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面白い女の子
しおりを挟む「──あれ?」
何か良い匂いがして、目を開ける。
「起きたか?」
“起きたか?”─
「ひょっとして…私、寝てしまっていましたか?」
「あぁ。それはそれはグッスリとな……くくっ…」
「しっ…失礼しました!!!」
ガバッと起きて、そのままの勢いで頭を下げる。
「寝起きに、そんなに激しく動くと危ないぞ?」
王弟殿下は、何やら楽しそうに笑っているけど…王弟殿下に治療をしてもらった上に、そのまま寝落ちとか…有り得ない!!何て失礼極まりない事を!!
「丁度ランチの時間だったから、この部屋に用意をさせたが、食べれそうか?」
「はい!?ランチ…ですか!?そこ迄していただくのは─」
「もう二人分の用意が終わっているから、お前が要らないと言うなら…無駄になるだけだが?」
「ゔっ───。有難く…頂きます。」
「くくっ。無駄にならなくて良かった。」
体は正直なモノで、ただ治療を受けて寝ていただけなのにお腹は空いていたようで、用意されていた食事はいつもよりも多目だったにも関わらず、ペロリと平らげる事ができた。
ー私ってば…食い意地張ってるわねー
と思いながら、ジッと空になったお皿を見つめていると
「いつもよりも、お腹が空いていただろう?」
「え?あ、はい。いつもよりも…多いにも関わらずペロリといけてしまいました。」
「それは良い兆候だな。身体の中の魔力の流れが、良くなっている証拠だ。」
「え?」
お皿に向けていた視線を、パッと王弟殿下に向ける。
「魔力の流れが良くなると、その分魔力の量も増える。そうなると、増える分エネルギーを使うからその分食事量を増やさないと体がもたないからな。」
「魔力が…増える…」
グッと手に力が入る。
色んな治療を試しても回復しなかった魔力。その魔力が…回復する?本当に?
「今日初めてしたばかりだし、これからも順調にいくとも限らないが、先ずは…出だしは良好だな。身体への負担がどれ位掛かっているかも分からないから…2~3日程間を空けて治療をしようか。その間、もし何かあったら遠慮無く言ってくれ。」
「はいっ…ありがとう…ございます…。」
少し泣きそうになるのを、グッと我慢してお礼を言うと、困った顔をした王弟殿下に、また頭をポンポンと叩かれた。その王弟殿下の手は…とても温かいモノだった。
*アシュレイ視点*
ーシルフィー=キリクスー
キリクス一族に、100年ぶりに生まれた女の子。キリクス一族は勿論の事、国王陛下も喜んだ─のだが、どうやら、キリクス唯一の能力が使えない上、領地に引き籠もっているらしい。
例え俺が王弟であろうとも、その理由は知らされる事は無い。何か、特別な理由があるのだろう─と、俺はそのまま、その女の子の事は忘れてしまっていた。
その女の子に会ったのは偶然だった。
コンフォール学園の魔法学の先生の穴埋めで、教鞭をとる事になり、学園長に挨拶を兼ねて学園に行った時だった。
俺は社交が苦手な事もあって、あまり社交には顔を出していなかったのだが、彼女は俺が王弟である事に直ぐに気付いた。
ーちっ…面倒だなー
正直、俺はモテる。擦り寄って来る女性にはいつもうんざりする。まだ若かった頃は、それなりに楽しんではいたが…それも、中身の伴わない関係に疲れて来て、今では女性が鬱陶しいとさえ思ってしまっている。
しかし、その女の子は、俺が取った本を受け取ると、礼だけ言って踵を返してそのまま図書室から出て行った─自分の名前さえ言わずに。
「……」
こう言う扱いをされたのは初めてだった。
そして、2回目に会った時に、その女の子が、あのキリクスの女の子なのだと分かった。そして、何故能力が使えないのか─その理由も何となく分かった。
幼い頃に左肩に受けた毒矢のせいで、魔力がうまく流れていないからだろう。
許可を得て、服の上からその傷痕に触れる。俺は、相手に触れるとその人の魔力を感じ取る事ができるのだが…彼女の魔力は本当に微々たるモノだった。だが、その魔力は、俺にとって安心する様な温かいモノだった。
ーこんなに心地良い魔力は…初めてだなー
彼女は、白銀色の髪に、青色の瞳の可愛らしい顔立ちをしているが、常に表情は変わらない。俺を目の前にしても、顔を赤らめる事も微笑む事もない。無表情ではないが。何より、俺に媚びる様子が全く無いところが良い。
失った魔力や流れが戻るのか、それも気になる事もあり、治療をしていこうと話をつけた。
治療を終えると、彼女はそのまま寝てしまった。
ー無防備過ぎないか?ー
魔力の流れが良くなり、体力も奪われているだろうから仕方無いのかもしれないが…異性で、この部屋に2人キリ。
「逆に、心配になるな…」
いつも、肉食獣の様なギラギラとした視線を向けられるのだが…彼女は寝ている。
「まさか、俺から受ける治療が、今日だけだと思っていたとはな…。」
俺に媚びるどころか、さっさと距離を取りたい気持ちが溢れ過ぎていないか?
「面白いな───」
と、思わず口元がニヤついたのは、ここだけの話だ。
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