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東の森へ
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アリスタ邸に来てから1ヶ月─
『──ん?』
基本、リナティアさんが学園から帰って来る夕方迄の私は自由だ。午前中は、邸の使用人さん達が遊んでくれたりもするけど、昼から夕方迄は邸の広い庭で散歩やお昼寝をして自由に過ごしている。勿論、こっそりと魔法の訓練もしている。
ー相変わらず、水玉しか作れないけどー
リナティアさんが帰って来ると、リナティアさんが私にブラッシングしてくれたり撫で回してくれるから、私は全力でリナティアさんに身を預ける。
それから、夕食後はリュークレインさんに癒される。
そんな毎日を送っている。
ーあれ?私、獣化してない?ー
と、思わなくもない。
今日も、お昼から庭でお昼寝─と、木陰でウトウトとしていると、ピクッと体が反応して、思うよりも先に体が動いて走り出す。
『この感じは────っ!』
流石は狼。本気を出せば凄い速さで走り抜けられる。目指すはアリスタ邸と邸の門を繋ぐ道。走って向かうと、邸に向かって来る馬車が目に入った。
その馬車が邸の玄関前で静かに停止し、その中から──
『──っ!アシーナさん!!』
アシーナさんが降りて来た。
「「「ルーナ!?」」」
降りて来たのはアシーナさんだけではなく、リナティアさんとリュークレインさんも居た……けど、私はアシーナさんに飛び付いた。
ー久し振りのアシーナさんだ!!ー
久し振りにアシーナさんに会えて嬉しくて、アシーナさんに掴まり立ちするようにしがみついて、顔をすりすり擦り付けて、尻尾はブンブンと音が出る勢いで揺れている。
「ルーナが可愛い!!」
「──くっ……やっぱり小悪魔なのか!?」
「叔母様だけ狡いわ!」
三者三様の反応をしていたが、ルーナの耳には何も入ってはいなかった。
そんな、ハイテンションだったルーナは、今はまたショボンと耳が垂れ下がり、尻尾もペタンと下を向いている。
「ルーナ…ごめんなさいね」
アシーナさんが私の頭を撫でる。
私がショボけている理由は──
この国では、あちこちで“穢れ”が発生していて、年々魔獣や魔物の出現が増えているそうで、このまま放っておくと、被害が大きくなる為、国中の聖女を集めて穢れの浄化を行う─“浄化巡礼”をする事になったそうだ。その巡礼のさい、東西南北の魔女も(交代制ではあるが)同行しなくてはいけないと言う事だった。
つまりは──
またアシーナさんとは離れ離れになると言う事だ。
ーでも…それよりもー
『その浄化巡礼と言うのは……やっぱり…危険があったりするんですか?』
穢れを浄化しに行くと言う事は、そこに魔物や魔獣が現れる可能性があると言う事。
魔獣──アレは本当に恐ろしかった。日本で言うところのヒグマ以上の大きさだった。あの瞬間、初めて死を意識した。きっと、あれ以上の魔獣や魔物が居るんだろう。
それで、もしアシーナさんに何かあったら?
フルフルと、自然と体が震えだす。
「ルーナ……」
そんな私を、慣れた手つきで優しく抱き上げて背中を撫でてくれるのは──
『リュークレインさん……』
「今すぐではないんだ。国中から聖女を集めて、それなりの訓練を受けさせないといけないからね。それに、巡礼には精鋭の騎士が同行するし、叔母上は東西南北の魔女の中でも一番の魔女だから。危険は無い─とは言えないが、叔母上なら大丈夫だ」
『ひょっとして、リュークレインさんも…同行したりするんですか?』
「いや、俺は同行しない。俺は第二騎士団所属だからね。第二は近衛であって、基本は王族の側で王族を守るのが務めだからね」
キュッ─と、握れないけど、肉球のある前足でリュークレインさんの服を握りしめて、そのままリュークレインさんを見上げる。
『それじゃあ、アシーナさんが居ない時は、またリュークレインさんが…側に居てくれますか?』
「────ゔっ………。」
『??』
リュークレインさんが眉間に皺を寄せて呻いた後
「───勿論だ」
と、何故かいつもより少し低い声で答えてくれた。
「ルーナって……無自覚に煽って来るのね?」
「……はい。」
「えっと……頑張ってね?レイン」
「……はい。叔母上……」
******
アシーナさんが忙しくなるのは、聖女が集められた後、王城での訓練が始まってからと言う事だった為、私達は一度イスタンス領の東の森に帰る事になった。
「ルーナ、また来るのを待ってるからね」
と、リナティアさんは少し寂しそうな顔をして見送ってくれた。残念ながら、この日はリュークレインさんは仕事で邸には居なくて、お礼も挨拶もできないままのお別れになってしまった。
「ふふっ。ルーナ、元気出して?これが最後って訳ではないし、また…レインには会えるから」
『そう…ですね。また、会えますよね』
アシーナさんに言われて、ショボンとしていた耳も少し持ち上がった。
