見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない

みん

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30 帰還

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ギライマからの侵攻は、3年で終結した。


その為、ルテリアルに派遣されていた部隊がスネフェリングに帰還する事になり、代わりに復興支援部隊が新たに派遣される事になった。


「復興支援迄してくれるなんて……有り難い事ですね」
「それ程ルテリアルに被害は出ていないと言っていたので、1、2年もすれば元の生活に戻れるのでは?と、報告が上がってました」

早いもので、15歳でスネフェリングにやって来た私も、もうすぐ19歳になる。4年もまともな生活を送る事ができたせいか、まだ小柄ではあるけど、年相応に見えるようになった──と、私は思っている。

胸が成長していないのは、まだ成長期に入っていないから──と思っている。


「ちょうど5年…程ですね」

5年の間はお互いに助け合う事を条件に、スネフェリングの力を借りたルテリアル。その5年はきっちり守るだろうけど、その後の5年は微妙だ。契約内容としては、“必要な時があれば助け合う”と言う様なものだった。そこに、強制や義務が無い。聖女レオノールと人質の王女わたしがスネフェリングに居るから、本来であればルテリアルが裏切る事は無いと思いたいけど、信じられないのは、父が国王だから。

「明後日に騎士団が帰還しますから、凱旋パレード並の歓迎の中帰城されます。そして、翌日の夜には慰労会を兼ねた宴が開かれます。その慰労会には、カミリア様もご出席していただく─との事です」
「私が…ですか!?」
「はい。皇帝陛下の命で、レオノール様もご出席されます」

レオノールは分かるけど、私も参加して良いのかな?ある意味、ギライマから侵攻される原因の一つの存在の私なのに。

「カミリア様、余計な…無意味な考えはお捨て下さい。素直に、同盟国として、勝った事を一緒に祝って騎士達を労うだけです。カミリア様も出席して祝う権利はあります」
「アンナさん、ありがとうございます」
「お礼なんて要りませんわ」

アンナさんもウラリーさんも、相変わらず私に優しい。ルテリアルでは一緒に居てくれた二つの光のように、一緒に居ると気持ちが温かくなる。

「では、既に何着か選んでますから、試着していただきます!」
「あー……はい……宜しくお願いします」

そうして、また、私は着せ替え人形よろしく──となったのだった。






そして、2日後─


第一騎士団副団長率いる騎士団が王都に姿を現すと、そこから王城迄の沿道は貴族平民問わず見物者で埋め尽くされ、凱旋パレードさながらに盛り上がり、騎士団はその中全員元気に帰城した。



*テオファーヌ=ドラクレイ視点*


「テオ、お疲れ様」
「兄上、お久し振りです」

帰城して直ぐに騎士団専用の広場で皇帝陛下の出迎えを受け、労いの言葉を頂いた後、明日の夜の慰労会の説明会と、明後日から1ヶ月の休暇を言い渡され、そのまま解散となった。
それから、俺は城内にある宰相兄上の執務室へとやって来た。

「3年も、よくな」
「俺よりも、前線に居た者達の方が大変そうでしたよ」

直ぐに制圧できる相手に、ズルズルと長引かせるのは、負けるよりもストレスが大きかったのかもしれない。

「大神官は、一体何を考えているんですか?兄上は知ってるんですか?」
「んー…詳しい事は私にも分からないけど、スネフェリングにとっては良い事なんだそうだ。皇帝陛下も納得しているから、大丈夫だろう」

宰相である兄上も知らない大神官の目的。皇帝陛下は知ってるいるそうで、納得しているのなら、スネフェリングが損をしたり被害を受ける事は無いだろう。

「ところで………」
「あぁ、ルテリアルの第二王女の事だろう?」

そう、ずっと気になっていた第二王女。
ルテリアルに居る間、耳にしたのは第一王女を称える言葉と第二王女を侮蔑する言葉だった。
ギライマからの侵攻の原因を、大の大人がまだまだ幼い女の子のせいにしているのには、呆れて物も言えなかった。(表向き)人質としてスネフェリングに行った第二王女の事を気に掛ける者は、誰も居なかった。


『聖女レオノール様は、10年したら戻ってくるそうだ』
『なら、大丈夫ね』

ー何が『大丈夫』なのかー

「相変わらず、公の場どころか城内の庭園にすら滅多に出る事はないけど、ルテリアルに居た頃よりは良くなっているよ。侍女達とは仲が良いようで、楽しそうにしているのをよく見掛けるよ」
「そうですか。なら良かった」

ー明日、挨拶をしようー

「明日の慰労会に出席される予定だから、その時にでも挨拶ができるだろう。だから、取り敢えず、今日は疲れているだろうから、家に帰ってゆっくりするように。マルティーヌとマルゲリットも待っているだろうしね」
「そうですね。家に帰ります」
「うん。本当、お疲れ様」

そう言って、兄上に肩をポンポンと軽く叩かれた後、俺は執務室から出て帰宅の途に就いた。







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