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水の精霊
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❋ロゼリア=アークルハイン❋
「お前は何て事をしたんだ!」
王城から一転、水の精霊に邸へと飛ばされて帰って来たその瞬間、父に思い切り頬を叩かれた。
「婚約者の居る…しかも、王太子に手を出すなど!しかも、廃太子とは……」
「わ…私だけが悪いわけじゃないわ!アデル様が私を求めたのよ!だから、私は───っ!」
パンッ─と、また頬を叩かれた。
「お前は、事の重大さを……何も分かっていない!」
「確かに、王太子ではなくなったけど……公爵よ?私は公爵夫人になるのよ!伯爵であるお父様より上の身分になるんだから!」
「──お前がここまで馬鹿だとはな……。国王陛下が言っていただろう?“一代限りの領地無し公爵”と。“一代限り”と言うのは、子を生むな─生まれたとて、その子が爵位を継ぐ事は無い。勿論、お前達の子を養子に迎えてくれるような貴族は居ない。と言う事は、お前達に子ができても、その子は平民となる事が決まっていると言う事だ」
「へい……みん?」
「“領地無し公爵”とは、そのままの通りで、領地を持たない名ばかりの公爵と言う事だ。つまり、税収が無い。治める領地が無いのだから、国からの支給金や支援金も無い。あぁ、勘違いするな。税収があっても好き勝手に使って良い訳ではない。兎に角、領地が無いと言う事は公爵であっても自ら働かなければならないと言う事だ」
「そん…な……」
「それだけではない。お前達は、王族と、この国の筆頭公爵家であるアリスタ公爵を敵に回した。その上、水の精霊様を怒らせたのだ。我がアークルハイン伯爵家も……近い内に爵位を返上する事になるかも知れんな」
「そんな!私を選んだのはアデル様なんだから、アークルハイン伯爵を恨むなんて間違ってるわ!それに、たかが、あの小汚い犬を蹴っただけで!?それこそおかしな話だわ!あんな犬、どうなっても問題無いでしょう!」
「ロゼリ──────」
『本当に、思っていた以上のお馬鹿さんだったのね。』
父が私を窘めようと口を開いたと同時に、また、あの体を刺すような、酷く冷たい声が響いた。
*ルーナ達が去った後の王城謁見室*
「これで、王太子……アデルバート様とリナティアとの婚約は解消。カミリア王女殿下の立太子は決まりましたね」
と、アリスタ公爵が書類の確認をした後、その書類を国王に手渡す。
「ルテウス、此度の事は本当にすまなかった」
「いえ。私の方こそ、リナティアを助けていただき、ありがとうございます」
「父上!宰相!本当に、リナとは……何とかなりませんか!?」
ここへきてもまだ、アデルバートはリナティアを諦め切れないようだ。
「何ともなる訳がないだろう。お前は……リナティア嬢を裏切っただけではなく、精霊の愛し子にまで手を出しておいて……これだけで済んだ事を、リナティア嬢とあの愛し子に感謝しなければいけない事だぞ!」
「これだけ?私は、王太子と言う身分どころか、王族ですらなくなるんですよ!?あの女のせいで!私は、あの犬をどうにかしろなんて言ってません。あの犬に危害を加えたのは、ロゼリアです!私は関係ない────っ」
『あら、こっちも本当にクズだったわね』
と、王城謁見室にも、再び冷たい声が響きわたり、その場に居る全員がその声を耳にした瞬間に体が重くなった。
そう。水の精霊ウンディーネが、ロゼリア親子を連れて再び現れたのだ。
『今回、私の可愛い子が怪我をしたのは…私のちょっとした見落としもあったし、あの子が、あれ以上の仕返しを望まなかったから、お前達の決めた処遇で私は引き下がったのよ?それなのに……全く反省していないのね?たかが犬と言うけれど、加護がある無しに関わらず、犬なら怪我を負わせて良いの?犬にも、お前と同じ様に命があり生きる権利がある。その命を“たかが”とは……お前は、どれ程偉い人間なの?』
