初恋の還る路

みん

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第一章

思い出せない記憶

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ミシュエルリーナ=エル=レイナイト
から
ミシュエルリーナ=ティリス=レイナイト
に、名前を変更しています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー







目を開けると、そこには見慣れた景色があった。瑠璃宮殿にある自室のベッドの上。起き上がろうとするが、体に力が入らない。

「あ、起きたの!?」

声がした方にゆっくりと顔を動かす。

「ティアナ?」

「あー良かった!説明は後でするから。取り敢えず、今から医師を呼んで来るわね。それと、何か欲しい物ある?」

「あー、水が欲しいかな」

「分かったわ。まだ起きてはダメよ?そのままそこで寝ててね!」

と、ティアナが部屋から早足で出て行った。

部屋が明るい。気を失っただろうあの時から、あまり時間は経ってないのだろうか?

気を失ったあの時…

伊藤琢磨と田中雪

思い出したー。
心のざわめきも、息苦しさも、胸の痛みも…思い出した。

ーそうゆう仲になった事もあったんですー

琢磨は、そう言った。それはいつ?私と付き合ってる時?それとも…私が…死んでから?
私、あの時死んだのよね?琢磨達は今、25歳だと言った。私はいま18歳。時間軸がよく分からないが、琢磨達にとったら、私が死んでから7年経ってるって事よね?それだけ経っていれば、私の死後に2人が付き合い出してもおかしくない。いや…本当に、私と琢磨が付き合ってたかどうかの方が怪しいか。

「私って…馬鹿だったんだな…」

口から零れた言葉は、誰にも聞かれる事なく消えていった。








「気を失っている時は、体内の魔力の流れが乱れていたけど、今は正常に戻ってるわ」

瑠璃宮殿専属医師の1人であるルクレシアが言う。

「このところ、魔素が不安定だったし、ミューも色々疲れてたりしたから、体が異常を起こしたのかもね。とにかく、今日から3日は安静にしてなさい。ミューの魔力は大きいから、無理して魔力が暴走したりなんかしたら、本当にシャレにならないからね。解った?」

「ふふっ。解ったわ。何となく頭がボーッとするし…ゆっくりさせてもらうわ。」

「よろしい!」

その後、細かい注意点を言われ、体調を整える薬を置いて、ルクレシアは退室して行った。

3日。うん。その間は、あの2人に会う事もないだろうし。色々心の整理をする時間に丁度良いかもしれない。

ートントンー

「ミュー、私よ。入って良いかしら?」

「ティアナ、入って良いわよ。」

「そこでルクレシアに会ってね。話だけなら良いって許可をもらったから。私が居ても大丈夫かしら?」

「ふふっ。ティアナならいつでも大歓迎よ。それに…ティアナに訊きたい事もあったから、丁度良かったわ。」

「訊きたい事?あー、倒れた後の話ね?」

驚いた事に、私は倒れてから丸1日寝ていたらしい。琢磨に抱き留められてはいたが、私をここまで運んでくれたのはギリュー様。俵担ぎの様に持ち上げられ、移転魔方陣で瑠璃宮殿迄戻り、そのままこの部屋迄、文字通り担ぎ込まれたそうだ。

気を失った令嬢を俵担ぎって…ギリュー様らし過ぎて笑えるわー。

そんな担ぎ方なので、誰もときめく事もキャーキャー言う事も、羨ましがる事も変な噂がたつ事もなく、私への同情の眼差ししかなかったと言う。

「あ、それと、ミューが寝てる間に水色の小鳥の子が来てたわよ。」

「分かったわ。ありがとう。」

「それじゃあ、私もこれで仕事に戻るわ。何かあったら、連絡を飛ばしてちょうだい。」

そう言うと笑顔て手を振りながら出て行った。


リザからの連絡かしら?
水色の小鳥スカイーまだ、居るかしら?」

そう呼び掛けると、スッと淡い水色の小鳥が顕れ、ミューの手元で手紙へと変化した。

ー夜会に着るドレスがカーンハイル様より届きました。サイズ調節等したいので、ご都合の良い日時をお知らせ下さいー

カーンハイル様からのドレスねぇ…絶対私には似合わないんだろうな…
今迄、カーンハイル様から夜会に誘われた事もなかったので、ドレスを贈られるのは初めてだ。どんなドレスなのか…ある意味興味あるわーと思いながら、リザに返事の小鳥を飛ばした。 



目覚めた日の昨日は、1日ベッドの住人となり、ドレスのサイズ確認は明日にした。今日は、特にする事も無いので、何をしようか…と思案していた。
あーそうだ。あの2人の魔法指導…どうしようかな…。ティアナには前以てお願いをしてあるので、補助役はティアナがメインで引き受けてくれるだろう。それでも、仕事の都合上無理な時はある。その時、私は平常心で居られるだろうか?
私はミュー、ミシュエルリーナ=ティリス=レイナイトであって、日本人でも無いーあれ?ふと気付く。日本。でも…自分が日本人だった頃の自分の名前が思い出せない。母の名前は勿論、父の名前も祖父母の名前すら思い出せない。

琢磨と雪は覚えているのにー。思い出そうとすると、頭に霞が懸かったような感覚になる。

…無理に思い出す事も…ないか…。

嫌な出来事は思い出せるのに。

私は、あの2人の目の前で死んだのだ。あの2人は、どう思っているのだろうか?そんな事、私が訊ける事はないだろう。少しは…悲しんだり後悔…しただろうか?訊きたい事はいっぱいあるのに。もう、どうする事も出来ない…よね。
そっと、ため息をついた。
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