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精霊の祝福

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『それで……私の愛しい子に怪我をさせたのは…だあれ?』

私に言われている訳じゃないのに、体がカタカタと震える。キュッとリュークレインさんにしがみつけば、「─可愛いな…」と呟きながら、抱っこしたままで背中を優しく撫でてくれた。

ーあぁ…リュークレインさんに撫でられると、本当に落ち着くなぁー

相変わらず水の精霊さんの圧をピリピリと感じるけど、リュークレインさんのお陰で少し気持ちが落ち着いてきて、そのままスリッとリュークレインさんの胸に顔を擦り付けた。

その時、リュークレインさんがビクッとなって、少し何かを呻いたけど、何を言ったのか……白狼の私の耳にも聞き取れなかった。






「水の精霊──ウンディーネ様とお呼びしても?」

『構わないわ。』

「では…ウンディーネ様は、ルーナを傷付けた者を…どうするおつもりですか?」

アシーナさんが質問すると、水の精霊─ウンディーネ様がニコリと笑みを深めた。

『もう既に、ルーナを害した事でお返しは喰らっているから、これ以上体を傷付けるような事はしないわ。ルーナ自身が、それ以上の報復を望んでもいないようだしね。ただ…どんなおバカさんなのか顔を見たかったの。』

“直接”とは─“誰がやったかは知っている”と言う事では?

「──ひっ…」

と、ロゼリアさんが小さく悲鳴をあげた。

『ふふっ。あなたね。』

と、ウンディーネ様はロゼリアさんに微笑みかけた。

『愚かな娘よ。お前の行いは全て知っているわ。あの…とはお似合いよ。2人で幸せになると良いわ。但し……これ以上、私の可愛いルーナに危害を加えようとは考えない事ね。そんな事をすれば……お前だけの問題では済まないからね?』

「もっ……勿論…でございます!!」

と、ロゼリアさんが土下座の勢いで頭を下げている。

ー流石に、この世界に土下座は無いよね?ー

『分かっているなら良いわ。』

と、言って、ウンディーネ様が軽く右手を振ると、この場からロゼリアさんとアークルハイン伯爵が消えて居なくなった。

『国王よ、もう既に今回の王太子元凶には罰を与えたようだから、私からは何もしないけれど……教育はしっかりする事ね。私からはそれだけよ。』

「分かりました。」

『ふふっ。新しい王太子に、祝福を──』

ウンディーネ様がそう呟くと、カミリア王女に青い光が降り注いだ。

この瞬間─王女が水の精霊の祝福を受けた瞬間。アデルバートの廃太子が確実に決定した瞬間でもあった。
精霊との約束は違える事はない。
精霊からの祝福を受けたカミリア王女が国王となれば、この国が飢える事は無く、豊かになる事は確実である。

学生生活の間だけのだったのかもしれない。
ほんの僅かな出来心だったかもしれない。
自分は王太子だから、王族だから思い通りにできると、驕った気持ちがあったのだろう。そんな王太子─アデルバートは、自分で選んだロゼリアの行いによって、色んなモノを失った。

ー自業自得だよねー



『それじゃあ、私はこれで──』

と、ウンディーネ様が右手をスっと上げると、また一瞬のうちに視界の景色が切り替わり、私とリュークレインさんは、ウンディーネ様と一緒にアリスタ邸に戻って来ていた。


「ひゃぁ─っ」
「─えっ?あ!すまない!」
「いえ!リュークレインさんは悪くないと思うので!私の方こそすみません!」

王城で、私は白狼姿でリュークレインさんに抱っこされていた。その状態でアリスタ邸に帰って来ると……杏子の姿に戻っていて、リュークレインさんと抱き合っている状態になっていたのだ。ビックリして変な声が出て、2人同時にバッと音が出る勢いで離れた。

ーウンディーネ様?私達で遊んでませんか?ー

チラリとウンディーネ様に視線を向けると、楽しそうな顔をして笑っていた。









『さぁ、何でも訊いてちょうだい。』

とウンディーネ様が言ってくれたので、私は気になった事を──訊きたいけど、リュークレインさんが居るんだよねぇ…。「うーん……」と、思案していると

『リュークレイン。ここでの話は、アシーナ以外には口外禁止よ。』

と、ウンディーネ様がリュークレインさんに告げる。

確かに、リュークレインさんにはもう、私が人間ひとである事はバレてるし……色々知られても言いふらしたりする人じゃないだろう。

「──それじゃあ……私は、ここに来る前は、私の他に4人居ました。その4人がどうなったか…知ってますか?」

ここに来てから半年以上経った。それでも、まだ何も分からないままだ。アシーナさんが魔女だとしても、他国の事まではそう簡単に情報は得られないだろう。なら、あの4人はこの国とは違う国に召喚されているのかもしれない。それに、精霊には国なんて関係ない筈。

『ルーナ達5人を召喚したのは、勿論、私ではないわ。だから、私が、何処の国の誰がルーナ達を召喚したかは…分からないわ。私は、この国にルーナを気に入ったから、私の加護を与えてルーナを護る事にしたのよ。』




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