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彩香と美緒
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*大森彩香視点*
「聖女のくせに、そんな事もできないの?」
ー本当に呆れるー
この世界の聖女とは、光属性─光の魔力持ちの事をそう呼ぶそうだ。もともとこの国にも居た聖女達は、レベルが低過ぎて使い物にならないと言う事で、私達が召喚されたらしい。
“死に直面した者”、“魂がこの世界に馴染む者”
ラノベ定番。なら、聖女である私は、この世界では私の思うままに進められる筈。これも定番で、王城に居る人は皆綺麗な顔をしている。残念なのは、王太子が女だった事。
ーそこは、金髪緑眼の王子でしょう!?ー
しかも、その王太子─カミリアは、何故か私に向ける視線がキツい。顔は笑っているのに、目が全く笑っていないのだ。
「本当に…ムカつく」
何より、あのカミリア王女が常に側に置いているのがリュークレイン様。初めて見た時、一瞬にして目と心を奪われた。アッシュグレーの髪に、綺麗な紫色の瞳。陽真が一瞬にして平凡な…ちっぽけな存在に思えた。この世界には来ていないようだけど、もし、またアイツに会う事になったら、陽真はあげても良いと思っている。
ー兎に角、その前にー
「本当に、それで本気出してるの?有り得ない。よくそんなんで“聖女”なんて名乗れるわね。私なら、恥ずかしくて言えないわ」
「──っ!」
目の前に居る名ばかりの聖女は、ギュッと自分の服を握り締めて俯いている。
ーふんっ。泣けば許されるとでも思ってるの?ー
と、言ってやろうかと思った時
「何をしているの?」
東の魔女─アシーナが、また私の邪魔をするようにやって来た。
「アシーナ様。何も…ありませんわ。ただ、ケリーさんと浄化の練習をしていただけです」
私は振り返り、ケリーの肩に手を置いてフワリと微笑みながら答えた。
「……そう」
名ばかり聖女のケリーは、ビクビクしながら私に視線を向けている。
ー本当に鬱陶しいー
「ケリー、今日はこれで上がって良いわ。お疲れ様」
「は──はいっ!今日も指導をしていただき、ありがとうございました!」
ケリーは、東の魔女にペコリと頭を下げてお礼を言った後、訓練場から出て行った。
ー魔女より、聖女の方が上なのに、あんに簡単に頭を下げるなんてー
この国の東西南北の魔女4人は、国民からの信頼が厚く人気もある。その筆頭が、このアシーナ。この女も本当に気に入らない。私が役立たずな聖女に指導してあげていると、必ずと言って良い程やって来る。そして、いつも指導の邪魔をしてくるのだ。本当に邪魔な存在だけど、魔女の筆頭であり、あのリュークレイン様の叔母でもある。将来、私の叔母にもなり得る人ならば仕方無いと、言いたい事は我慢している。
それでも、色々我慢ができなくなると───
「本当にムカつく!」
「…………」
私の部屋は、王城敷地内にある別棟の客室にある。そして、隣の部屋に美緒が。その隣に樹君、その隣に陽真の部屋がある。
私は今、美緒の部屋で思いの限り叫んでいる。
「この国の聖女は役立たずだし、アシーナはいつも邪魔をするし、カミリアはリュークレイン様を独り占めするし、何で思い通りにならないの!?」
叫び続ける私に、美緒は何も言っては来ない。美緒は私の幼馴染み。ただそれだけの存在だ。私の引き立て役でもあった。ただ、美緒もこの世界に来てからは、あまり私の言う事をきかなくなった。
「この世界に来てまで、彩香の言う事を無条件で聞く必要は……無いよね?」
なんて、生意気な事を言われて、思わず美緒の顔をひっぱたいてしまった。
「──これで満足した?」
赤くなった頬を、一瞬にして風魔法で冷やして治した美緒。
「もう、私は彩香の言いなりになるだけの存在じゃないから。私は、私の足でしっかりと立って、この世界で生きて行くと決めたの。彩香、あなたも、そろそろちゃんと考えて動かないと……自分の行いは、必ず自分に返って来るよ?アシーナさんにも…言われたでしょう?」
“自分の行いが自分に返って来る”
と言うなら、私はこの世界を救うのだから、私もあらゆる困難や苦労から救われると言う事じゃない?
