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テスト─からの
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「レイラーン国については、“数日”と明記せず、“2、3日”と明記した方が良いと思います。」
「それはどうして?」
「レイラーン国は、国風がのんびりした穏やかな国なので、一週間位迄が“数日”の範囲になるそうです。でも、私達からしたら、数日とは2、3日位ですよね?こちら側が2、3日で届くと思っている物が一週間かかると言う可能性が出て来るからです。」
殿下に案内されたのは、王城内にある応接室だった。
その応接室に入ると、外交官の人が2人と、私が話せる3ヶ国語を話せる人がそれぞれ1人ずつの計3人。その5人が横並びに椅子に座っていた。殿下と宰相様は、退室すると思っていたが、この部屋の端に椅子を移動させ、その椅子に座って私達のやり取りを見ている。
結果、大陸共通語は勿論の事、他の3ヶ国語に於いても問題無しとされた。「これで終わりか?」と思えば、とある商家とレイラーン国と交した契約書を見せられ、何度も契約通りの納品がされず困っているのだが、相手は契約を守っていると言い会話ができない─と言う。
レイラーン国は常夏の島国で、その国を治めているのは、もともとは民衆から選ばれた領主の1人だった。島国と言う事もあり、あまり周りの国から影響を受ける事もなかった為、国風がとても穏やかな国──のんびりしているのだ。少しの遅刻遅延は気にしない。とにかく、おおらかな国だ。
「国が違えば価値観も変わりますから、自国の感覚で契約すると、擦れ違う事はたくさん出て来ると思います。なので、この場合は、どちらも間違った事は言っていません。お互いが、正しい主張をしています。後は、もう一度話し合って、きちんとした数字…日数を明記するだけですね。」
我が国─アラバスティアの外交が強化されたのは、現国王陛下が王位に就いてからで、まだまだ日は浅い。特に、レイラーン国は自然が豊かで、このアラバスティアにはないフルーツがたくさんあり、ここ数年でそのフルーツが人気になり、輸入の契約をする商家が増えているらしい。そのレイラーン国もまた、外交にはまだまだ不慣れなようだ。
「では……これは────」
と、また別の契約書を見せられ、意見を求められ、気になるところがれば意見して、分からない事は分からないと、素直に答えて行った。
「じゃあ、これだと────」
「はい。そろそろ終わりにしましょうか?」
お互い意見を言い合っていると、宰相様からストップが掛かり、外交官の2人と私はハッとなった。
「今日は、3ヶ国語のレベルの確認だけだった筈でしたけど……外交としてのテストも、一気にできてしまいましたね?」
宰相様が苦笑すると「「そうですね!」」と外交官の2人は笑顔で頷いた。
どうやら、私は外交のお手伝いに合格できたようです。
後は、国同士の契約が絡んで来る為、色々な制約が必要となる。それらの契約書が調ってから、また登城すると約束をして、宰相様と外交官の人達は部屋から出て行った。
「お疲れ様。」
そして、この部屋に残って居るのは、私とライラと殿下だ。
「ありがとうございます。」
気が付けば、午前中の早い時間に来た筈が、既にお昼を過ぎていた。
ー道理でお腹が空いてるなぁ…と思ったわー
「ライラ、お昼はどこかで──」
「あ、ランチなら用意済みだから、今からそこに移動するぞ。」
「───はい?」
ー用意済み?何処に?ー
用意済みと言われれば、断れる筈もなく、渋々殿下の後を付いて行った。
案内された場所は、王城内にある庭園と思われる場所だった。
王城に入って直ぐに目にした庭園では、大きな木や大輪を咲かせた花が色とりどりに咲いていて、見る者を魅力するような庭園だったが、この庭園には比較的小ぶりな花が多い。可愛らしい……何となく落ち着く感じの庭園である。
「スズランもあるんですね。」
「エヴィは、スズランが好きなのか?」
「そうですね…。私は、大きな花より、スズランみたいに小さい花の方が好きですね。」
「小さい花の方が─か。分かった。ここは後でゆっくり見れば良いから、取り敢えずはランチにしよう。」
そう言って、殿下はまた優しい笑顔を私に向けた後、更に庭園の奥にあるガゼボへと歩みを進めた。
そのガゼボには、色んな種類のサンドイッチが用意されていた。2人で食べるには、量が多過ぎるのでは?とギョッとしていると「エヴィが何が好きなのか分からなかったから、一通りの種類を用意したんだ。」と言われた。
「たかが伯爵令嬢─魔力無しの私なんかの為に申し訳無いです!」
何て叫んでしまったら、「それじゃあ、今後の為に、エヴィの好きな物を教えてくれるか?」と訊かれて「勿論です!今後、無駄のないようにする為にも、お答えします!」
ー食べ切れない程のモノを用意してもらうなんて、申し訳無いからね!!ー
と、その日は、殿下と何が好きなのか……いつもより少し楽しい気持ちでお喋りしがらのランチとなった。
