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29 崩壊の始まり
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*テオファーヌ=ドラクレイ視点*
「3年もの間、ご苦労だった」
「ありがとうございます」
ー何とも厭味ったらしい言い方だー
3年も掛かった─と言っているのだ。
ルテリアルにまともな騎士、兵力など無く、俺達スネフェリングの騎士達だけで片付けたにも関わらず。まともに感謝する事すらできない者がトップなのだから、騎士や貴族もまともではないのだろう。
『ありがとうございました』
ーいや、一人だけ、まともな子が居たなー
第二王女カミリア
3年前にルテリアルに行った時に、廊下にへたり込む第二王女を抱き上げて離宮迄運んでいる間、申し訳無さそうな顔をして必死に謝って、送り届けた後は、頭を下げてお礼を言っていた。色々と王女とは思えない子だった。年齢にしては小さく、王族とは思えない程の低姿勢。アマデュー大神官の要求で、人質としての名目で保護できた事は、正直ホッとした。結局、俺は挨拶をする事なく、軍を率いてルテリアルに来たから、あの子がどうなっているのかは分からない。ルテリアルよりはまとも──普通の生活ができているだろうけど。
ースネフェリングに戻ったら、挨拶をしに行こうかー
「後日やって来る復興支援部隊が到着し次第、私達はスネフェリングに帰還します」
それだけ伝えて、俺は謁見の間から退出した。
「テオファーヌ様、お疲れ様でした」
謁見の間を出たところで声をかけて来たのは、第一王女ヘレンティナだった。
「ありがとうございます」
「折角お会いできたので、今からお茶でもどうですか?」
「申し訳ありません。後始末や復興支援部隊との引き継ぎの作業があるので、ゆっくりしている時間がないんです」
「あら……この私の誘いを断るの?」
チラッと上目遣いで拗ねたような口調の第一王女。精霊の加護持ちだった前王妃の子で、稀な白属性で、今回の戦渦では怪我人の治療をしていて、貴族の間では高評価を得ているが、一緒に行動していた神官からの評判は良く無い。
『王女殿下は、貴族しか治癒しない』
『疲れたと言って、数人しか治癒しない』
『何かあれば、王妃陛下が庇うから、何も言えない』
と言っていた。この3年で思った事はただ一つ。4大精霊の加護が無くなったのは、王族の傲慢さが故だ。無くなって当然だ。そんなルテリアルがいつまでもつのか?
『10年……も掛からず、6年か7年あれば、自滅の路を自ら選ぶ事になると思うよ。きっちりお返しをしなければね?』
と、不敵に笑っていたアマデュー大神官。
ーアレは、聖人君子ではないー
スネフェリングの恩人に変わりはないが、今となっては、あの時アマデュー様個人としてスネフェリングを援助してくれたのは、俺達が使えると思ったからかもしれない。敵にまわすと恐ろしい存在となっていただろう。
「申し訳ありません。指揮を取る者として、職務を放棄する事はできませんので」
「スネフェリングの騎士は、融通がきかないのね。でも、今日は急だから仕方無いとして……次に声を掛けた時は、必ず来てもらうわ」
そう言って、第一王女は不満気な顔をして去って行った。
ー傲慢な王女だなー
お茶をするより、今は国内の立て直し、復興作業に専念するべき時なのだ。それは、王族が率先して行わなければならない。
「平和慣れや無知と言うのは、恐ろしいものだな」
ーまた声を掛けられる前に、引き継ぎ作業を調えて帰国しようー
第一王女の宣言通り、何度か声を掛けられたが忙しい事を理由に断り、その間にスネフェリングからの復興部隊が到着した。そうして、俺は第一王女とお茶をする事なくスネフェリングへの帰路に就いた。
*エイダン国王視点*
(国王執務室にて)
「スネフェリングの騎士団も、聞いていた程の実力では無かったな」
「そうですね……」
確かに、我が国の兵や民、領土の被害は少なかったが、いつもいつも最後の詰めが甘く、敵を逃しては又攻められ──気が付けば3年も経っていた。契約の5年迄、後2年。その2年、スネフェリングには食料を、スネフェリングは我が国の復興作業をしてもらうのだが──
「2年後は、もうスネフェリングを捨てても良いだろう」
ギライマは制圧され、もう二度とルテリアルに侵攻して来る事はない。それに、今回の事で、ルテリアルにはスネフェリング帝国が付いている─と示す事もできたのだから、そう簡単に我が国に手を出す国はないだろう。
「ですが…聖女レオノールと第二王女が、10年と言う契約ですから、もし、我々がスネフェリング帝国との約束を反故した─となると……第二王女は………」
宰相が言葉を濁す。
「惜しい事だが、聖女は大神官の元で保護されているだろし、アレに関して言えば、厄介払いができるのだから、都合が良いだろう」
*ルテリアル王国・宰相視点*
「カティエには、私から話しておく」
と、国王陛下はそう言って、私を執務室から下がらせた。
カティエ王妃の唯一の子であり、汚点と呼ばれている第二王女。何度か見掛けた事はあるが、儚げで今にでも消えてしまいそうな子だった。でも、あの王女の纏う空気がとても綺麗なもののような感じがして、私はどうしても第二王女が“汚点”だとは思えないのだ。
厄介払い──
「…………」
