傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

文字の大きさ
12 / 57

ルー

しおりを挟む
あぁ…そうか…思い出した。

何故、忘れていたんだろう?

が無事で良かった。
















「シルフィーちゃん、大丈夫!?」

「──ん?アヤメ…さん?」

「えっと、覚えてるかしら?シルフィーちゃん、マクウェル様達をお迎えしている時に倒れたのよ。」

「あ…」

「まだ少し顔色は悪いけど…大丈夫そうね?何か飲み物でももらって来るわ。」

私のベットサイドに居たアヤメさんが、座っていた椅子から立ち上がる。

「アヤメさん、待って!少し…2人だけで話しがしたいの!」

「はい!勿論喜んでお話しするわ!!!」

と、アヤメさんは直ぐ様椅子に座り直した。










「思い…出したのね。」

「はい…。それで…ひょっとして、アヤメさんは…その“マンガ”で知ってたのかな?って思って…。」

すると、アヤメさんは困った顔をして

「ごめんなさい。知っていたわ。でも…私から言う事ではないと思ったのよ。他人ひとから言われても…自分が覚えていないなら、意味は無いでしょう?でも…シルフィーちゃんが思い出したなら…コレは言っても大丈夫かなぁ?」

アヤメさんは少し逡巡した後



の方も、その時の記憶が抜けてるのよ。だから、は、シルフィーちゃんを見ても、何の反応もしなかったのよ。」














ーなる程なー


と納得した。
記憶が戻った時─あれ?何故、は私を見ても何も反応しなかったの?と思ったけど…も忘れているなら仕方無い。


私が負った傷は


小さい頃に一緒に遊んでいた、を──


様を、庇って受けた傷だった──















その日の夜に、お祖父様と話をする為に時間を空けてもらった。倒れたばかりだから明日に─と言われたが、明日また、マクウェル様が来るかもしれない為、何とか夜にと説得をした。








「思い出したのか…。」

「ひょっとして、お祖父様は知っていたのですか?」

執務室には、お祖父様と私の2人だけ。そこで、私が記憶を思い出したと話しても、お祖父様はあまり驚いた感じがなかった。

「“知っていた”のではなく、“多分そうだろう”と思っていたんだ。シルフィーが思い出したのなら、お前には言っておこう。」

と、お祖父様から聞いた話は──








実は、レオグル様と結婚した相手が、実は隣国の前国王3番目の則妃の娘─第7王女だった。ただ、則妃と言っても身分が男爵と低かった事もあり、前国王が死去した後、母子は王宮からは勿論の事、王族の籍からも外してもらい男爵領に戻ったそうだ。

王族の籍を外してもらったのは、これから先王族のいざこざに巻き込まれたくなかったからだった。

そうして、その娘が成人して他国からやって来た留学生のレオグル様と知り合い恋をして、結婚。
自国の王女と、隣国の特殊な血を引き継ぐ伯爵子息の結婚。
現国王は賢王と知られていて、隣国もとても発展豊かな国なのだが、次代の国王─王太子に少し問題があった。

その為、誰を立太子させるかで揉めに揉めたらしい。そこで、まだ幼いマクウェル様迄影響が出始めた。国内に居ては危険かもしれないと、レオグル様の国で、後継ぎ問題が落ち着くまで過ごす事にしたそうだ。








、マクウェル殿を狙ったのは、おそらく隣国の者だ。マクウェル殿に付けていたの1人が、その者を捕まえたのだが…その場で仕込んでいた毒で自殺されてしまってな。詳細は闇に葬られたままだ。」

あの時、急に現れてマクウェル様を連れて逃げてくれたのは、影の人だったのか。

「その時に居た影によると…マクウェル殿は1人だったと。でも、マクウェル殿は、“ルーを助けて!”と言っていたらしい。ルーとは、シルフィーの事で、その時、シルフィーはを使っていた為に誰にも気付かれなかったのだろう─と。」

「なら…私がを使っていたせいで、誰にも気付かれなくて、毒に侵されて…魔力暴走を起こしてしまったと言う事ですね?」

「おそらく。ある意味、魔力暴走が起こって良かったのかもしれないな。それがなければ…シルフィーは毒によって命を落としていたかもしれない。私はな、シルフィーにとっては辛いモノでしかない傷痕があっても、魔力が殆ど無くなってしまっていても、シルフィーが生きている事が─それだけで嬉しいんだ。」

お祖父様が優しく微笑んで、私の頭をポンポンと叩く。



「それと、もう気付いているとは思うが…マクウェル殿もあの時の記憶を失っている。あれ程ルー!ルー!と叫んでいたらしいのだが…あまりにも興奮しているからと、落ち着かせる薬湯を飲ませ寝かしつけた後、次に目を覚した時はその一月前後の記憶を失っていたそうだ。」





『“ルー”?それは、だあれ?』


マクウェルに付いていた影も、ルーの存在には気付いていなかった。唯一気付いていたマクウェルが忘れてしまったのなら……と、そのまま放っておかれたのだった。







しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい

はなまる
恋愛
ミモザは結婚している。だが夫のライオスには愛人がいてミモザは見向きもされない。それなのに義理母は跡取りを待ち望んでいる。だが息子のライオスはミモザと初夜の一度っきり相手をして後は一切接触して来ない。  義理母はどうにかして跡取りをと考えとんでもないことを思いつく。  それは自分の夫クリスト。ミモザに取ったら義理父を受け入れさせることだった。  こんなの悪夢としか思えない。そんな状況で階段から落ちそうになって前世を思い出す。その時助けてくれた男が前世の夫セルカークだったなんて…  セルカークもとんでもない夫だった。ミモザはとうとうこんな悪夢に立ち向かうことにする。  短編スタートでしたが、思ったより文字数が増えそうです。もうしばらくお付き合い痛手蹴るとすごくうれしいです。最後目でよろしくお願いします。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜

見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。 ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。 想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

処理中です...