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弐
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食堂『結』から私が住んでいる家迄、徒歩10分程。城下街と言うだけあって道路も綺麗に整備されていて、魔法による街灯があり夜でも明るく治安が良いから、遅い時間でも1人で帰れるのがありがたい。ちらほら私のような人もよく見掛ける。
「※※※※※っ!」
「※※※※※※※※※※※」
もうすぐ家に到着─と言う所で、何か言い争っているような声が聞こて来た。
ーこんな夜遅くに迷惑だなぁー
街灯から少し外れた脇道から聞こえて来る声。通りすがりにチラッと視線を向ければ、そこには男女2人の姿があった。
ー痴話喧嘩?ー
泣きながら?男性に向かって伸ばされた手を、男性が面倒臭そうに払い除ける。
「いい加減にしてくれないか?ハッキリ言って迷惑しかないから。※※※※に頼まれて仕方無く※※※※※だけだから」
「そんな!でも、ロイ※様だって私のこと──」
「名前で呼ばないでくれるかな?許した覚えはないけど?」
「そんな───」
「二度と俺の目の前に現れるな」
「ロイド様!!」
「───っ!?」
その女性が名前を呼ぶも、その男性が無視して歩き出し──
「「…………」」
私とバッチリ目が合って、歩みを止めた。
「ロイド様!私───」
「名前で呼ぶなと言わなかったか?今、このまま俺の前から去ってくれたら…今回の事は水に流すから」
「っ!」
「………」
その女性は、サッと顔色を悪くさせたが、それからは何も言わずに走り去って行った。
「……では、私も失礼しま───」
「そのまま失礼させる訳ないよね?」
「何故?」
「…………」
そこにニッコリ微笑んで立っているのは、結の常連客で、今日私に手土産をくれたロイド=ラサエル様だった。
「私、何も言いませんから。あ、見てない事にしますから。では、失礼しま──」
「“はい、そうですか、ありがとう”って、帰す訳ないよね?」
「何故?痴話喧嘩を見られただけですよね?別に、言いふらすつもりはありませんから。あ、何なら…誓約書でも書きますか?」
「痴話喧嘩……誓約書……それだけ?」
「“それだけ”──とは?」
ーこの人は、一体何が言いたいのか?ー
「他に何も気にならない?」
「口調……ですか?」
確かに、結で会話をする時の当たり障りのない爽やかな口調ではなかったけど、それがどうしたと言うのか?全く意味が分からないと小首を傾げれば、ラサエル様も私を不思議そうな顔で見下ろしている。
「エリーは明日は休みだったよね?」
「え?あ、はい」
「それじゃあ、明日のお昼前に迎えに行くから、一緒にランチでもしよう。おやすみ」
「え?は?ランチって…ちょっ───」
ラサエル様はそれだけ言うと、私の返事を聞く事もせず走って行ってしまった。
「何でそうなるかな………」
盛大に溜め息を吐いた後、私は明日の事を考えながら歩き出した。
******
「ここは、貴族の令嬢達に人気があるお店で、選べるデザート付きのランチセットがお勧めらしい」
「そうなんですね。それじゃあ、私はそのお勧めにします。デザートは……タルトとコーヒーでお願いします」
「畏まりました」
「「………」」
結局、ラサエル様は本当にお昼前に私を迎えに来て、否応無く貴族令嬢人気のカフェに連れて来られた。
「あの…個室なんて大丈夫ですか?」
「個室の方が都合が良いからね。回りくどいのは好きじゃないから…昨日は、どの辺りから見てた?」
「見ていた訳じゃないです。結から自宅迄の帰り道を歩いていただけで、そのまま通り過ぎるところだっただけです」
「でも、見ていたし聞いてもいたよね?」
「そうですね。あんな所で痴話喧嘩なんてされていたら、見えてしまうし聞こえてもしまいますよね。昨日も言いましたけど、誰にも何も言う事はありませんから」
「それは信じてるけど…本当に他に何も思ったりしてないのか?」
「あの…回りくどい言い方なんてせずに、ハッキリ言ってもらえますか?」
回りくどい言い方は好きじゃないと言いながら、回りくど過ぎる。本当に何が言いたいのかサッパリ分からない。
「エリーは…見掛けによらずハッキリ物を言うんだな」
少し驚いたような顔をするラサエル様。一体私をどんな女だと思っていたのやら。確かに、母に似て可愛らしい顔をしているのかもしれないけど、基本、私は獣人だ。人間の女性よりはバッサリしていると思う。
「見掛けで判断して、何の意味がありますか?それは、自分の妄想を押し付けているだけですよね?勝手に妄想して勝手にガッカリされても、私のせいではないですよね?」
“人は見かけによらず”─身を以て知らされた事だ。
「ラサエル様が結で見せる爽やか騎士様も、昨夜のラサエル様も、私にとってはどちらも同じロイド=ラサエル様でしかありませんから。だから、私が『ラサエル様は実は爽やかな騎士ではなく、女を泣かせる俺様だ』なんて吹聴する事はありません」
「俺様……ふっ……本当にハッキリ言うよな……」
ラサエル様は、面白そうに笑っている。その笑っている顔を見ても何も思わない。
見た目で騙される方が……悪いのだ。
「※※※※※っ!」
「※※※※※※※※※※※」
もうすぐ家に到着─と言う所で、何か言い争っているような声が聞こて来た。
ーこんな夜遅くに迷惑だなぁー
街灯から少し外れた脇道から聞こえて来る声。通りすがりにチラッと視線を向ければ、そこには男女2人の姿があった。
ー痴話喧嘩?ー
泣きながら?男性に向かって伸ばされた手を、男性が面倒臭そうに払い除ける。
「いい加減にしてくれないか?ハッキリ言って迷惑しかないから。※※※※に頼まれて仕方無く※※※※※だけだから」
「そんな!でも、ロイ※様だって私のこと──」
「名前で呼ばないでくれるかな?許した覚えはないけど?」
「そんな───」
「二度と俺の目の前に現れるな」
「ロイド様!!」
「───っ!?」
その女性が名前を呼ぶも、その男性が無視して歩き出し──
「「…………」」
私とバッチリ目が合って、歩みを止めた。
「ロイド様!私───」
「名前で呼ぶなと言わなかったか?今、このまま俺の前から去ってくれたら…今回の事は水に流すから」
「っ!」
「………」
その女性は、サッと顔色を悪くさせたが、それからは何も言わずに走り去って行った。
「……では、私も失礼しま───」
「そのまま失礼させる訳ないよね?」
「何故?」
「…………」
そこにニッコリ微笑んで立っているのは、結の常連客で、今日私に手土産をくれたロイド=ラサエル様だった。
「私、何も言いませんから。あ、見てない事にしますから。では、失礼しま──」
「“はい、そうですか、ありがとう”って、帰す訳ないよね?」
「何故?痴話喧嘩を見られただけですよね?別に、言いふらすつもりはありませんから。あ、何なら…誓約書でも書きますか?」
「痴話喧嘩……誓約書……それだけ?」
「“それだけ”──とは?」
ーこの人は、一体何が言いたいのか?ー
「他に何も気にならない?」
「口調……ですか?」
確かに、結で会話をする時の当たり障りのない爽やかな口調ではなかったけど、それがどうしたと言うのか?全く意味が分からないと小首を傾げれば、ラサエル様も私を不思議そうな顔で見下ろしている。
「エリーは明日は休みだったよね?」
「え?あ、はい」
「それじゃあ、明日のお昼前に迎えに行くから、一緒にランチでもしよう。おやすみ」
「え?は?ランチって…ちょっ───」
ラサエル様はそれだけ言うと、私の返事を聞く事もせず走って行ってしまった。
「何でそうなるかな………」
盛大に溜め息を吐いた後、私は明日の事を考えながら歩き出した。
******
「ここは、貴族の令嬢達に人気があるお店で、選べるデザート付きのランチセットがお勧めらしい」
「そうなんですね。それじゃあ、私はそのお勧めにします。デザートは……タルトとコーヒーでお願いします」
「畏まりました」
「「………」」
結局、ラサエル様は本当にお昼前に私を迎えに来て、否応無く貴族令嬢人気のカフェに連れて来られた。
「あの…個室なんて大丈夫ですか?」
「個室の方が都合が良いからね。回りくどいのは好きじゃないから…昨日は、どの辺りから見てた?」
「見ていた訳じゃないです。結から自宅迄の帰り道を歩いていただけで、そのまま通り過ぎるところだっただけです」
「でも、見ていたし聞いてもいたよね?」
「そうですね。あんな所で痴話喧嘩なんてされていたら、見えてしまうし聞こえてもしまいますよね。昨日も言いましたけど、誰にも何も言う事はありませんから」
「それは信じてるけど…本当に他に何も思ったりしてないのか?」
「あの…回りくどい言い方なんてせずに、ハッキリ言ってもらえますか?」
回りくどい言い方は好きじゃないと言いながら、回りくど過ぎる。本当に何が言いたいのかサッパリ分からない。
「エリーは…見掛けによらずハッキリ物を言うんだな」
少し驚いたような顔をするラサエル様。一体私をどんな女だと思っていたのやら。確かに、母に似て可愛らしい顔をしているのかもしれないけど、基本、私は獣人だ。人間の女性よりはバッサリしていると思う。
「見掛けで判断して、何の意味がありますか?それは、自分の妄想を押し付けているだけですよね?勝手に妄想して勝手にガッカリされても、私のせいではないですよね?」
“人は見かけによらず”─身を以て知らされた事だ。
「ラサエル様が結で見せる爽やか騎士様も、昨夜のラサエル様も、私にとってはどちらも同じロイド=ラサエル様でしかありませんから。だから、私が『ラサエル様は実は爽やかな騎士ではなく、女を泣かせる俺様だ』なんて吹聴する事はありません」
「俺様……ふっ……本当にハッキリ言うよな……」
ラサエル様は、面白そうに笑っている。その笑っている顔を見ても何も思わない。
見た目で騙される方が……悪いのだ。
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