27 / 64
小悪魔?な狼
しおりを挟む
*ルーナ視点*
アリスタ邸で過ごす日々は穏やかだった。
色々と噂の絶えなかった王太子との婚約が解消され、リナティアさんへの風当たりがどうなるのか─と心配していたけど、それは杞憂に終わった。何故なら、留学を取り止めて帰国していたカミリア王女が学園に通う事になり、もともと幼馴染みでもあったリナティアさんと一緒に居るようになったからだ。
まだ、アデルバート王子の廃太子と、カミリア王女の立太子は一部の者にしか知られていない。その為、今でもアデルバート王子の周りには、取り巻きのような子息や令嬢も居るらしい。
「本当に、お兄様はいつから馬鹿になったのかしら?」
と、真剣な顔をして悩んでいるカミリア王女が面白い─と、リナティアさんが笑いながら話していた。その顔を見ると、リナティアさんは本当に吹っ切れたんだなと言う事がよく分かる。
リナティアさんは美人で優しい。王妃教育を受けていたのだから、教育やマナーは完璧なんだろう。今すぐとはいかないだろうけど、きっと、良い人が現れるはず。
兎に角、リナティアさんは、毎日楽しそうに学園生活を送っている。
私はと言うと───
何故か、毎日夕食後から寝るまでの間、リュークレインさんの膝の上に置かれて撫でられています。
ーあれ?リュークレインさん、私が本当は女の子だって事忘れてる?ー
と、思ったりもするけど、どうしてもリュークレインさんに撫でられるのが気持ち良くて……抗う事ができずに、私は毎日リュークレインさんに身を預けてしまっている。
その時に、アシーナさんの話や、この国について色々と教えてくれたりもするから、私にとってはとても楽しい時間でもある。
ーん?でも…夜勤の日は別として、毎日邸に帰って来るけど…彼女さんとか婚約者さんは居ないのかなぁ?ー
チラッと目だけでリュークレインさんを見上げる。
アッシュグレーの髪に、少し薄い紫色の瞳をしたイケメン。筆頭公爵家の嫡男でありながら、第二騎士団の副団長を務めているイケメン。貴族のトップでありながら、驕る事もなく犬っころな私にも優しいイケメン。
ーどこぞかの誰かとは、えらい違いだよねー
そんなハイスペなイケメンさん。彼女や婚約者が居てもおかしくはないよね?
ジーッと見てしまっていたようで、私の視線に気付いたリュークレインさんに「ん?何?」と、訊かれてしまった。
『あのー…リュークレインさんには、彼女とか婚約者は居ないんですか?』
「居ないけど…どうかした?」
ー居ない!?それは予想外だった!ー
『いえ…いつも私の相手をしてくれているので、もし彼女や婚約者が居るなら申し訳無いなぁ…と思って。それに、貴族で嫡男ともなれば、早いうちから婚約者が居る事が多いと聞いていたので』
「あぁ、なる程ね」
と、リュークレインさんは苦笑した後、自身の魔力の話をしてくれた。
『魔力の相性……それは……大変でしたね』
「うん。本当に大変だったよ。今では本当に無理な人は距離を置くようにしているけど、大体の場合は自分自身に結界みたいなモノを掛けて対応しているから、特に問題は無いんだ」
『いや…それはそれで大変そうですけどね。ん?私は…一緒に居ても大丈夫ですか?』
「ん?あぁ、ルーナは大丈夫。全く問題無い」
『そうなんですね。それなら良かったです。私、リュークレインさんに撫でられるのは好きなので、逆に我慢させているなら申し訳無いなと思って…』
ーあぁ、リュークレインさんが気持ち悪く無くて良かったー
と、私はホッと安心して、改めてリュークレインさんの膝の上に顔を乗せて尻尾をフリフリとさせた。
「くっ────。無自覚なんだろうけど可愛いな!」
『?』
両手で顔を覆って呻くリュークレインさん。『大丈夫ですか?』と、小首を傾げて見上げると「──小悪魔なのか!?」と、更に呻かれた。
ーえ?狼ですけど?小悪魔?意味が分からないー
取り敢えず『落ち着いて下さいね』とリュークレインさんの足を、肉球のある前足でポンポンと優しく叩いた。
*リュークレイン視点*
『そうなんですね。それなら良かったです。私、リュークレインさんに撫でられるのは好きなので、逆に我慢させているなら申し訳無いなと思って…』
その後、更に俺を煽ってから、自分は安心したように俺の膝の上でスヤスヤと眠っているルーナ。
ー俺が男で、自分が女の子だって事、忘れてないか?ー
毎日、夜勤の日を除いて、夕食後から寝るまでの間、俺はできる限りルーナと過ごすようにしている。たまにリナに取られてしまうが、それは仕方無い。父と母からは、少し呆れられてしまっているが、「魔力が落ち着くんです」と言えば、何も言って来なくなった。最近では、あまりにも俺がルーナと一緒に居るからか、父や母やリナだけではなく、使用人達までもが俺を微笑ましい眼差しで見て来るようになった気がする─が、気にしない事にした。
「その好きが、“俺が”になれば良いのに……」
膝の上で眠るルーナを撫でながら、俺はソッと呟いた。
アリスタ邸で過ごす日々は穏やかだった。
色々と噂の絶えなかった王太子との婚約が解消され、リナティアさんへの風当たりがどうなるのか─と心配していたけど、それは杞憂に終わった。何故なら、留学を取り止めて帰国していたカミリア王女が学園に通う事になり、もともと幼馴染みでもあったリナティアさんと一緒に居るようになったからだ。
まだ、アデルバート王子の廃太子と、カミリア王女の立太子は一部の者にしか知られていない。その為、今でもアデルバート王子の周りには、取り巻きのような子息や令嬢も居るらしい。
