10番目の側妃(人質)は、ひっそりと暮らしたい

みん

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*テイルザール王国*

20 夜会②

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「陛下も随分と愛らしい側妃様を隠していたんですね」
「…………」

どうせすぐに離れて行くだろう─と思っていたのに、本当にずっと私に付いて来るガレオンさん。王妃様の側近の1人で、この人もまた、後宮に出入りが許されている1人なんだそうだ。ニコニコと人好きのする笑顔を浮かべているけど、何かを企んでいるようにも思えて、どうしても胡散臭く見える。王妃様の側近だからかもしれないけど。眉間に皺を寄せているユーリッシュさんの方が信じられる気がするから不思議だ。

「喉は渇きませんか?このシャンパンは、テイルザールで人気のある物なんです。いかがですか?」
「アルコールは飲んだ事がないので…」
「あぁ、それなら大丈夫ですよ。これはフルーツフレーバーでアルコールが苦手な方にも飲みやすいんです」
「……それじゃあ、少しだけ頂きます」
「どうぞ」






「レイ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない……ゔっ……」

ガレオンさんから勧められたシャンパンは、とても飲みやすかった。飲みやすかったから、更に勧められるままに2杯目も飲み干してしまった。でも、どうやら飲みやすいと言うだけで、アルコール度数はそれなりにあったようで──暫くすると足元がフラついて、視界もグニャグニャしだしてしまった。「王妃様に伝えておきますから、レイ様は部屋にお戻り下さい」と、ガレオンさんに言われて、私はアルマと一緒にパーティーホールから退出して後宮へと帰る事にした。

「酔っている時の入浴は危険なので入浴は明日にして、今日は部屋に戻ったら着替えて直ぐに寝る事にしましょう」
「うん……ごめね、アルマ……」
「私の方こそすみません。もっと早く飲むのを止めていたら……部屋迄距離がありますけど、大丈夫ですか?まぁ…頑張って歩いてもらうしかないんですけど…」
「うん…大丈夫じゃないけど頑張る……」

視界がグニャグニャだろうが、足がフラフラでアルマに体重を掛けてしまっていても、自分で歩くしかない。私には、アルマ以外の侍女も護衛も居ないのだから。

「レイ様、大丈夫ですか?私が部屋迄お送りしましょう」
「え?きゃあっ────」

長い長い廊下を必死で歩いていると、ふいに後ろに引き寄せられ、そのまま抱き上げられた。

「ガレオンさん!?」
「ガレオン様!?」

私を抱き上げたのはガレオンさんだった。

「あの…大丈夫なので下ろして下さい!」

ーこんな所を見られたら何を言われるか!ー

「そんなフラフラした足元では心配ですから。それに、私は王妃様の側近で後宮にも入れますから、お部屋迄何の疑いを持たれる事無くお連れできますから」

ニッコリ微笑むその顔は、やっぱり私にはどうしても胡散臭く見えるし、何故か怖く感じてしまう。

「あの、本当に大丈夫なので、下ろしてもらえますか?ガレオンさんは…宴会に戻って下さい」
「ガレオン様、レイ様も仰っていますから、どうか──」
「──ちっ…兎の侍女如きが私に物を言うのか?お前はこのまま引き返して果実水でも用意して来い。私はこのままレイ様を部屋迄連れて行くから」
「何を──」
「それ以上口答えするなら、その首掻き切ってやろうか?お前もレイ様も無事でありたいなら、果実水を持って来い」
「アルマ……従ってちょうだい……」
「っ!直ぐに、直ぐにお持ちしますから!」

ペコリと頭を軽く下げた後、アルマは来た道を走って戻って行った。

「何が目的ですか?」
「何がと訊かれても…ただお部屋にお連れするだけですよ?」
「………」

そんな訳ない。あのドレスを用意した王妃様の側近だ。

「まぁ…私はただの一貴族の息子ですから、側妃様を部屋迄送った後、側妃様が私にと命令されれば、私は断わる事なんてできませんけどね?」
「─っ!!」

私を抱き上げたまま歩いて行くガレオンさんの顔は、相変わらずニコニコと笑ってはいるけど、目だけは冷たく細められている。今迄もよく目にした事のある目だ。私を蔑んでいる目だ。

「下ろしなさい!今すぐに!」
「下ろしたところで、まともに歩けませんよね?人間にとって、あのシャンパンはかなりキツかったでしょう?それに……そろそろ来るでしょうから…」
「何を──何でも良いから、今すぐ下ろして!だ…誰か─────っ!」
「おとなしくしていれば、痛い目に遭うこともないんですから。むしろ、楽しめるだけですよ?」

誰かに助けを求めようとする前に、口を押さえられた。そうしているうちに、後宮への入り口が見えて来た。

「ん───っ!」と、最後の抵抗として、口を押さえられたまま声をあげると──

「もう無駄ですよ。後宮にさえ入れば誰の助けも来ませんからね?さあ諦めて──」
!」

誰かがかつての私の名を呼んだ。



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