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*テイルザール王国*
25 白
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*テオフィル視点*
竜王国には四天王と呼ばれる4人の竜人が居る。
黒竜、青竜、白竜、赤竜だ。
黒は竜王陛下だ。
そして、今、城壁を破壊しながらやって来たのは白のブランシュだ。
「ブランシュ、態々城壁を壊す必要はあったのか?」
『テオフィル、お前は相変わらずお固いな。挨拶代わりだ』
「そんな挨拶代わりは要らない。レイ様に被害が及んだらどうする?及ばせないが」
『“レイ様”!?』
そこで、ようやくブランシュがレイラーニ様の存在に気付いた。
『陛下、サクッとやって竜王国に帰りましょう!後から竜騎士達も来ますから』
「そうだね。久し振りに体を動かそうか」
そう言うと、竜王陛下はスルリと黒竜へと姿を変えた。本当に久し振りの竜化だ。その唯一の黒色の鱗は以前と変わらない輝きを持っている。触れればそのまま飲み込まれそうな漆黒の闇のような黒色だ。
じわじわと呪いに蝕まれていくネルの側に居る事しかできなかった日々は…とても辛かった。自分が何者なのか、竜人である事すら忘れてしまっていたのだ。最愛であった筈の王妃様の事すら忘れてしまっていた。ただ、その事に関してだけは、良かったのかもしれないが。それよりも不思議なのが、レイラーニ様の事だ。俺もレイラーニ様の事だけ、何故かスッポリと記憶が抜けていた。
あの時“レイラーニ!”と名前を耳にする迄、忘れていたのだ。その名を呼んだのは、ジャレッド=ダンビュライトだった。
ジャレッドは、ホールにレイラーニ様の姿が見当たらないと探していたようだ。どうしても渡したい物があるから─と。そこで、偶然口論をしているレイラーニ様を見付けて、咄嗟に口から出たのが“レイ”ではなく“レイラーニ”だった。
そのお陰で、竜王陛下も俺も足りなかった何かが埋まり、記憶の全てが甦ったのだ。
『テオフィル、お前はレイラーニを第一優先に動けば良いからね。私と白で問題無いだろうし、竜騎士が来たら、私達は竜王国に戻ろう』
「承知しました。レイラーニ様には傷一つ付けませんからご安心を」
『獣人達よ、覚悟はできただろうな?今迄のお礼はキッチリさせてもらうからね』
ニタリと目を細めて獣人達を見下ろしている白竜。四天王の中でもキレ具合が半端なく、攻撃がえげつないのが白だ。白色の鱗が真っ赤に染まり上がる様は、何度目にしても同じ竜人としても恐ろしいモノがある。
黒竜に至っては、言わずもがな──だ。
ーヘイスティングスの御代は、今日で終わるだろうー
獣人達は、黒と白に次々と蹴散らされて行く。このホールに残っている人間は、隅で固まって震えている。残っていると言う事は、少しでもレイラーニ様に何かしでかした者と言う事だから、俺が彼等を護る事も助ける事もしない。害を被ったところで、俺の知った事ではない。
「くっそ……竜人とは卑怯者だな!竜と言う巨大な姿で戦うなど!」
『卑怯者──だと?』
ピクリと、“卑怯者”と言うワードに反応したのは白だ。
「そうだ!卑怯者だ!人型では俺達に勝てないから竜の姿で戦うのだろう!?」
『──なるほど。では、私も人型で戦えば文句は無いな?』
嬉々として人化したのは白。
白色の長い髪を一纏めに括り上げていて、少し釣り目の青色の瞳は、冷たい印象がある。
「お前達、後悔するなよ?」
ブランシュは言い終えるのと同時に、氷魔法の攻撃を展開させながら、更に剣を持って獣人達を仕留めて行く。獣人達が、人化したブランシュに敵う筈もない。ブランシュは、人化した方が、より魔法が自由に使えて、更に俊敏に動き回れる分攻撃能力が上がるのだ。
“鮮血乙女”
乙女なんて可愛いものでは無いが──
「何もしないお前は、竜のくせに弱いのか?」
「ん?」
俺の背後から、俺に剣を振り下ろそうとする獣人。
「弱いのではなく、俺が参戦する迄もないと言う事だ」
「う───ゴボッ」
顔よりも2周り大きい水の玉を創り、その水玉を獣人の顔に被せると、その獣人は空気を求めるようにもがきだした。
「地上に居ながらの溺死なんて、滅多に体験できないだろう?」
もがく獣人を無視して視線を下に向けると、未だすやすやと眠るレイラーニ様が居る。
ーレイラーニ様が寝ていて良かったー
こんな戦場を見せる訳にはいかない。人間にとって、笑顔で戦うブランシュと竜王陛下の圧は恐怖でしかないだろう。
そう。レイラーニ様は竜人ではなく人間だ。王妃様が人間だったから。か弱い人間だ。それを、獣人の王妃とガレオンが媚薬を盛るなど………あのクズは、息の根を止めておくべきだったか?