「本当に、お兄様はいつから馬鹿になったのかしら?」
と、真剣な顔をして悩んでいるカミリア王女が面白い─と、リナティアさんが笑いながら話していた。その顔を見ると、リナティアさんは本当に吹っ切れたんだなと言う事がよく分かる。
リナティアさんは美人で優しい。王妃教育を受けていたのだから、教育やマナーは完璧なんだろう。今すぐとはいかないだろうけど、きっと、良い人が現れるはず。
兎に角、リナティアさんは、毎日楽しそうに学園生活を送っている。
私はと言うと───
何故か、毎日夕食後から寝るまでの間、リュークレインさんの膝の上に置かれて撫でられています。
ーあれ?リュークレインさん、私が本当は女の子だって事忘れてる?ー
と、思ったりもするけど、どうしてもリュークレインさんに撫でられるのが気持ち良くて……抗う事ができずに、私は毎日リュークレインさんに身を預けてしまっている。
その時に、アシーナさんの話や、この国について色々と教えてくれたりもするから、私にとってはとても楽しい時間でもある。
ーん?でも…夜勤の日は別として、毎日邸に帰って来るけど…彼女さんとか婚約者さんは居ないのかなぁ?ー
チラッと目だけでリュークレインさんを見上げる。
アッシュグレーの髪に、少し薄い紫色の瞳をしたイケメン。筆頭公爵家の嫡男でありながら、第二騎士団の副団長を務めているイケメン。貴族のトップでありながら、驕る事もなく犬っころな私にも優しいイケメン。
ーどこぞかの誰かとは、えらい違いだよねー
そんなハイスペなイケメンさん。彼女や婚約者が居てもおかしくはないよね?
ジーッと見てしまっていたようで、私の視線に気付いたリュークレインさんに「ん?何?」と、訊かれてしまった。
『あのー…リュークレインさんには、彼女とか婚約者は居ないんですか?』
「居ないけど…どうかした?」
ー居ない!?それは予想外だった!ー
『いえ…いつも私の相手をしてくれているので、もし彼女や婚約者が居るなら申し訳無いなぁ…と思って。それに、貴族で嫡男ともなれば、早いうちから婚約者が居る事が多いと聞いていたので』
「あぁ、なる程ね」
と、リュークレインさんは苦笑した後、自身の魔力の話をしてくれた。
『魔力の相性……それは……大変でしたね』
「うん。本当に大変だったよ。今では本当に無理な人は距離を置くようにしているけど、大体の場合は自分自身に結界みたいなモノを掛けて対応しているから、特に問題は無いんだ」
『いや…それはそれで大変そうですけどね。ん?私は…一緒に居ても大丈夫ですか?』
「ん?あぁ、ルーナは大丈夫。全く問題無い」
『そうなんですね。それなら良かったです。私、リュークレインさんに撫でられるのは好きなので、逆に我慢させているなら申し訳無いなと思って…』
ーあぁ、リュークレインさんが気持ち悪く無くて良かったー
と、私はホッと安心して、改めてリュークレインさんの膝の上に顔を乗せて尻尾をフリフリとさせた。
「くっ────。無自覚なんだろうけど可愛いな!」
『?』
両手で顔を覆って呻くリュークレインさん。『大丈夫ですか?』と、小首を傾げて見上げると「──小悪魔なのか!?」と、更に呻かれた。
ーえ?狼ですけど?小悪魔?意味が分からないー
取り敢えず『落ち着いて下さいね』とリュークレインさんの足を、肉球のある前足でポンポンと優しく叩いた。
*リュークレイン視点*
『そうなんですね。それなら良かったです。私、リュークレインさんに撫でられるのは好きなので、逆に我慢させているなら申し訳無いなと思って…』
その後、更に俺を煽ってから、自分は安心したように俺の膝の上でスヤスヤと眠っているルーナ。
ー俺が男で、自分が女の子だって事、忘れてないか?ー
毎日、夜勤の日を除いて、夕食後から寝るまでの間、俺はできる限りルーナと過ごすようにしている。たまにリナに取られてしまうが、それは仕方無い。父と母からは、少し呆れられてしまっているが、「魔力が落ち着くんです」と言えば、何も言って来なくなった。最近では、あまりにも俺がルーナと一緒に居るからか、父や母やリナだけではなく、使用人達までもが俺を微笑ましい眼差しで見て来るようになった気がする─が、気にしない事にした。
「その好きが、“俺が”になれば良いのに……」
膝の上で眠るルーナを撫でながら、俺はソッと呟いた。
230
あなたにおすすめの小説
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
恋愛は見ているだけで十分です
みん
恋愛
孤児院育ちのナディアは、前世の記憶を持っていた。その為、今世では恋愛なんてしない!自由に生きる!と、自立した女魔道士の路を歩む為に頑張っている。
そんな日々を送っていたが、また、前世と同じような事が繰り返されそうになり……。
色んな意味で、“じゃない方”なお話です。
“恋愛は、見ているだけで十分よ”と思うナディア。“勿論、溺愛なんて要りませんよ?”
今世のナディアは、一体どうなる??
第一章は、ナディアの前世の話で、少しシリアスになります。
❋相変わらずの、ゆるふわ設定です。
❋主人公以外の視点もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字が多いかもしれません。すみません。
❋メンタルも、相変わらず豆腐並みなので、緩い気持ちで読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる