…侍女?あれ?こんな展開なかったわよね?それに、さっきは、また少し笑顔だったわよね?
「くぅーっ!めっちゃ可愛いかった!」
これは、予想外だけど嬉しい展開よね?漫画では、彼女と一緒に学園生活を送るようになってから笑顔が少しずつ増えていったんだけど。
シルフィーちゃんの方は、良い方向に進んでいるのかもしれない。
「問題は……」
エレーナだ。
漫画のストーリーと違ってきている事は、もう気付いている筈。今のエレーナの性格を考えると…このまま黙って引き下がるとは思えない。
エレーナがこれからどう動いて、誰を狙うのか──
「ホント、我が子を監視するみたいで…嫌になるわ。」
そう呟いた後、アヤメもシルフィーが向かったであろう、ジュードの執務室へと向かった。
「侍女に?それに…武術を?」
「はい。私…魔力も殆ど無いから、あの能力は使えないと思うけど…。でも、キリクスの者として、誰かの役に立ちたいと思って。だから、私に、武術や剣術を教えてくれませんか?」
シルフィーは俯くことなく、ジュードの目をしっかりと見据えながらお願いをする。
「…魔力が無いぶん…他の者よりも、何倍もの努力が必要になるぞ?それでもか?」
「はい。それは、覚悟しています。」
「──そうか…分かった。」
「お祖父様!ありがとうございます!」
「ただし、条件がある。」
パッと喜んだシルフィーだが、ジュードからは条件がつけられた。
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