王族の傲慢さ。それを分かっていても諌める事ができない私のような者達。加護が無くなってしまったのは、当然の事だったのかもしれない。
「3年もの間、ご苦労だった」
「ありがとうございます」
ー何とも厭味ったらしい言い方だー
3年も掛かった─と言っているのだ。
ルテリアルにまともな騎士、兵力など無く、俺達スネフェリングの騎士達だけで片付けたにも関わらず。まともに感謝する事すらできない者がトップなのだから、騎士や貴族もまともではないのだろう。
『ありがとうございました』
ーいや、一人だけ、まともな子が居たなー
第二王女カミリア
3年前にルテリアルに行った時に、廊下にへたり込む第二王女を抱き上げて離宮迄運んでいる間、申し訳無さそうな顔をして必死に謝って、送り届けた後は、頭を下げてお礼を言っていた。色々と王女とは思えない子だった。年齢にしては小さく、王族とは思えない程の低姿勢。アマデュー大神官の要求で、人質としての名目で保護できた事は、正直ホッとした。結局、俺は挨拶をする事なく、軍を率いてルテリアルに来たから、あの子がどうなっているのかは分からない。ルテリアルよりはまとも──普通の生活ができているだろうけど。
ースネフェリングに戻ったら、挨拶をしに行こうかー
「後日やって来る復興支援部隊が到着し次第、私達はスネフェリングに帰還します」
それだけ伝えて、俺は謁見の間から退出した。
「テオファーヌ様、お疲れ様でした」
謁見の間を出たところで声をかけて来たのは、第一王女ヘレンティナだった。
「ありがとうございます」
「折角お会いできたので、今からお茶でもどうですか?」
「申し訳ありません。後始末や復興支援部隊との引き継ぎの作業があるので、ゆっくりしている時間がないんです」
「あら……この私の誘いを断るの?」
チラッと上目遣いで拗ねたような口調の第一王女。精霊の加護持ちだった前王妃の子で、稀な白属性で、今回の戦渦では怪我人の治療をしていて、貴族の間では高評価を得ているが、一緒に行動していた神官からの評判は良く無い。
『王女殿下は、貴族しか治癒しない』
『疲れたと言って、数人しか治癒しない』
『何かあれば、王妃陛下が庇うから、何も言えない』
と言っていた。この3年で思った事はただ一つ。4大精霊の加護が無くなったのは、王族の傲慢さが故だ。無くなって当然だ。そんなルテリアルがいつまでもつのか?
『10年……も掛からず、6年か7年あれば、自滅の路を自ら選ぶ事になると思うよ。きっちりお返しをしなければね?』
と、不敵に笑っていたアマデュー大神官。
ーアレは、聖人君子ではないー
スネフェリングの恩人に変わりはないが、今となっては、あの時アマデュー様個人としてスネフェリングを援助してくれたのは、俺達が使えると思ったからかもしれない。敵にまわすと恐ろしい存在となっていただろう。
「申し訳ありません。指揮を取る者として、職務を放棄する事はできませんので」
「スネフェリングの騎士は、融通がきかないのね。でも、今日は急だから仕方無いとして……次に声を掛けた時は、必ず来てもらうわ」
そう言って、第一王女は不満気な顔をして去って行った。
ー傲慢な王女だなー
お茶をするより、今は国内の立て直し、復興作業に専念するべき時なのだ。それは、王族が率先して行わなければならない。
「平和慣れや無知と言うのは、恐ろしいものだな」
ーまた声を掛けられる前に、引き継ぎ作業を調えて帰国しようー
第一王女の宣言通り、何度か声を掛けられたが忙しい事を理由に断り、その間にスネフェリングからの復興部隊が到着した。そうして、俺は第一王女とお茶をする事なくスネフェリングへの帰路に就いた。
*エイダン国王視点*
(国王執務室にて)
「スネフェリングの騎士団も、聞いていた程の実力では無かったな」
「そうですね……」
確かに、我が国の兵や民、領土の被害は少なかったが、いつもいつも最後の詰めが甘く、敵を逃しては又攻められ──気が付けば3年も経っていた。契約の5年迄、後2年。その2年、スネフェリングには食料を、スネフェリングは我が国の復興作業をしてもらうのだが──
「2年後は、もうスネフェリングを捨てても良いだろう」
ギライマは制圧され、もう二度とルテリアルに侵攻して来る事はない。それに、今回の事で、ルテリアルにはスネフェリング帝国が付いている─と示す事もできたのだから、そう簡単に我が国に手を出す国はないだろう。
「ですが…聖女レオノールと第二王女が、10年と言う契約ですから、もし、我々がスネフェリング帝国との約束を反故した─となると……第二王女は………」
宰相が言葉を濁す。
「惜しい事だが、聖女は大神官の元で保護されているだろし、アレに関して言えば、厄介払いができるのだから、都合が良いだろう」
*ルテリアル王国・宰相視点*
「カティエには、私から話しておく」
と、国王陛下はそう言って、私を執務室から下がらせた。
カティエ王妃の唯一の子であり、汚点と呼ばれている第二王女。何度か見掛けた事はあるが、儚げで今にでも消えてしまいそうな子だった。でも、あの王女の纏う空気がとても綺麗なもののような感じがして、私はどうしても第二王女が“汚点”だとは思えないのだ。
厄介払い──
「…………」
王族の傲慢さ。それを分かっていても諌める事ができない私のような者達。加護が無くなってしまったのは、当然の事だったのかもしれない。
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