召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん

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満月の夜

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夕方になり、少し早めの夕食をとる。
白狼になっているとしても、どうしても生肉は受け付けないから、アシーナさんが食べる物と同じように、肉は火を通した物を食べるけど、基本は果物だけでもお腹がいっぱいになる。この東の森には色んな果物が生っているから、色んな果物が食べれて嬉しい。

そうして、外が段々暗くなってくるにつれて、何となく…身体がムズムズすると言うか、違和感?のようなモノを感じてくるようになり──


「太陽が完璧に沈むわ。今日は満月。どうなるかしら?」

と、アシーナさんが呟いた後、私の体が銀色の光に包まれだした。

『─っ!?』

眩しくて、何が起こっているのか分からなくて、ギュッと目を瞑る。すると、少しずつ光が落ち着いていったのか、眩しい感じがなくなり、ソロソロと目を開けると──

「あ、視線が………高い?」

右手を持ち上げて見ると、グウ、チョキ、パーができる5本指の手があった。

「戻ってる!?」

両手でガッツポーズをしながら、後ろに居るアシーナさんを振り返ると「良かったわね」と笑いながら手鏡を渡してくれた。その鏡を覗くと、確かに、人間ひとの姿に戻った私が映っている。

ただ──

黒い瞳の中にあるキラキラはそのままそこにある。
肩程迄ある髪色は黒だけど、毛先に近付く程色が薄く─アッシュグレーになり、毛先はホワイトアッシュな色になっている。

きっと、月の加護の影響なんだろう。お金を掛けずに、カラーリングをした─感じかな?

そして、とっても不思議な事に、この世界にやって来る前の服装である制服を着ていた。

ーこれも、ファンタジーな要素だよね?ー





*アシーナ視点*

私の目の前で、白狼から人間ひとの姿に戻った“ルーナ”である“キョウコ”は、まだまだ幼さの残る女の子だった。
白狼として対応している様子が、あまりにも落ち着いていて、言葉遣いも丁寧だった為、良いところの成人した女性だと思っていた。
それが、今は手に持っている手鏡を、クリクリとした目で覗き込んでいる姿は、子供っぽくて可愛らしい。

ー白狼姿のルーナも、とても可愛らしいけどー

となれば──異世界に居るであろう親にとっては、子が居なくなる─“死”と言うのは……辛い事だろう。それは、キョウコも同じ事。元の世界には還れず、親にももう二度と会えないのだから。

「キョウコは、まだまだ幼かったのね。いくつなの?」

「幼い……ですか?えっと……一応18歳です」

「18!?」

これには驚いた。この世界では18歳で成人と見做される為、キョウコもこの世界では成人扱いとなる。キョウコは貴族でも無い為、社交会デビューをする必要な無いけど。

兎に角。これで、キョウコが完璧に白狼になった訳ではないと言う事が分かった。1人はぐれてしまったキョウコを護る為の、水の精霊の加護の一つなんだろう。

「ところで、その服は……」

「あ、これは、私がここに来る前に着ていた服です。何て言うか…不思議な原理ですけど……元の姿に戻った時に、裸じゃなくて良かったです」

ニッコリ笑うキョウコ。

ー気になったところはソコなのね?ー

一晩泣いただけで、気持ちに区切りがついた訳でも、消化できた訳でもないだろう。でも、キョウコは、あの日以降は泣く事も怒る事もない。
一緒に召喚された筈の4人。話を聞いてから、あちこちから情報を探ってみたけど、キョウコ以外に異世界からような者達は見付からなかった。一緒に召喚されて、1人居なくなっていたら探されるだろうけど、そう言う話も何処にもなかった。この国以外の国に召喚されたのか──もう少し調べる必要がある。

キョウコは召喚の魔法陣から外れて飛ばされてしまったけど、魔力と、月と水の加護を得たと言う事は、この世界にと言う事。弾かれてしまっても、同じ月属性の魔女わたしの管理する東の森に落ちて来たのも、何かしらの理由があるかもしれない。ならば、私が、この世界でのキョウコの親となり師となろう。


「その服では、この世界では浮いてしまうから、明日は…服やこれから必要な物を買いに行きましょうか」

「これから…必要な物…。あの…私…このままここで、アシーナさんと一緒に居ても良いんですか?」

クリクリとした目を更に大きくして、驚いたような顔をしているキョウコは、とても可愛らしい。

「勿論、キョウコが嫌だと言うなら無理強いはしないけど─」
「嫌じゃありません!嬉しいです!ありがとうございます!」

と、キョウコは本当に嬉しそうに笑う。そんな嬉しそうに笑うキョウコを見ていると、私まで嬉しくなる。

ーこの笑顔を守ってあげたいー

素直にそう思えた。




ー勿論、白狼姿のルーナも、とっても可愛らしいと言う事は……言うまでもないー




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