召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん

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小悪魔?な狼

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*ルーナ視点*

アリスタ邸で過ごす日々は穏やかだった。

色々と噂の絶えなかった王太子との婚約が解消され、リナティアさんへの風当たりがどうなるのか─と心配していたけど、それは杞憂に終わった。何故なら、留学を取り止めて帰国していたカミリア王女が学園に通う事になり、もともと幼馴染みでもあったリナティアさんと一緒に居るようになったからだ。

まだ、アデルバート王子の廃太子と、カミリア王女の立太子は一部の者にしか知られていない。その為、今でもアデルバート王子の周りには、取り巻きのような子息や令嬢も居るらしい。

「本当に、お兄様はいつから馬鹿になったのかしら?」

と、真剣な顔をして悩んでいるカミリア王女が面白い─と、リナティアさんが笑いながら話していた。その顔を見ると、リナティアさんは本当に吹っ切れたんだなと言う事がよく分かる。
リナティアさんは美人で優しい。王妃教育を受けていたのだから、教育やマナーは完璧なんだろう。今すぐとはいかないだろうけど、きっと、良い人が現れるはず。
兎に角、リナティアさんは、毎日楽しそうに学園生活を送っている。



私はと言うと───


何故か、毎日夕食後から寝るまでの間、リュークレインさんの膝の上に置かれて撫でられています。

ーあれ?リュークレインさん、私が本当は女の子だって事忘れてる?ー

と、思ったりもするけど、どうしてもリュークレインさんに撫でられるのが気持ち良くて……抗う事ができずに、私は毎日リュークレインさんに身を預けてしまっている。

その時に、アシーナさんの話や、この国について色々と教えてくれたりもするから、私にとってはとても楽しい時間でもある。

ーん?でも…夜勤の日は別として、毎日邸に帰って来るけど…彼女さんとか婚約者さんは居ないのかなぁ?ー

チラッと目だけでリュークレインさんを見上げる。

アッシュグレーの髪に、少し薄い紫色の瞳をしたイケメン。筆頭公爵家の嫡男でありながら、第二騎士団の副団長を務めているイケメン。貴族のトップでありながら、驕る事もなく犬っころな私にも優しいイケメン。

ーどこぞかの誰かとは、えらい違いだよねー

そんなハイスペなイケメンさん。彼女や婚約者が居てもおかしくはないよね?

ジーッと見てしまっていたようで、私の視線に気付いたリュークレインさんに「ん?何?」と、訊かれてしまった。

『あのー…リュークレインさんには、彼女とか婚約者は居ないんですか?』

「居ないけど…どうかした?」

ー居ない!?それは予想外だった!ー

『いえ…いつも私の相手をしてくれているので、もし彼女や婚約者が居るなら申し訳無いなぁ…と思って。それに、貴族で嫡男ともなれば、早いうちから婚約者が居る事が多いと聞いていたので』

「あぁ、なる程ね」

と、リュークレインさんは苦笑した後、自身の魔力の話をしてくれた。






『魔力の相性……それは……大変でしたね』

「うん。本当に大変だったよ。今では本当に無理な人は距離を置くようにしているけど、大体の場合は自分自身に結界みたいなモノを掛けて対応しているから、特に問題は無いんだ」

『いや…それはそれで大変そうですけどね。ん?私は…一緒に居ても大丈夫ですか?』

「ん?あぁ、ルーナは大丈夫。問題無い」

『そうなんですね。それなら良かったです。私、リュークレインさんに撫でられるのは好きなので、逆に我慢させているなら申し訳無いなと思って…』

ーあぁ、リュークレインさんが気持ち悪く無くて良かったー

と、私はホッと安心して、改めてリュークレインさんの膝の上に顔を乗せて尻尾をフリフリとさせた。

「くっ────。無自覚なんだろうけど可愛いな!」

『?』

両手で顔を覆って呻くリュークレインさん。『大丈夫ですか?』と、小首を傾げて見上げると「──小悪魔なのか!?」と、更に呻かれた。

ーえ?狼ですけど?小悪魔?意味が分からないー

取り敢えず『落ち着いて下さいね』とリュークレインさんの足を、肉球のある前足でポンポンと優しく叩いた。





*リュークレイン視点*


『そうなんですね。それなら良かったです。私、リュークレインさんに撫でられるのは好きなので、逆に我慢させているなら申し訳無いなと思って…』

その後、更に俺を煽ってから、自分は安心したように俺の膝の上でスヤスヤと眠っているルーナ。

ー俺が男で、自分が女の子だって事、忘れてないか?ー

毎日、夜勤の日を除いて、夕食後から寝るまでの間、俺はできる限りルーナと過ごすようにしている。たまにリナに取られてしまうが、それは仕方無い。父と母からは、少し呆れられてしまっているが、「魔力が落ち着くんです」と言えば、何も言って来なくなった。最近では、あまりにも俺がルーナと一緒に居るからか、父や母やリナだけではなく、使用人達までもが俺を微笑ましい眼差しで見て来るようになった気がする─が、気にしない事にした。



「その好きが、“俺”になれば良いのに……」


膝の上で眠るルーナを撫でながら、俺はソッと呟いた。



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