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第四章ー王都ー
ティモスの動揺③
「この事…他に誰か気付いていますか?誰かに…王族に報告しますか?」
これも、重要な事だ。ハルが…それを望んではいないから。
「いや─誰にも言っていない。彼女は…それを望んでいないから、王城に来なかったんだろうし、視察の時に、俺達に会おうとしなかったんだろう?」
困った様な、切ない様な顔をするカルザイン様。不器用な人だなと…本当にハルの事が好きなんだなと思った。いや、あの時のあの顔を見れば、一目瞭然なんだが…。
「彼女は…彼女の時は進み出したと言う事で、間違いないのか?今の彼女の容姿が、本当の彼女と言う事で良いのか?」
本当は…それに答えない方が良いのかもしれないけど、そんな切なそうな顔で訊かれたらなぁ…
「俺の口から言うのもどうかなと思うんですけど…。ルディ─ハルの時間は進んでます。俺達と同じ様に。今のプラチナブロンドの髪と淡い水色の瞳が、本当の容姿です。」
「そうか─。」
と、嬉しそうに笑うカルザイン様。
ーくっ…破壊力が半端ないー
こんな男前で、よく今迄令嬢との噂がなかったもんだなぁ…。聖女様の召喚がなければ、とっくの昔に婚約者も居ただろうに。
でも、そんなカルザイン様が選んだのがハルか…。それはそれで、違う意味で心配になって来た。ハル…色んな意味で大丈夫なのか?ホワホワお人好しのハルだからなぁ…。
「明日以降の話だが、直接関わったクレイルか、魔導師長…もしくは王族の方からも話を訊きに来ると思う。彼女の意識が戻っていれば、彼女の意思を尊重して話を進める事ができるが…。問題は、彼女がなかなか意識を戻さなかった場合だな。」
「そうなんです。まぁ…今回はもともと、新たな聖女様を見る為に来ただけで、本当は…」
ー言い難い…“本当はカルザイン様達に会うつもりはなかった”なんてー
と、どうしようかと言い淀んでいると
「ふっ…分かっている。彼女は、王城どころか、王都にも来たくはなかったんだろう?まして…俺達に会いたいなんて…思ってなかった筈だ。ならば、彼女をパルヴァン邸付きの薬師のルディで、話を通そう。それに…彼女にとって何か都合が悪い事が出て来ても、あのフェンリルが何とかしてくれそうな気がする。」
「あぁ、確かに。あのフェンリルが居れば、大丈夫な気がしますね。俺達の言ってる事も理解しているようですし、いざとなったら威嚇とか殺気を飛ばしてもらいましょう!」
やっぱり、カルザイン様はほんの少し切な気に笑うけど、ハルの事をちゃんと思っていてくれている事は十分に分かる。その気持ちが、ハルにも伝われば良いのに…。
すると、カルザイン様はスッと立ち上がり
「明日の朝、朝食をとった後に迎えに来る。それから彼女の様子を聞きに行こう。それじゃあ、俺はこれで失礼する。」
そう言って、颯爽とこの部屋を後にした。
ー退室するだけで男前とかー
と思ったのは、ここだけの話だ。
次の朝、部屋で朝食を食べていると、魔導師の人が「パルヴァン邸からの手紙です」と言って、2通の手紙を持って来てくれた。一通はレオン様からで、もう一通は…グレン様から…。
え?グレン様から?早くないか?1日も経ってないのに…怖すぎる…。取り敢えず、レオン様の方から読もう。
レオン様からは、今日の午後に神殿に来ると言う内容だった。カテリーナ様は、あれから特に体調も問題なかったそうだが、今日はパルヴァン邸でゆっくりさせるとの事だった。
レオン様…文章が短過ぎて、すぐに読み終えてしまいました。もっと長い文章なら良かったのに…。
そして、グレン様からの手紙に手をつける。
「…………は?」
そこには、たった一行
“そちらに向かう”
とだけ書かれていた。
ー誰が?何処に?ー
いや、分かっている。グレン様が王城にやって来る…。色々ヤバくないか?あぁ、勿論、パルヴァンの領地は問題は無い。穢れは未だに無いから。それに…パルヴァンにはゼンさんが居る。普段は気の優しい執事なんてしてるけど…あの人はグレン様よりも…ヤバいのだ。だから、パルヴァンはゼンさんが居れば問題無いのだ。
はぁー…この事、レオン様や王族側は知っているのか?グレン様の事だ、王族側には先触れを出していない可能性がある。
確か…グレン様の後を引き継いで今の第一騎士団長になったのはカルザイン様の父ではなかったか?取り敢えず、後でカルザイン様に会った時にでも訊いてみよう。
と、少し憂鬱な気分で朝食を食べた。
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