「それじゃあ、東の森に帰るわよ」
と、ここに来た時と同じように、足下で魔法陣が展開されて、私はアシーナさんと久し振りに東の森へと転移した。
『──ん?』
基本、リナティアさんが学園から帰って来る夕方迄の私は自由だ。午前中は、邸の使用人さん達が遊んでくれたりもするけど、昼から夕方迄は邸の広い庭で散歩やお昼寝をして自由に過ごしている。勿論、こっそりと魔法の訓練もしている。
ー相変わらず、水玉しか作れないけどー
リナティアさんが帰って来ると、リナティアさんが私にブラッシングしてくれたり撫で回してくれるから、私は全力でリナティアさんに身を預ける。
それから、夕食後はリュークレインさんに癒される。
そんな毎日を送っている。
ーあれ?私、獣化してない?ー
と、思わなくもない。
今日も、お昼から庭でお昼寝─と、木陰でウトウトとしていると、ピクッと体が反応して、思うよりも先に体が動いて走り出す。
『この感じは────っ!』
流石は狼。本気を出せば凄い速さで走り抜けられる。目指すはアリスタ邸と邸の門を繋ぐ道。走って向かうと、邸に向かって来る馬車が目に入った。
その馬車が邸の玄関前で静かに停止し、その中から──
『──っ!アシーナさん!!』
アシーナさんが降りて来た。
「「「ルーナ!?」」」
降りて来たのはアシーナさんだけではなく、リナティアさんとリュークレインさんも居た……けど、私はアシーナさんに飛び付いた。
ー久し振りのアシーナさんだ!!ー
久し振りにアシーナさんに会えて嬉しくて、アシーナさんに掴まり立ちするようにしがみついて、顔をすりすり擦り付けて、尻尾はブンブンと音が出る勢いで揺れている。
「ルーナが可愛い!!」
「──くっ……やっぱり小悪魔なのか!?」
「叔母様だけ狡いわ!」
三者三様の反応をしていたが、ルーナの耳には何も入ってはいなかった。
そんな、ハイテンションだったルーナは、今はまたショボンと耳が垂れ下がり、尻尾もペタンと下を向いている。
「ルーナ…ごめんなさいね」
アシーナさんが私の頭を撫でる。
私がショボけている理由は──
この国では、あちこちで“穢れ”が発生していて、年々魔獣や魔物の出現が増えているそうで、このまま放っておくと、被害が大きくなる為、国中の聖女を集めて穢れの浄化を行う─“浄化巡礼”をする事になったそうだ。その巡礼のさい、東西南北の魔女も(交代制ではあるが)同行しなくてはいけないと言う事だった。
つまりは──
またアシーナさんとは離れ離れになると言う事だ。
ーでも…それよりもー
『その浄化巡礼と言うのは……やっぱり…危険があったりするんですか?』
穢れを浄化しに行くと言う事は、そこに魔物や魔獣が現れる可能性があると言う事。
魔獣──アレは本当に恐ろしかった。日本で言うところのヒグマ以上の大きさだった。あの瞬間、初めて死を意識した。きっと、あれ以上の魔獣や魔物が居るんだろう。
それで、もしアシーナさんに何かあったら?
フルフルと、自然と体が震えだす。
「ルーナ……」
そんな私を、慣れた手つきで優しく抱き上げて背中を撫でてくれるのは──
『リュークレインさん……』
「今すぐではないんだ。国中から聖女を集めて、それなりの訓練を受けさせないといけないからね。それに、巡礼には精鋭の騎士が同行するし、叔母上は東西南北の魔女の中でも一番の魔女だから。危険は無い─とは言えないが、叔母上なら大丈夫だ」
『ひょっとして、リュークレインさんも…同行したりするんですか?』
「いや、俺は同行しない。俺は第二騎士団所属だからね。第二は近衛であって、基本は王族の側で王族を守るのが務めだからね」
キュッ─と、握れないけど、肉球のある前足でリュークレインさんの服を握りしめて、そのままリュークレインさんを見上げる。
『それじゃあ、アシーナさんが居ない時は、またリュークレインさんが…側に居てくれますか?』
「────ゔっ………。」
『??』
リュークレインさんが眉間に皺を寄せて呻いた後
「───勿論だ」
と、何故かいつもより少し低い声で答えてくれた。
「ルーナって……無自覚に煽って来るのね?」
「……はい。」
「えっと……頑張ってね?レイン」
「……はい。叔母上……」
******
アシーナさんが忙しくなるのは、聖女が集められた後、王城での訓練が始まってからと言う事だった為、私達は一度イスタンス領の東の森に帰る事になった。
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と、リナティアさんは少し寂しそうな顔をして見送ってくれた。残念ながら、この日はリュークレインさんは仕事で邸には居なくて、お礼も挨拶もできないままのお別れになってしまった。
「ふふっ。ルーナ、元気出して?これが最後って訳ではないし、また…レインには会えるから」
『そう…ですね。また、会えますよね』
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