47 / 75
ゲルダン王国
しおりを挟む
私が視た“ピンク色のモノ”とは───
「媚薬!?」
リンディは、とんでもないモノをアンカーソン様に飲ませようとしていたのか。でも、何故アンカーソン様?どこをどう見ても、アンカーソン様と姉は相思相愛で、2人の間に割り込む隙なんて無いと思うけど。それに──
「リンディには、他国の王族との縁談の話が上がっていると、アンカーソン様から聞いたんですけど…」
てっきり、他国であっても相手は王族だ。あの親達と共に両手を上げて喜んでいると思っていた。
「どうやら、俺─王太子と結婚できない場合は、公爵家の令息であるブレイン=アンカーソンと結婚できると思っていたようだ。にも関わらず、その相手は自分の異母姉のジェマ嬢で、自分は他国に行かされる─それが気に喰わなかったようで、既成事実を作ろうとしたらしい」
ーえ?あの子はやっぱり馬鹿なの?馬鹿だったのね!ー
ただ、まだ学生で世間知らずでお馬鹿なリンディがそんな事を考えて、尚且つ媚薬を手に入れる事ができるんだろうか?否。そんな事を考える事も、媚薬を手に入れる事もリンディにはできない。なら、そこに居るのは──
母親であるポーリーン=ブルーム伯爵夫人だ。
ーなんて愚かで馬鹿な人なんだろうかー
「重ね重ね、妹と母が申し訳ありません」
座ったままで頭を下げて謝罪する。そして、殿下が口を開く前に、更に言葉を続ける。
「分かってます。私が悪い訳ではないと。私自身、あの2人の事で、今させてもらっているお手伝いを辞める気もありません。私は、ブルーム伯爵家の籍から抜けて、生きていこうと思っていますから、お手伝いは絶対に辞めたくはありません。でも……“辞めろ”と言われれば…仕方ありませんが……」
シュンと項垂れていると、殿下にポンポンと優しくて頭を叩かれた。
「エヴィを辞めさせる訳がないだろう。この短期間で、かなりの貢献をしているし、そもそも、現場の外交官達がエヴィを手放す筈がないからな。──それはそれで腹立たしいが」
「ん?最後は何て??」
「いや、何も言ってない。兎に角、今している手伝いの事は気にするな。今回の事は、俺達以外には知られていない。“エヴィが、初めての夕食会で体調を崩した”だけだからな。それで、リンディ嬢の処遇なんだが──」
リンディは、前回起こした事を反省せず、また今回のような事を起こしてしまった為、自由にしておく事はできないと判断され、まだ2年生ではあるが、今年度で学校を卒業する事となった。“退学処分”としなかったのは、他国の王族へと輿入れする為、体裁を考えての事だった。リンディは、その卒業と同時にゲルダン王国の王弟の元へと嫁ぐ事になった。
「ゲルダン……王……弟???」
ーあれ?いつだったか……どこかでこの二つのワードを耳にした事があったような??ー
少しずつ記憶を絞り出していく。
ゲルダン王国─現国王は珍しい三つの属性の魔力持ち。
その反面、国民全体で見ると、魔力持ちは3割程しか居ないと言う、この大陸では一番魔力持ちが少ないとされている国だ。それ故に、現国王が即位する時は盛大なパレードや宴が繰り広げられたらしい。それでも、“魔力無し”にとっては、住みやすい国だと言われている。但し──
“平民にとっては”である。
貴族社会に於いては、やはり魔力持ち主義者が多く、いくら国王が改めようとしても、魔力無しの貴族は虐げられる存在だと言う。これは、国王により箝口令が敷かれているらしく、他国にはあまり知られていないらしいけど──どこかの商人との交渉のお手伝いをした時、うっかり聞いてしまったのだ。
まぁ、リンディは光の魔力持ちだし、父も母もサイラスも魔力持ちだから、特に問題は無いだろう。
その現国王の弟は──あれ?既に、結婚…していなかったっけ?現国王も王弟も恋愛結婚で、とても仲が良いとか何とか──
「ひょっとして…リンディは側室扱いですか?」
「流石はエヴィ。他国の情報にも明るいな。そう。リンディは、ゲルダン国の王弟の側室として迎えられる事になっている」
やっぱりか。多分、リンディは知らないんだろう。例え王弟とは言え、他国のあまり交流も盛んではない国だから、普通に暮らしていては、そんな情報を耳にする事はないから。きっと、父も母も知らないだろうし、知ろうともしないだろう。ただ、“王弟”と言うだけで喜んでいるだろう。勿論、私から教えてあげる事もしない。
でも、恋愛結婚をしていて、何故側室を迎えるのか……。
「うーん……」
ーそれだけは謎だけど、王族の事だから、色々複雑な事情があるのかもしれないよねー
と、色々考えている私は、殿下とライラが黒い笑顔を浮かべていた事には気付かなかった。
「媚薬!?」