「あれ?“今後の為”って……どう言う事なんだろう?」
そう気が付いたのは、その日の夜、寮の自室のベッドに入ってからだった。
「それはどうして?」
「レイラーン国は、国風がのんびりした穏やかな国なので、一週間位迄が“数日”の範囲になるそうです。でも、私達からしたら、数日とは2、3日位ですよね?こちら側が2、3日で届くと思っている物が一週間かかると言う可能性が出て来るからです。」
殿下に案内されたのは、王城内にある応接室だった。
その応接室に入ると、外交官の人が2人と、私が話せる3ヶ国語を話せる人がそれぞれ1人ずつの計3人。その5人が横並びに椅子に座っていた。殿下と宰相様は、退室すると思っていたが、この部屋の端に椅子を移動させ、その椅子に座って私達のやり取りを見ている。
結果、大陸共通語は勿論の事、他の3ヶ国語に於いても問題無しとされた。「これで終わりか?」と思えば、とある商家とレイラーン国と交した契約書を見せられ、何度も契約通りの納品がされず困っているのだが、相手は契約を守っていると言い会話ができない─と言う。
レイラーン国は常夏の島国で、その国を治めているのは、もともとは民衆から選ばれた領主の1人だった。島国と言う事もあり、あまり周りの国から影響を受ける事もなかった為、国風がとても穏やかな国──のんびりしているのだ。少しの遅刻遅延は気にしない。とにかく、おおらかな国だ。
「国が違えば価値観も変わりますから、自国の感覚で契約すると、擦れ違う事はたくさん出て来ると思います。なので、この場合は、どちらも間違った事は言っていません。お互いが、正しい主張をしています。後は、もう一度話し合って、きちんとした数字…日数を明記するだけですね。」
我が国─アラバスティアの外交が強化されたのは、現国王陛下が王位に就いてからで、まだまだ日は浅い。特に、レイラーン国は自然が豊かで、このアラバスティアにはないフルーツがたくさんあり、ここ数年でそのフルーツが人気になり、輸入の契約をする商家が増えているらしい。そのレイラーン国もまた、外交にはまだまだ不慣れなようだ。
「では……これは────」
と、また別の契約書を見せられ、意見を求められ、気になるところがれば意見して、分からない事は分からないと、素直に答えて行った。
「じゃあ、これだと────」
「はい。そろそろ終わりにしましょうか?」
お互い意見を言い合っていると、宰相様からストップが掛かり、外交官の2人と私はハッとなった。
「今日は、3ヶ国語のレベルの確認だけだった筈でしたけど……外交としてのテストも、一気にできてしまいましたね?」
宰相様が苦笑すると「「そうですね!」」と外交官の2人は笑顔で頷いた。
どうやら、私は外交のお手伝いに合格できたようです。
後は、国同士の契約が絡んで来る為、色々な制約が必要となる。それらの契約書が調ってから、また登城すると約束をして、宰相様と外交官の人達は部屋から出て行った。
「お疲れ様。」
そして、この部屋に残って居るのは、私とライラと殿下だ。
「ありがとうございます。」
気が付けば、午前中の早い時間に来た筈が、既にお昼を過ぎていた。
ー道理でお腹が空いてるなぁ…と思ったわー
「ライラ、お昼はどこかで──」
「あ、ランチなら用意済みだから、今からそこに移動するぞ。」
「───はい?」
ー用意済み?何処に?ー
用意済みと言われれば、断れる筈もなく、渋々殿下の後を付いて行った。
案内された場所は、王城内にある庭園と思われる場所だった。
王城に入って直ぐに目にした庭園では、大きな木や大輪を咲かせた花が色とりどりに咲いていて、見る者を魅力するような庭園だったが、この庭園には比較的小ぶりな花が多い。可愛らしい……何となく落ち着く感じの庭園である。
「スズランもあるんですね。」
「エヴィは、スズランが好きなのか?」
「そうですね…。私は、大きな花より、スズランみたいに小さい花の方が好きですね。」
「小さい花の方が─か。分かった。ここは後でゆっくり見れば良いから、取り敢えずはランチにしよう。」
そう言って、殿下はまた優しい笑顔を私に向けた後、更に庭園の奥にあるガゼボへと歩みを進めた。
そのガゼボには、色んな種類のサンドイッチが用意されていた。2人で食べるには、量が多過ぎるのでは?とギョッとしていると「エヴィが何が好きなのか分からなかったから、一通りの種類を用意したんだ。」と言われた。
「たかが伯爵令嬢─魔力無しの私なんかの為に申し訳無いです!」
何て叫んでしまったら、「それじゃあ、今後の為に、エヴィの好きな物を教えてくれるか?」と訊かれて「勿論です!今後、無駄のないようにする為にも、お答えします!」
ー食べ切れない程のモノを用意してもらうなんて、申し訳無いからね!!ー
と、その日は、殿下と何が好きなのか……いつもより少し楽しい気持ちでお喋りしがらのランチとなった。
「あれ?“今後の為”って……どう言う事なんだろう?」
そう気が付いたのは、その日の夜、寮の自室のベッドに入ってからだった。
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