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33 穏やかなティータイム
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テオファーヌ=ドラクレイ様は、以前、私を抱き上げて離宮オニキス迄運んでくれた護衛の人だった。
「本当に、重ね重ねありがとうございます!」
あの時、その場に居たルテリアルの騎士は、その場にへたり込んだ私を気にする事もなく、微動だにしなかったけど、直ぐに私を助けてくれた人だ。
「騎士として当たり前の事をしただけですから、気にしないで下さい」
ーその当たり前の事をされていなかった王女だけどー
「それと、これを……」と、目の前に出されたのはピンク色の薔薇の花束だった。
「ありがとうございます」
これも大きな花束ではなく、小さ目の花束だけど、私にとっては丁度良くて、気持ち的に素直に受け取れる大きさ。
「アンナさん、これも飾ってもらえますか?」
「勿論です」
と、アンナさんは花瓶に挿し直してテーブルの上に置いてくれた。
『兄上も居てややこしいので“テオファーヌ”と呼んで下さい』
テオファーヌさんは、宰相と同じ黒い髪だけど、瞳の色は宰相の青色よりも薄い青─空色で、少し冷たい印象の顔付きだけど、声がとても優しい。私を抱き上げる前に掛けてくれた声も優しかった事を、今でもハッキリと覚えている。その時の印象通り、今目の前に居るテオファーヌさんの目や声は優しくて、色んな話をしてくれて、聞いているだけでも楽しい気持ちになる。
「───で、ここ2年程は、寒季の寒さも酷くないと聞いていたけど、本当にそのようで、驚いているんです」
「そうなんですね。それは、きっとレオノールが穢れた土地を浄化しているからかもしれませんね」
「それもあるでしょうが………」
うーん……と、少し思案するテオファーヌさん。
本当に、去年よりも今年の寒季は更に穏やかな天気が増えている。普段なら、寒さが増して育たない食物の収穫ができていたり、例年なら枯れてしまっていた草花がまだ咲いていたりしている。
「兎に角、穏やかな天気が増えている事は良い事ですよね。それでも、やっぱり私とレオノールにとっては、まだまだ慣れない寒さですけど」
「確かに、ルテリアルの気候に慣れていると、スネフェリングの寒季は辛いものがありますね。防寒対策はしっかりして下さい」
そうして、初めての男性と2人だけのティータイムだったけど、そんな事を意識し過ぎる事も、気不味くなるような事も無く、私は最後まで楽しい時間を過ごす事ができた。
*アンナ視点*
「カミリア様もテオファーヌ様も、終始穏やかに笑顔でティータイムを楽しんでいらっしゃいました」
「テオが?」
ドラクレイ宰相が驚くのも無理はない。
最年少で第一騎士団副団長に上り詰めたテオファーヌ様。少し冷たい印象ではあるけど、実際は穏やかな性格で、彼に憧れている令嬢は比較的多い。ただ、テオファーヌ様は女性や恋愛にあまり興味が無いらしく、25歳を超えた今でも、恋人も婚約者も居ない。そんなテオファーヌ様が、カミリア様に二度も花束を贈ったり、手紙を出したり、お茶をしたり──しかも、あの花束の大きさが絶妙な大きさだった。あれより小さいと見劣りするし、あれより大きいとカミリア様が萎縮してしまう。あの大きさが丁度良い。そして、口調がいつもより優しくてゆっくりだから、カミリア様が落ち着いていた。あんな穏やかに笑うカミリア様は、滅多にお目にかかれない。『テオファーヌ様、ありがとうございます』と、何度心の中でお礼を言ったのか分からない。
「テオファーヌ様は、25歳程でしたか?」
「26歳だ。そうか………」
私とドラクレイ宰相は、視線を合わせてニコリと笑う。
「可愛い妹がもう一人増えるのも良いかもしれないね。多分、マルゲリットとマルティーヌにとってもど真ん中だと思うんだ」
「なるほど…とは言え、カミリア様のお気持ち次第ですが」
「それは十分承知している」
ルテリアルでのカミリア様が、どんな存在でどんな扱いをされていたのかは知っている。なんとも愚かな家族達。10年経っても、カミリア様がルテリアルに帰る必要なんてどこにも無いし、返すつもりも無い─と思っているのは、私やウラリーだけではないだろう。
ドラクレイ宰相も同じ気持ちのようだと言う事は、皇帝陛下も反対しない可能性が高い。
ドラクレイ家は公爵、カミリア様はルテリアルの王女で、釣り合いは取れている、
「取り敢えずは、お二人を見守りつつ様子をみる事にします」
「お願いしますね」
ドラクレイ宰相との話が終わり、カミリア様の元へと戻ると、『おかえりなさい』と迎え入れてくれるカミリア様。そのはにかんだ笑顔はいつも可愛らしい。その上、今日はピンク色の花を見てニコニコしている。
ーこの笑顔がいつまでも続きますようにー
と、私は願わずにはいられない。
「本当に、重ね重ねありがとうございます!」
あの時、その場に居たルテリアルの騎士は、その場にへたり込んだ私を気にする事もなく、微動だにしなかったけど、直ぐに私を助けてくれた人だ。
「騎士として当たり前の事をしただけですから、気にしないで下さい」
ーその当たり前の事をされていなかった王女だけどー
「それと、これを……」と、目の前に出されたのはピンク色の薔薇の花束だった。
「ありがとうございます」
これも大きな花束ではなく、小さ目の花束だけど、私にとっては丁度良くて、気持ち的に素直に受け取れる大きさ。
「アンナさん、これも飾ってもらえますか?」
「勿論です」
と、アンナさんは花瓶に挿し直してテーブルの上に置いてくれた。
『兄上も居てややこしいので“テオファーヌ”と呼んで下さい』
テオファーヌさんは、宰相と同じ黒い髪だけど、瞳の色は宰相の青色よりも薄い青─空色で、少し冷たい印象の顔付きだけど、声がとても優しい。私を抱き上げる前に掛けてくれた声も優しかった事を、今でもハッキリと覚えている。その時の印象通り、今目の前に居るテオファーヌさんの目や声は優しくて、色んな話をしてくれて、聞いているだけでも楽しい気持ちになる。
「───で、ここ2年程は、寒季の寒さも酷くないと聞いていたけど、本当にそのようで、驚いているんです」
「そうなんですね。それは、きっとレオノールが穢れた土地を浄化しているからかもしれませんね」
「それもあるでしょうが………」
うーん……と、少し思案するテオファーヌさん。
本当に、去年よりも今年の寒季は更に穏やかな天気が増えている。普段なら、寒さが増して育たない食物の収穫ができていたり、例年なら枯れてしまっていた草花がまだ咲いていたりしている。
「兎に角、穏やかな天気が増えている事は良い事ですよね。それでも、やっぱり私とレオノールにとっては、まだまだ慣れない寒さですけど」
「確かに、ルテリアルの気候に慣れていると、スネフェリングの寒季は辛いものがありますね。防寒対策はしっかりして下さい」
そうして、初めての男性と2人だけのティータイムだったけど、そんな事を意識し過ぎる事も、気不味くなるような事も無く、私は最後まで楽しい時間を過ごす事ができた。
*アンナ視点*
「カミリア様もテオファーヌ様も、終始穏やかに笑顔でティータイムを楽しんでいらっしゃいました」
「テオが?」
ドラクレイ宰相が驚くのも無理はない。
最年少で第一騎士団副団長に上り詰めたテオファーヌ様。少し冷たい印象ではあるけど、実際は穏やかな性格で、彼に憧れている令嬢は比較的多い。ただ、テオファーヌ様は女性や恋愛にあまり興味が無いらしく、25歳を超えた今でも、恋人も婚約者も居ない。そんなテオファーヌ様が、カミリア様に二度も花束を贈ったり、手紙を出したり、お茶をしたり──しかも、あの花束の大きさが絶妙な大きさだった。あれより小さいと見劣りするし、あれより大きいとカミリア様が萎縮してしまう。あの大きさが丁度良い。そして、口調がいつもより優しくてゆっくりだから、カミリア様が落ち着いていた。あんな穏やかに笑うカミリア様は、滅多にお目にかかれない。『テオファーヌ様、ありがとうございます』と、何度心の中でお礼を言ったのか分からない。
「テオファーヌ様は、25歳程でしたか?」
「26歳だ。そうか………」
私とドラクレイ宰相は、視線を合わせてニコリと笑う。
「可愛い妹がもう一人増えるのも良いかもしれないね。多分、マルゲリットとマルティーヌにとってもど真ん中だと思うんだ」
「なるほど…とは言え、カミリア様のお気持ち次第ですが」
「それは十分承知している」
ルテリアルでのカミリア様が、どんな存在でどんな扱いをされていたのかは知っている。なんとも愚かな家族達。10年経っても、カミリア様がルテリアルに帰る必要なんてどこにも無いし、返すつもりも無い─と思っているのは、私やウラリーだけではないだろう。
ドラクレイ宰相も同じ気持ちのようだと言う事は、皇帝陛下も反対しない可能性が高い。
ドラクレイ家は公爵、カミリア様はルテリアルの王女で、釣り合いは取れている、
「取り敢えずは、お二人を見守りつつ様子をみる事にします」
「お願いしますね」
ドラクレイ宰相との話が終わり、カミリア様の元へと戻ると、『おかえりなさい』と迎え入れてくれるカミリア様。そのはにかんだ笑顔はいつも可愛らしい。その上、今日はピンク色の花を見てニコニコしている。
ーこの笑顔がいつまでも続きますようにー
と、私は願わずにはいられない。
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