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ゆっくりと

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「あれから、そんな事があったんですね……。」

ルーナとリュークレインがアリスタ邸へと飛ばされた後、王城で起こった顛末を、アシーナはリュークレインに話した。

「王太子─アデルバート様が、あそこまで馬鹿だとは思わなかったわ…。リナにとっては辛かったかもしれないけど、婚約解消になって良かったわ。」

「そうですね。まぁ、リナもルーナのお陰で少しずつ落ち着いているようだし…大丈夫でしょう。」

と、リュークレインの膝の上で眠っている白狼ルーナを、リュークレインはそれはそれは優しい目を向けて背中を撫でている。

「……レイン。ルーナと……何かあった?」

「流石は叔母上。聞いて欲しい話があります。」

と、リュークレインも、ルーナとの出来事をアシーナに全て話をした。












「それじゃあ、レインも女の子姿のルーナを見たのね。」

「はい。ウンディーネ様が、俺の目の前で白狼から人間ひとの姿に変えましたからね。」

嬉しそうに笑うリュークレインに、アシーナもつられて笑う。
ウンディーネが、リュークレインの目の前でルーナを元の姿に戻した─と言う事は、ウンディーネはリュークレインを認めていると言う事だ。リュークレインなら、愛し子であるルーナを護ってくれる、幸せにしてくれると。

アシーナにとっても、これ程嬉しい事はない。
恋どころか、人間関係で苦労をしていたリュークレイン。人を愛する気持ちを知って欲しいと思っていた。魔力が強過ぎて、それは無理かもしれないとも思っていた。でも──

「レイン、私は嬉しいわ。ただ……ルーナは、どうやら恋愛事には慣れていないようなのよ。だから、ルーナに合わせて、ゆっくり歩み寄ってくれるかしら?」

「それは勿論分かってます。それに、ルーナは……俺の事は男として見て無いですからね。嫌われては無いと思うけど、男として意識してもらえるように、ゆっくり頑張ります。」

と、それでも嬉しそうな顔で白狼ルーナを見つめるリュークレイン。

ルーナ─キョウコに関しては、まだまだ問題はあるけど、レインが居れば大丈夫だろう。



「レイン。ここからは東の森の魔女として、第二騎士団副団長のリュークレインに訊きたいのだけど……。幸いな事に、東の森にはウンディーネ様の加護持ちの白狼が居るお陰で、穢れがあっても魔獣が増える事が無いのだけど、国全体としては、魔獣が増えている傾向にあるわ。それで、国としては、これからどんな対応をしていく予定なの?」

「その事に関しては、次に行われる議会の主題になっていますね。おそらく、国中の聖女を連れて浄化巡礼する事になると思います。」

数百年に一度、魔獣が増える時がある。そのまま放っておくとスタンピードを引き起こす事にもなる。ここ数年、少しずつ魔獣の出現率が上がって来ている為、そろそろ対処する必要があるのでは?と、東西南北の魔女で話し合っていたのだ。

「それなら次の議会には、私達4人の魔女も招集が掛かるわね。」

「おそらくは─。」

「これから、暫くは忙しくなるわね…。ルーナが嫌がらなければ、落ち着く迄アリスタ邸ここで預ってもらおうかしら?」

「それは勿論預かりますよ。リナも喜びます。」

「ふふっ─。それじゃあ、ルーナが起きたら話をしましょうか。」

と、今日はもう既に夜も遅い時間になっていた為、続きは明日─と言う事になった。

















『分かりました。アシーナさんの邪魔にもなりたくないので、ここの人達が良いと言ってくれるなら、私はここでお世話になります。』

翌日、アシーナさんから、暫く忙しくなるから、その間嫌でなければアリスタ邸で過ごして欲しい─と言われた。勿論、私は嫌ではない。リナティアさんやリュークレインさんが居るから。それに、なんと言っても、アシーナさんに迷惑を掛けるのが一番嫌な事だから、私は素直にその提案を受け入れた。

『でも……落ち着いたら、また迎えに来て下さいね?』

と、アシーナさんにお願いすると

「「ルーナが可愛い!!」」

と、アシーナさんとリュークレインさんに言われて、撫で回された。撫で回されたお陰で、垂れ下がった耳も元に戻りました。尻尾も自然に揺れてます。
はい。アシーナさんが迎えに来てくれる迄、私は良い子で待っています!!










私がアリスタ邸でお世話になる事を、リナティアさんもご両親も喜んで受け入れてくれた。

「お兄様だけ、ルーナと意思疎通ができるようになって……ズルイわ!」

と、リナティアさんはプクッと頬を膨らませて怒っていたけど、それは単に可愛いだけだった─と思った事は内緒にしておく。
兎に角、リナティアさんは体調もメンタルも良くなり、一週間学園を休んだ後、また学園生活をスタートさせた。

その学園には、王太子─アデルバートの姿はあったが、ロゼリアの姿は無かったそうだ。「これ以上の恥は曝せない」と、アークルハイン伯爵がロゼリアが外に出る事を許さず、家庭教師を付け一からみっちりと教育をし直しているらしい。

ー親はマトモなのにー

そして、今回、王太子とロゼリアの噂を広め、その2人の仲を、リナティアさんに見せ付けた子息─候爵家の三男だったらしいが、その子息は退学していたそうだ。既に、その候爵にも籍を置いていないと言う。

ー貴族社会って、恐ろしいよね。親子であっても、簡単に切り捨てられるなんてー

『…親……かぁ………』

くるんと丸まって目を閉じる。

ー皆…元気にしてるかなぁ?ー

泣かないように更に目にギュッと力を入れて耐えていると

「ルーナ、寝てる?丸まってるルーナも可愛いな。」

と、リュークレインさんがソッと白狼わたしを抱き上げて頭を撫でてくれる。その手はやっぱり優しくて温かい。私はそのまま、リュークレインさんに目を閉じたまま身を預けた。





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