媚薬で苦しい─と涙を流していたレイラーニ様。あのクズから助けた後『私がどうかなる前に、私から離れて下さい』と、必死になって俺から離れようとするレイラーニ様に対して、何となく複雑な気持ちになったのは何故か……縋って欲しいと思ってしまったのは………
「……………」
その答えに辿り着く前に、白が破壊した城壁の向こうから10体程の竜騎士達が現れた。
竜王国には四天王と呼ばれる4人の竜人が居る。
黒竜、青竜、白竜、赤竜だ。
黒は竜王陛下だ。
そして、今、城壁を破壊しながらやって来たのは白のブランシュだ。
「ブランシュ、態々城壁を壊す必要はあったのか?」
『テオフィル、お前は相変わらずお固いな。挨拶代わりだ』
「そんな挨拶代わりは要らない。レイ様に被害が及んだらどうする?及ばせないが」
『“レイ様”!?』
そこで、ようやくブランシュがレイラーニ様の存在に気付いた。
『陛下、サクッとやって竜王国に帰りましょう!後から竜騎士達も来ますから』
「そうだね。久し振りに体を動かそうか」
そう言うと、竜王陛下はスルリと黒竜へと姿を変えた。本当に久し振りの竜化だ。その唯一の黒色の鱗は以前と変わらない輝きを持っている。触れればそのまま飲み込まれそうな漆黒の闇のような黒色だ。
じわじわと呪いに蝕まれていくネルの側に居る事しかできなかった日々は…とても辛かった。自分が何者なのか、竜人である事すら忘れてしまっていたのだ。最愛であった筈の王妃様の事すら忘れてしまっていた。ただ、その事に関してだけは、良かったのかもしれないが。それよりも不思議なのが、レイラーニ様の事だ。俺もレイラーニ様の事だけ、何故かスッポリと記憶が抜けていた。
あの時“レイラーニ!”と名前を耳にする迄、忘れていたのだ。その名を呼んだのは、ジャレッド=ダンビュライトだった。
ジャレッドは、ホールにレイラーニ様の姿が見当たらないと探していたようだ。どうしても渡したい物があるから─と。そこで、偶然口論をしているレイラーニ様を見付けて、咄嗟に口から出たのが“レイ”ではなく“レイラーニ”だった。
そのお陰で、竜王陛下も俺も足りなかった何かが埋まり、記憶の全てが甦ったのだ。
『テオフィル、お前はレイラーニを第一優先に動けば良いからね。私と白で問題無いだろうし、竜騎士が来たら、私達は竜王国に戻ろう』
「承知しました。レイラーニ様には傷一つ付けませんからご安心を」
『獣人達よ、覚悟はできただろうな?今迄のお礼はキッチリさせてもらうからね』
ニタリと目を細めて獣人達を見下ろしている白竜。四天王の中でもキレ具合が半端なく、攻撃がえげつないのが白だ。白色の鱗が真っ赤に染まり上がる様は、何度目にしても同じ竜人としても恐ろしいモノがある。
黒竜に至っては、言わずもがな──だ。
ーヘイスティングスの御代は、今日で終わるだろうー
獣人達は、黒と白に次々と蹴散らされて行く。このホールに残っている人間は、隅で固まって震えている。残っていると言う事は、少しでもレイラーニ様に何かしでかした者と言う事だから、俺が彼等を護る事も助ける事もしない。害を被ったところで、俺の知った事ではない。
「くっそ……竜人とは卑怯者だな!竜と言う巨大な姿で戦うなど!」
『卑怯者──だと?』
ピクリと、“卑怯者”と言うワードに反応したのは白だ。
「そうだ!卑怯者だ!人型では俺達に勝てないから竜の姿で戦うのだろう!?」
『──なるほど。では、私も人型で戦えば文句は無いな?』
嬉々として人化したのは白。
白色の長い髪を一纏めに括り上げていて、少し釣り目の青色の瞳は、冷たい印象がある。
「お前達、後悔するなよ?」
ブランシュは言い終えるのと同時に、氷魔法の攻撃を展開させながら、更に剣を持って獣人達を仕留めて行く。獣人達が、人化したブランシュに敵う筈もない。ブランシュは、人化した方が、より魔法が自由に使えて、更に俊敏に動き回れる分攻撃能力が上がるのだ。
“鮮血乙女”
乙女なんて可愛いものでは無いが──
「何もしないお前は、竜のくせに弱いのか?」
「ん?」
俺の背後から、俺に剣を振り下ろそうとする獣人。
「弱いのではなく、俺が参戦する迄もないと言う事だ」
「う───ゴボッ」
顔よりも2周り大きい水の玉を創り、その水玉を獣人の顔に被せると、その獣人は空気を求めるようにもがきだした。
「地上に居ながらの溺死なんて、滅多に体験できないだろう?」
もがく獣人を無視して視線を下に向けると、未だすやすやと眠るレイラーニ様が居る。
ーレイラーニ様が寝ていて良かったー
こんな戦場を見せる訳にはいかない。人間にとって、笑顔で戦うブランシュと竜王陛下の圧は恐怖でしかないだろう。
そう。レイラーニ様は竜人ではなく人間だ。王妃様が人間だったから。か弱い人間だ。それを、獣人の王妃とガレオンが媚薬を盛るなど………あのクズは、息の根を止めておくべきだったか?
媚薬で苦しい─と涙を流していたレイラーニ様。あのクズから助けた後『私がどうかなる前に、私から離れて下さい』と、必死になって俺から離れようとするレイラーニ様に対して、何となく複雑な気持ちになったのは何故か……縋って欲しいと思ってしまったのは………
「……………」
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