リンディは、とんでもないモノをアンカーソン様に飲ませようとしていたのか。でも、何故アンカーソン様?どこをどう見ても、アンカーソン様と姉は相思相愛で、2人の間に割り込む隙なんて無いと思うけど。それに──
「リンディには、他国の王族との縁談の話が上がっていると、アンカーソン様から聞いたんですけど…」
てっきり、他国であっても相手は王族だ。あの親達と共に両手を上げて喜んでいると思っていた。
「どうやら、俺─王太子と結婚できない場合は、公爵家の令息であるブレイン=アンカーソンと結婚できると思っていたようだ。にも関わらず、その相手は自分の異母姉のジェマ嬢で、自分は他国に行かされる─それが気に喰わなかったようで、既成事実を作ろうとしたらしい」
ーえ?あの子はやっぱり馬鹿なの?馬鹿だったのね!ー
ただ、まだ学生で世間知らずでお馬鹿なリンディがそんな事を考えて、尚且つ媚薬を手に入れる事ができるんだろうか?否。そんな事を考える事も、媚薬を手に入れる事もリンディにはできない。なら、そこに居るのは──
母親であるポーリーン=ブルーム伯爵夫人だ。
ーなんて愚かで馬鹿な人なんだろうかー
「重ね重ね、妹と母が申し訳ありません」
座ったままで頭を下げて謝罪する。そして、殿下が口を開く前に、更に言葉を続ける。
「分かってます。私が悪い訳ではないと。私自身、あの2人の事で、今させてもらっているお手伝いを辞める気もありません。私は、ブルーム伯爵家の籍から抜けて、生きていこうと思っていますから、お手伝いは絶対に辞めたくはありません。でも……“辞めろ”と言われれば…仕方ありませんが……」
シュンと項垂れていると、殿下にポンポンと優しくて頭を叩かれた。
「エヴィを辞めさせる訳がないだろう。この短期間で、かなりの貢献をしているし、そもそも、現場の外交官達がエヴィを手放す筈がないからな。──それはそれで腹立たしいが」
「ん?最後は何て??」
「いや、何も言ってない。兎に角、今している手伝いの事は気にするな。今回の事は、俺達以外には知られていない。“エヴィが、初めての夕食会で体調を崩した”だけだからな。それで、リンディ嬢の処遇なんだが──」
リンディは、前回起こした事を反省せず、また今回のような事を起こしてしまった為、自由にしておく事はできないと判断され、まだ2年生ではあるが、今年度で学校を卒業する事となった。“退学処分”としなかったのは、他国の王族へと輿入れする為、体裁を考えての事だった。リンディは、その卒業と同時にゲルダン王国の王弟の元へと嫁ぐ事になった。
「ゲルダン……王……弟???」
ーあれ?いつだったか……どこかでこの二つのワードを耳にした事があったような??ー
少しずつ記憶を絞り出していく。
ゲルダン王国─現国王は珍しい三つの属性の魔力持ち。
その反面、国民全体で見ると、魔力持ちは3割程しか居ないと言う、この大陸では一番魔力持ちが少ないとされている国だ。それ故に、現国王が即位する時は盛大なパレードや宴が繰り広げられたらしい。それでも、“魔力無し”にとっては、住みやすい国だと言われている。但し──
“平民にとっては”である。
貴族社会に於いては、やはり魔力持ち主義者が多く、いくら国王が改めようとしても、魔力無しの貴族は虐げられる存在だと言う。これは、国王により箝口令が敷かれているらしく、他国にはあまり知られていないらしいけど──どこかの商人との交渉のお手伝いをした時、うっかり聞いてしまったのだ。
まぁ、リンディは光の魔力持ちだし、父も母もサイラスも魔力持ちだから、特に問題は無いだろう。
その現国王の弟は──あれ?既に、結婚…していなかったっけ?現国王も王弟も恋愛結婚で、とても仲が良いとか何とか──
「ひょっとして…リンディは側室扱いですか?」
「流石はエヴィ。他国の情報にも明るいな。そう。リンディは、ゲルダン国の王弟の側室として迎えられる事になっている」
やっぱりか。多分、リンディは知らないんだろう。例え王弟とは言え、他国のあまり交流も盛んではない国だから、普通に暮らしていては、そんな情報を耳にする事はないから。きっと、父も母も知らないだろうし、知ろうともしないだろう。ただ、“王弟”と言うだけで喜んでいるだろう。勿論、私から教えてあげる事もしない。
でも、恋愛結婚をしていて、何故側室を迎えるのか……。
「うーん……」
ーそれだけは謎だけど、王族の事だから、色々複雑な事情があるのかもしれないよねー
と、色々考えている私は、殿下とライラが黒い笑顔を浮かべていた事には気付かなかった。
151
あなたにおすすめの小説
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです
hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる