48 / 91
48 大きな一歩
「魔力の流し方はいつも通りにすれば大丈夫だからね」
「はい」
「たとえ魔獣が出て来ても、セレーナには髪の毛1本も触れさせないから安心してちょうだい」
「はい」
あの木の魔法陣を発動させる日の3日前から、何度も模擬訓練をして、当日の今日を迎えた。
念の為に、私はお父さんの“護りのマント”を羽織っている。そして、頭の中で最終確認をする。
魔法陣に魔力を流す
暫く流しても発動しない場合は、一度流すのを止める
発動した場合は、そのまま魔力を流し続けて様子を見た後、魔法陣がハッキリ浮かび上がっている事が確認できたら魔力を止めて、魔法陣を“模写”する
上書きの魔法は弾かれるから、浮かび上がった魔法陣を模写する事になった。その模写の魔法も、それなりの高度な魔法だけど、エルトン様もジェラール様もアデールさんも使えるんだそうだ。
ー周りの人達が凄過ぎるー
兎に角、私はそんな凄過ぎる人達に護られているから、信じて安心して落ち着いて魔力を流すだけ。
「セレーナの良いタイミングで始めれば良いからね」
数回の深呼吸を繰り返してから、私は少しずつ魔力を魔法陣に流し始めた。
複雑な魔法陣であればあるほど必要な魔力は多くなるから、この魔法陣も少し流したところで発動する事はない。必要な魔力が取り込まれると、光を発して魔法陣が浮かび上がる。それでようやく魔法陣が発動するから、それ迄は魔力を流し続ける必要がある。
ー気を緩めると、一気にごっそり持って行かれそうー
魔力を一気に持って行かれないように、自分で調節をしながら少しずつ流さないといけない。一体どれ程の魔力が必要なのか──ただ、私の魔力を取り込んでいると言う事は、この魔法陣を発動させられる可能性があると言う事。
ー絶対に成功させる!ー
私は、そのまま魔力を少しずつ流し続けた。
ブンッ──
と小さな音を立てた後、光を発した魔法陣が浮かび上がった。
「セレーナ、そのまま落ち着いて続けて」
アデールさんの言葉に頷いて、そのまま魔力を流し続けると、更に魔法陣の光が増して、組み込まれた魔法陣がハッキリと浮かび上がった。
「私がいこう。セレーナ、一旦魔力を止めてくれ」
エルトン様に言われて魔力の流れを止めるとすぐに、浮かび上がった魔法陣を“模写”した。
「それじゃあ、また魔力を流してもらうけど、ここからは更に気を引き締めて行こう」
「はい」
私はまた、魔力を流し始めた。
暫く流し続けると、魔法陣の中心部分に穴のような空間ができて、それが少しずつ広がって行った。
ーあの穴の奥から、何か嫌な感じがするー
今すぐ逃げたくなるような嫌な感じで、自然と体が震えだす。
「大丈夫だ」
「!?」
背後から私の肩に手を添えて支えるように立って、優しい声を掛けてくれたのはジェラール様だ。
「何があってもセレーナを護るから」
「はい……」
肩に添えられた手と、掛けられた声に安心して、体の震えも落ち着いた。ただただ、嫌な感じが消える事はない。
「来る────」
「っ!!」
ジェラール様のその一言の後、魔法陣の穴の奥から現れたのは───
「ヘルハウンドか!」
あの日の夜に窓越しに見た魔獣だった。
ー大丈夫!今日の私は独りじゃない!ー
「私に任せて!」
アデールさんはそう言うと、魔法陣から完全に出て来る前に、そのヘルハウンドに攻撃魔法を飛ばして意識を失わせた後、眠らせる魔法を掛けて、用意していた“魔力封じ”を掛けた結界の中に閉じ込めた。
“魔力封じ”とは、魔獣対策の魔法の1つで、魔力を持ったモノの魔力の流れを止める魔法で、魔力の流れを止めると、魔法が使えなくなる。魔獣の命の源は魔力だから、魔力封じの魔法を掛けられると、ただの普通の動物と変わらない生き物になる。
「セレーナ、魔力の流れを止めても良いよ」
「はい」
ジェラール様に言われたところで、私は魔力を流すのを止めたけど、魔法陣は光を発して発動したままだ。
「まだ魔獣が出て来るかもしれないな」
「今回、1頭しか出て来なかったと言う事は、前回は、予め捕獲しておいた魔獣を一気に召喚したのかもしれないわね」
もしそうなら……どうしてここまでしてピサンテを?いつから計画を?まだまだ分からない事だらけだ。でも、焦ったところで仕方無い。先ずは、目の前の事を1つずつ調べていけば良い。駄目だと思っていた魔法陣を発動させる事ができた。それは、大きな一歩だ。
「まだ魔獣が現れるかもしれないけど、この魔法陣に返還の魔法も組み込まれているかどうかの確認もしたいから、このまま警戒しながら様子を見よう」
あの日の惨劇は朝を迎える前には、魔獣は居なくなっていた。少なくとも、この魔法陣は3時間以上は稼働していた事になる。そんな複雑な魔法陣を、たった1日で準備ができるとは思え無い。本当に、カイリーさんは、いつから計画をたてていたんだろう?
「はい」
「たとえ魔獣が出て来ても、セレーナには髪の毛1本も触れさせないから安心してちょうだい」
「はい」
あの木の魔法陣を発動させる日の3日前から、何度も模擬訓練をして、当日の今日を迎えた。
念の為に、私はお父さんの“護りのマント”を羽織っている。そして、頭の中で最終確認をする。
魔法陣に魔力を流す
暫く流しても発動しない場合は、一度流すのを止める
発動した場合は、そのまま魔力を流し続けて様子を見た後、魔法陣がハッキリ浮かび上がっている事が確認できたら魔力を止めて、魔法陣を“模写”する
上書きの魔法は弾かれるから、浮かび上がった魔法陣を模写する事になった。その模写の魔法も、それなりの高度な魔法だけど、エルトン様もジェラール様もアデールさんも使えるんだそうだ。
ー周りの人達が凄過ぎるー
兎に角、私はそんな凄過ぎる人達に護られているから、信じて安心して落ち着いて魔力を流すだけ。
「セレーナの良いタイミングで始めれば良いからね」
数回の深呼吸を繰り返してから、私は少しずつ魔力を魔法陣に流し始めた。
複雑な魔法陣であればあるほど必要な魔力は多くなるから、この魔法陣も少し流したところで発動する事はない。必要な魔力が取り込まれると、光を発して魔法陣が浮かび上がる。それでようやく魔法陣が発動するから、それ迄は魔力を流し続ける必要がある。
ー気を緩めると、一気にごっそり持って行かれそうー
魔力を一気に持って行かれないように、自分で調節をしながら少しずつ流さないといけない。一体どれ程の魔力が必要なのか──ただ、私の魔力を取り込んでいると言う事は、この魔法陣を発動させられる可能性があると言う事。
ー絶対に成功させる!ー
私は、そのまま魔力を少しずつ流し続けた。
ブンッ──
と小さな音を立てた後、光を発した魔法陣が浮かび上がった。
「セレーナ、そのまま落ち着いて続けて」
アデールさんの言葉に頷いて、そのまま魔力を流し続けると、更に魔法陣の光が増して、組み込まれた魔法陣がハッキリと浮かび上がった。
「私がいこう。セレーナ、一旦魔力を止めてくれ」
エルトン様に言われて魔力の流れを止めるとすぐに、浮かび上がった魔法陣を“模写”した。
「それじゃあ、また魔力を流してもらうけど、ここからは更に気を引き締めて行こう」
「はい」
私はまた、魔力を流し始めた。
暫く流し続けると、魔法陣の中心部分に穴のような空間ができて、それが少しずつ広がって行った。
ーあの穴の奥から、何か嫌な感じがするー
今すぐ逃げたくなるような嫌な感じで、自然と体が震えだす。
「大丈夫だ」
「!?」
背後から私の肩に手を添えて支えるように立って、優しい声を掛けてくれたのはジェラール様だ。
「何があってもセレーナを護るから」
「はい……」
肩に添えられた手と、掛けられた声に安心して、体の震えも落ち着いた。ただただ、嫌な感じが消える事はない。
「来る────」
「っ!!」
ジェラール様のその一言の後、魔法陣の穴の奥から現れたのは───
「ヘルハウンドか!」
あの日の夜に窓越しに見た魔獣だった。
ー大丈夫!今日の私は独りじゃない!ー
「私に任せて!」
アデールさんはそう言うと、魔法陣から完全に出て来る前に、そのヘルハウンドに攻撃魔法を飛ばして意識を失わせた後、眠らせる魔法を掛けて、用意していた“魔力封じ”を掛けた結界の中に閉じ込めた。
“魔力封じ”とは、魔獣対策の魔法の1つで、魔力を持ったモノの魔力の流れを止める魔法で、魔力の流れを止めると、魔法が使えなくなる。魔獣の命の源は魔力だから、魔力封じの魔法を掛けられると、ただの普通の動物と変わらない生き物になる。
「セレーナ、魔力の流れを止めても良いよ」
「はい」
ジェラール様に言われたところで、私は魔力を流すのを止めたけど、魔法陣は光を発して発動したままだ。
「まだ魔獣が出て来るかもしれないな」
「今回、1頭しか出て来なかったと言う事は、前回は、予め捕獲しておいた魔獣を一気に召喚したのかもしれないわね」
もしそうなら……どうしてここまでしてピサンテを?いつから計画を?まだまだ分からない事だらけだ。でも、焦ったところで仕方無い。先ずは、目の前の事を1つずつ調べていけば良い。駄目だと思っていた魔法陣を発動させる事ができた。それは、大きな一歩だ。
「まだ魔獣が現れるかもしれないけど、この魔法陣に返還の魔法も組み込まれているかどうかの確認もしたいから、このまま警戒しながら様子を見よう」
あの日の惨劇は朝を迎える前には、魔獣は居なくなっていた。少なくとも、この魔法陣は3時間以上は稼働していた事になる。そんな複雑な魔法陣を、たった1日で準備ができるとは思え無い。本当に、カイリーさんは、いつから計画をたてていたんだろう?
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
幼馴染が夫を奪った後に時間が戻ったので、婚約を破棄します
天宮有
恋愛
バハムス王子の婚約者になった私ルーミエは、様々な問題を魔法で解決していた。
結婚式で起きた問題を解決した際に、私は全ての魔力を失ってしまう。
中断していた結婚式が再開すると「魔力のない者とは関わりたくない」とバハムスが言い出す。
そしてバハムスは、幼馴染のメリタを妻にしていた。
これはメリタの計画で、私からバハムスを奪うことに成功する。
私は城から追い出されると、今まで力になってくれた魔法使いのジトアがやって来る。
ずっと好きだったと告白されて、私のために時間を戻す魔法を編み出したようだ。
ジトアの魔法により時間を戻すことに成功して、私がバハムスの妻になってない時だった。
幼馴染と婚約者の本心を知ったから、私は婚約を破棄します。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。