「返って来ると言うなら、楽しみね!」
ニッコリ笑う私とは逆に、美緒は眉間に皺を寄せて黙り込んだ。
*関元美緒視点*
『返って来ると言うなら、楽しみね!』
ーあぁ、彩香には言葉が通じないのかー
と、ため息を吐くのをグッと我慢する。
“自分の行い=浄化”─しか、頭に無いと言う事なんだろう。
態々、アシーナさんが忠告してくれたのに。
彩香は理解していない。
彩香は、この国を救う為に召喚されたと信じている。
それは違う──私達は……助けられたのだ。
“死に直面した者”で、“この世界に魂が馴染む”身体を持っていたから、死ぬ前に助けられてこの世界に来れたのだ。ならば、今度は私達がその恩を、真摯に受け止めて、お返しをしなければいけないのだ。
きっと、本当の意味での自由は、それが終わってからだろうと思う。心配していた望月さんの無事は確認できたし、ゆっくり話す事もできて本当に良かった。
未だに、彩香の口からは望月さんを心配するどころか、名前すら出て来ていない。
ー浄化巡礼が終わったら……友達として付き合ってもらえるかなぁ?ー
異世界生活は少し不安な事もあるけど、一つの心配事が無くなり、そんな小さな楽しみができたお陰か、私はその日、緑色の光に優しく包まれる夢を視たのだった。
「聖女のくせに、そんな事もできないの?」
ー本当に呆れるー
この世界の聖女とは、光属性─光の魔力持ちの事をそう呼ぶそうだ。もともとこの国にも居た聖女達は、レベルが低過ぎて使い物にならないと言う事で、私達が召喚されたらしい。
“死に直面した者”、“魂がこの世界に馴染む者”
ラノベ定番。なら、聖女である私は、この世界では私の思うままに進められる筈。これも定番で、王城に居る人は皆綺麗な顔をしている。残念なのは、王太子が女だった事。
ーそこは、金髪緑眼の王子でしょう!?ー
しかも、その王太子─カミリアは、何故か私に向ける視線がキツい。顔は笑っているのに、目が全く笑っていないのだ。
「本当に…ムカつく」
何より、あのカミリア王女が常に側に置いているのがリュークレイン様。初めて見た時、一瞬にして目と心を奪われた。アッシュグレーの髪に、綺麗な紫色の瞳。陽真が一瞬にして平凡な…ちっぽけな存在に思えた。この世界には来ていないようだけど、もし、またアイツに会う事になったら、陽真はあげても良いと思っている。
ー兎に角、その前にー
「本当に、それで本気出してるの?有り得ない。よくそんなんで“聖女”なんて名乗れるわね。私なら、恥ずかしくて言えないわ」
「──っ!」
目の前に居る名ばかりの聖女は、ギュッと自分の服を握り締めて俯いている。
ーふんっ。泣けば許されるとでも思ってるの?ー
と、言ってやろうかと思った時
「何をしているの?」
東の魔女─アシーナが、また私の邪魔をするようにやって来た。
「アシーナ様。何も…ありませんわ。ただ、ケリーさんと浄化の練習をしていただけです」
私は振り返り、ケリーの肩に手を置いてフワリと微笑みながら答えた。
「……そう」
名ばかり聖女のケリーは、ビクビクしながら私に視線を向けている。
ー本当に鬱陶しいー
「ケリー、今日はこれで上がって良いわ。お疲れ様」
「は──はいっ!今日も指導をしていただき、ありがとうございました!」
ケリーは、東の魔女にペコリと頭を下げてお礼を言った後、訓練場から出て行った。
ー魔女より、聖女の方が上なのに、あんに簡単に頭を下げるなんてー
この国の東西南北の魔女4人は、国民からの信頼が厚く人気もある。その筆頭が、このアシーナ。この女も本当に気に入らない。私が役立たずな聖女に指導してあげていると、必ずと言って良い程やって来る。そして、いつも指導の邪魔をしてくるのだ。本当に邪魔な存在だけど、魔女の筆頭であり、あのリュークレイン様の叔母でもある。将来、私の叔母にもなり得る人ならば仕方無いと、言いたい事は我慢している。
それでも、色々我慢ができなくなると───
「本当にムカつく!」
「…………」
私の部屋は、王城敷地内にある別棟の客室にある。そして、隣の部屋に美緒が。その隣に樹君、その隣に陽真の部屋がある。
私は今、美緒の部屋で思いの限り叫んでいる。
「この国の聖女は役立たずだし、アシーナはいつも邪魔をするし、カミリアはリュークレイン様を独り占めするし、何で思い通りにならないの!?」
叫び続ける私に、美緒は何も言っては来ない。美緒は私の幼馴染み。ただそれだけの存在だ。私の引き立て役でもあった。ただ、美緒もこの世界に来てからは、あまり私の言う事をきかなくなった。
「この世界に来てまで、彩香の言う事を無条件で聞く必要は……無いよね?」
なんて、生意気な事を言われて、思わず美緒の顔をひっぱたいてしまった。
「──これで満足した?」
赤くなった頬を、一瞬にして風魔法で冷やして治した美緒。
「もう、私は彩香の言いなりになるだけの存在じゃないから。私は、私の足でしっかりと立って、この世界で生きて行くと決めたの。彩香、あなたも、そろそろちゃんと考えて動かないと……自分の行いは、必ず自分に返って来るよ?アシーナさんにも…言われたでしょう?」
“自分の行いが自分に返って来る”
と言うなら、私はこの世界を救うのだから、私もあらゆる困難や苦労から救われると言う事じゃない?
「返って来ると言うなら、楽しみね!」
ニッコリ笑う私とは逆に、美緒は眉間に皺を寄せて黙り込んだ。
*関元美緒視点*
『返って来ると言うなら、楽しみね!』
ーあぁ、彩香には言葉が通じないのかー
と、ため息を吐くのをグッと我慢する。
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態々、アシーナさんが忠告してくれたのに。
彩香は理解していない。
彩香は、この国を救う為に召喚されたと信じている。
それは違う──私達は……助けられたのだ。
“死に直面した者”で、“この世界に魂が馴染む”身体を持っていたから、死ぬ前に助けられてこの世界に来れたのだ。ならば、今度は私達がその恩を、真摯に受け止めて、お返しをしなければいけないのだ。
きっと、本当の意味での自由は、それが終わってからだろうと思う。心配していた望月さんの無事は確認できたし、ゆっくり話す事もできて本当に良かった。
未だに、彩香の口からは望月さんを心配するどころか、名前すら出て来ていない。
ー浄化巡礼が終わったら……友達として付き合ってもらえるかなぁ?ー
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