傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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途切れた魔力

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「俺の顔に何か付いているのか?」

「───はい?」

そう言ってから、王弟殿下が資料に落としていた視線を、私の方へと向けて来る。

「何やら熱心に俺を見つめて来るから、何か付いているのかと思ってな。」

「熱心?すみません。見つめている─と言う意識はありませんでした。少し…考え事を…。不快にさせてしまい、申し訳ありませんでした。殿下の邪魔にならないように、席を外させていただきます。」

スッと立ち上がり、頭を下げてから部屋を出て行こうとすると

「あー、別に不快ではないから、そこで座って待ってろ。それに、もうすぐ終わるから。───くくっ…」

と、何故か王弟殿下は苦笑しながら、“椅子に座っていろ”と言うように、手をパタパタとさせた。




それから10分程して、急ぎ必要な書類のサインをもらう事がでした。しかも、これ位は掛かるかな?と思っていたよりも早くに。

「王弟殿下、ありがとうございました。それでは、失礼いたし──」

「少し、話す時間はあるか?」

「話……えっと、少しなら…」

ー予定よりも早くもらえたし、王弟殿下に言われたら…断れないよね?ー

立ち上がっていたが、手渡された資料を机の上に置き、王弟殿下と話しをする為、もう一度椅子に座り直した。





「変な意味ではないが…左肩に何か…違和感は無いか?」

ー左肩ー

その言葉にピクリと身体が反応する。

「不快にさせたなら…すまない。ただ、その左肩辺りで、魔力の流れが途切れているから気になって…」

ーなる程。王弟殿下は、他人ひとの魔力の流れが見えるのねー

「不快…ではありません。少し驚いただけです。幼い頃、左肩に毒矢を受けまして。その時に魔力暴走を起こしてしまったんです。その時の傷のせいで、そこで魔力の流れが途切れてしまい…それ以降、殆どの魔力を失っている状態なんです。」

「毒矢?」

「すみません。詳細は…少し、その辺の記憶が曖昧で…」

ーマクウェル様の事は、絶対に誰にも言わないー

「少し、そこに触れてみてもいいか?」

「…はい。」

恋人でも婚約者でも、ましてや家族でも無い異性に触れられると言うのは─なんて、全く他意の無い目をした王弟殿下には言えないよね?言ったら最後、自意識過剰だな─と嗤われるだけだよね。なんて思っているうちに、王弟殿下の手が私の傷痕のある場所に(服の上から)触れた。それに、私はまた無意識のうちにピクリと身体が反応した。

「痛むのか?」

「いえ。触れられるだけでは…痛みはありません。」

通常の生活には全く問題はない。ただ、左肩を大きく動かしたり、何かしらの衝撃を受けたりすると、ピリッとした痛みが出る。その辺をカバーしながらの武術の訓練は、本当に大変だったよね……お祖父様は、本当に容赦なく指導してくれたから、どうカバー?するかも身についた。本当に感謝だよね。

「確かな事は言えないし、駄目かもしれないが…俺の魔力を流してみても良いか?」

「はい??流す??」

「お前、風と水の魔持ちだろう?俺も風と水なんだ。で、何となくだが、俺とお前の魔力の相性が良さそうだから、試してみようかと思ってな。上手くいけば、流れの途切れを回復させられる。」

「えっと…もし、相性が悪ければ…どうなるんですか?」

「悪ければ、気持ち悪くなって…倒れるかもな……お前が。」

ーあぁ、被害を被るのは…私だけなんですねー

少し遠い目になったのは…気付いてないよね?

「学園で倒れるのは困りますから、今は止めて下さい。」

「それもそうだな。それでも、もし、試してみたいと思ったら声を掛けてくれ。じゃあ、残りの資料はまた目を通しておく。」

「はい、宜しいお願いします。」

ペコリと頭だけ下げて、私は生徒会室へと戻った。


















『お前、風と水の魔持ちだろう?俺も風と水なんだ。で、何となくだが、俺とお前の魔力の相性が良さそうだから、試してみようかと思ってな。上手くいけば、流れの途切れを回復させられる。』


他人に魔力を流して、途切れた魔力の流れを治す─本当に、そんな事ができるんだろうか?でも…それができたなら…。

「自分の未来も、少しは明るくなる…のかなぁ?」

魔力回復の為に、お父様やお祖父様が色々な手を尽してくれたけど、駄目だった。だから、期待し過ぎてはいけないけど

「試してみるのも…アリだよね」

兎に角、何かあってもいけないから、お父様に相談してみよう。それから…だよね?










その日、仕事から帰って来たお父様に相談してみると

「シルが試してみたいと言うなら、私は止めないよ?」

「え?良いの!?」

アッサリと許可された。

「え?反対されると思った?まぁ、普通なら反対するところだけど、王弟殿下だろう?魔力に関しての知識は素晴らしいモノがあるからなぁ。それに──」

「“それに”?」

「いや、何でもない。兎に角、何かあってはいけないから、する時には事前に報告するように。それと、誰か付き添いを付ける事。良いね?」

「分かったわ。」



いつになるかは分からないけど、次に王弟殿下に会った時、お願いをしてみよう─。




その機会は、その後直ぐに訪れた。












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