スッと細められた目を向けられているロゼリアは、今にでも倒れそうな顔色で震えている。その横に居るアークルハイン伯爵は、運動でもしていたのか?と思う程の汗をかいている。
『国王よ、其方は良い王だと思っていたが、息子はクズ以下ね?私は、このクズには一切の恵みは与えないわ。新たな王太子には祝福を与えたから、彼女に関しては問題を起こさない限り、この国の平穏は約束するわ』
「ありがとう…ございます」
重くなった体を何とか動かして、カミリア王女がウンディーネにお礼をする。
『ふふっ。礼儀正しい子は好きよ?』と、カミリアに優しい笑顔を向けた後、再び冷たい視線をアデルバートとロゼリアに向けた。
『一代限りの領地無し公爵で良かったと思う事ね。でなければ、その領地の民達が不幸になるところだったわ。お前達が居る所では………決して実るモノが何一つ無いのだから』
“実るモノが何一つ無い”
アデルバートとロゼリアが、何をしても成功しない。うまくいかない。2人に、幸せどころか、普通の未来さえも無いと言う事である。
愛し子が絡むとどうしても過保護になり、過剰な反応をする事もあるが、精霊とは無慈悲な存在ではない。反省したならそれを受け入れ、罰を解く事もある。今回の事も、愛し子に怪我を負わせてしまったのは、自分のミスもあった為、ウンディーネは軽い罰にも目を瞑っただけだった。
それが──
この2人は全く反省せず、お互いがお互いに責任をなすりつけ合っていたのだ。一度は赦したが、二度目は無い。
そんな2人から、実りある未来を摘み取る。
人間の一生には、“幸”と“苦”が半分ずつ訪れる。それが訪れた時、それをどう活かすかで、その人間の“幸”と“苦”の大きさが変わって来る。その“幸”を摘み取られた2人。残った“苦”をどう乗り切るか……2人次第だ。
『他人を傷付けて迄して手に入れた愛なんでしょう?2人で手を取り助け合って頑張ってちょうだい。』
と、ウンディーネは微笑んだ。
「お前は何て事をしたんだ!」
王城から一転、水の精霊に邸へと飛ばされて帰って来たその瞬間、父に思い切り頬を叩かれた。
「婚約者の居る…しかも、王太子に手を出すなど!しかも、廃太子とは……」
「わ…私だけが悪いわけじゃないわ!アデル様が私を求めたのよ!だから、私は───っ!」
パンッ─と、また頬を叩かれた。
「お前は、事の重大さを……何も分かっていない!」
「確かに、王太子ではなくなったけど……公爵よ?私は公爵夫人になるのよ!伯爵であるお父様より上の身分になるんだから!」
「──お前がここまで馬鹿だとはな……。国王陛下が言っていただろう?“一代限りの領地無し公爵”と。“一代限り”と言うのは、子を生むな─生まれたとて、その子が爵位を継ぐ事は無い。勿論、お前達の子を養子に迎えてくれるような貴族は居ない。と言う事は、お前達に子ができても、その子は平民となる事が決まっていると言う事だ」
「へい……みん?」
「“領地無し公爵”とは、そのままの通りで、領地を持たない名ばかりの公爵と言う事だ。つまり、税収が無い。治める領地が無いのだから、国からの支給金や支援金も無い。あぁ、勘違いするな。税収があっても好き勝手に使って良い訳ではない。兎に角、領地が無いと言う事は公爵であっても自ら働かなければならないと言う事だ」
「そん…な……」
「それだけではない。お前達は、王族と、この国の筆頭公爵家であるアリスタ公爵を敵に回した。その上、水の精霊様を怒らせたのだ。我がアークルハイン伯爵家も……近い内に爵位を返上する事になるかも知れんな」
「そんな!私を選んだのはアデル様なんだから、アークルハイン伯爵を恨むなんて間違ってるわ!それに、たかが、あの小汚い犬を蹴っただけで!?それこそおかしな話だわ!あんな犬、どうなっても問題無いでしょう!」
「ロゼリ──────」
『本当に、思っていた以上のお馬鹿さんだったのね。』
父が私を窘めようと口を開いたと同時に、また、あの体を刺すような、酷く冷たい声が響いた。
*ルーナ達が去った後の王城謁見室*
「これで、王太子……アデルバート様とリナティアとの婚約は解消。カミリア王女殿下の立太子は決まりましたね」
と、アリスタ公爵が書類の確認をした後、その書類を国王に手渡す。
「ルテウス、此度の事は本当にすまなかった」
「いえ。私の方こそ、リナティアを助けていただき、ありがとうございます」
「父上!宰相!本当に、リナとは……何とかなりませんか!?」
ここへきてもまだ、アデルバートはリナティアを諦め切れないようだ。
「何ともなる訳がないだろう。お前は……リナティア嬢を裏切っただけではなく、精霊の愛し子にまで手を出しておいて……これだけで済んだ事を、リナティア嬢とあの愛し子に感謝しなければいけない事だぞ!」
「これだけ?私は、王太子と言う身分どころか、王族ですらなくなるんですよ!?あの女のせいで!私は、あの犬をどうにかしろなんて言ってません。あの犬に危害を加えたのは、ロゼリアです!私は関係ない────っ」
『あら、こっちも本当にクズだったわね』
と、王城謁見室にも、再び冷たい声が響きわたり、その場に居る全員がその声を耳にした瞬間に体が重くなった。
そう。水の精霊ウンディーネが、ロゼリア親子を連れて再び現れたのだ。
『今回、私の可愛い子が怪我をしたのは…私のちょっとした見落としもあったし、あの子が、あれ以上の仕返しを望まなかったから、お前達の決めた処遇で私は引き下がったのよ?それなのに……全く反省していないのね?たかが犬と言うけれど、加護がある無しに関わらず、犬なら怪我を負わせて良いの?犬にも、お前と同じ様に命があり生きる権利がある。その命を“たかが”とは……お前は、どれ程偉い人間なの?』
スッと細められた目を向けられているロゼリアは、今にでも倒れそうな顔色で震えている。その横に居るアークルハイン伯爵は、運動でもしていたのか?と思う程の汗をかいている。
『国王よ、其方は良い王だと思っていたが、息子はクズ以下ね?私は、このクズには一切の恵みは与えないわ。新たな王太子には祝福を与えたから、彼女に関しては問題を起こさない限り、この国の平穏は約束するわ』
「ありがとう…ございます」
重くなった体を何とか動かして、カミリア王女がウンディーネにお礼をする。
『ふふっ。礼儀正しい子は好きよ?』と、カミリアに優しい笑顔を向けた後、再び冷たい視線をアデルバートとロゼリアに向けた。
『一代限りの領地無し公爵で良かったと思う事ね。でなければ、その領地の民達が不幸になるところだったわ。お前達が居る所では………決して実るモノが何一つ無いのだから』
“実るモノが何一つ無い”
アデルバートとロゼリアが、何をしても成功しない。うまくいかない。2人に、幸せどころか、普通の未来さえも無いと言う事である。
愛し子が絡むとどうしても過保護になり、過剰な反応をする事もあるが、精霊とは無慈悲な存在ではない。反省したならそれを受け入れ、罰を解く事もある。今回の事も、愛し子に怪我を負わせてしまったのは、自分のミスもあった為、ウンディーネは軽い罰にも目を瞑っただけだった。
それが──
この2人は全く反省せず、お互いがお互いに責任をなすりつけ合っていたのだ。一度は赦したが、二度目は無い。
そんな2人から、実りある未来を摘み取る。
人間の一生には、“幸”と“苦”が半分ずつ訪れる。それが訪れた時、それをどう活かすかで、その人間の“幸”と“苦”の大きさが変わって来る。その“幸”を摘み取られた2人。残った“苦”をどう乗り切るか……2人次第だ。
『他人を傷付けて迄して手に入れた愛なんでしょう?2人で手を取り助け合って頑張ってちょうだい。』
と、ウンディーネは微笑んだ。
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