奪われたものは要りません

みん

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21 家

「見送りに行かなくていいの?」
「はい。あの、時間ができた時で良いので、話を聞いてもらえますか?」
「良いわよ。2、3日は後処理でバタバタするから無理だけど、落ち着いたら声を掛けるわ」
「はい。宜しくお願いします」


使節団と一緒に“お母さん”も帰る前に、ルチア様が見送りをしようと声を掛けてくれたけど、私は断った。今の雰囲気からして、夜中の事は“お母さん”からも大公様からも伝えられていないようだった。かと言ってこのまま言わないのもよくないと思うから、私から話をして、もう“お母さん”を探すのは止めると言う事を伝えるつもりだ。それと、これからの事も話をしないといけない。いつまでも、ここには居られないのだから。


「ティニー、大丈夫か?」
「あ、大公様!?」
「ドアを何度かノックしたんだが、返事がなくて。勝手に入って来たんだが………」
「すいません。考え事をしていて気が付きませんでした」
「そうか……」
「それで、何かご用でしたか?」
「用と言うか、帰る前に顔でも見ておこうかと思ってね」
「わざわざ、ありがとう……ございます?」

面と向かって、正面からしっかりと大公様を目にするのは初めてだけど、大公様は思っていたよりも若い。今の国王様の弟だけど大公様は第一側妃様の子で、歳も離れていると聞いた事がある。きっと、“お母さん”よりも若い。銀色に近い白髪で青色の瞳はとても綺麗だ。

「まあ……また、近いうちに会うと思うけど」
「はい?」
「いや、何でもない。では、元気でな」
「ありがとうございます。大公様、道中お気を付けてお帰り下さい」

大公様が言った事は聞き取れなかったけど、こんな私を気遣ってくれたのかもしれない。
1番会いたかった人とは、マトモに話すらできなかったのに。


そうして、使節団は列を組んで去って行き、“お母さん”もナディーヌと一緒の馬車に乗り込み去って行った。本当に、傍から見ると仲の良い母娘そのものだった。

ナディーヌ──

その名前は、死んだお父さんが付けた名前だと言っていた。“希望”と言う意味があると言っていた。その意味通りに色んな希望があったけど、その希望が叶う事は無い。その名前さえも奪われたのだから。




******


それから、ルチア様との時間がとれたのは1週間後だった。しかも───

「大公様!?」
「元気そうで良かった」

何故か、ルチア様だけじゃなく、王都に帰った筈の大公様と、エリック様とオリビアさんも一緒だった。

「急にでごめんなさいね。グリンデルバルド様が、ティニーに話があるらしくて……エリックとオリビアを連れて来たのは、今後の話もしようと思ったからなの。良いかしら?」
「あ、はい、大丈夫です」
「ありがとう」

大公様には驚いたけど、これからの話をしようと思っていたから、エリック様とオリビアさんの同席は良かった。
お茶が用意されて椅子に座ると、先ずは大公様が口を開いた。

「すまないが、私から話をさせてもらうよ。ピサンテ村の事なんだけど───」


ピサンテは壊滅した為、その土地は国へと返還される事になり、その土地の管理を大公様がする事になったそうだ。過去の慣例からすれば、辺境地にある村の管理とは名ばかりで放置に近い扱いになるけど、今回はそうではないらしい。

「ティニー達の家に張られた結界を続けて調べる事になってね。あの家に滞在する事を許してもらえるだろうか?」
「え?」
「駄目なら駄目で、転移魔法を使えば──」
「あ、違うんです。滞在してもらっても良いんですけど……何故私に許可を?もう、私はあの家には住めないのに」
「確かに、ティニーがあの家に住む事はできないけど、ティニーの家である事に変わりはないだろう?その家に滞在するんだから、ティニーの許可をもらわないといけないよね?」

“ティニーの家”

大公様は、私の話を信じてくれて私の話も聞いてくれて、こうやって私の意見を聞いてくれている。

「ありがとうございます。滞在してもらっても良いんですけど、大公様からしたら小さくて狭い家だから、居心地は悪いかもしれませんけど。あ、その事についておか……は何か言ってませんでしたか?」
「公女にも話をしたが、ピサンテには良い思い出はないから、あの家にも執着は無いようで好きにしてもらって良いと言われたんだ」
「そう……ですか………」

確かに、ピサンテにはあまり良い思い出はない。でも、あの家はお父さんの思いが詰まっているし、お母さんとの楽しかった思い出もある。それも、公女様にとってはどうでもいいものなのかな?

「あの……滞在を許可するかわりと言ったら烏滸がましいかもしれませんけど、お願いを聞いてもらえますか?」
「必ず──とは約束はできないけど、何かな?」
「と、そのお願いをする前に、ルチア様達に話しておく事があります」

と、私は大公様にお願いをする前に、ルチア様達にあの日の“お母さん”とのやり取りを話した。



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