巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

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第五章ー聖女と魔法使いとー

甘いのはいつから?

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「あの魔導師に会いたい?」

「…はい。」

「……」

当たり前だけど、カル─エディオル様が眉間に皺を寄せたまま黙り込む。

「正しく言えば…ではなく……ですけど。私だって…できれば…会いたくないですから。」

と素直に言えば、少しだけエディオル様の雰囲気が柔らかくなった。

そして、ベットの足元に居たレフコースがピクリと反応して、ベットの上に上がって来て、私がベットに座っている足の上に顔をちょこんと乗せて寄り添ってくれた。

ーくうっ…私ひとりだったら…モフモフワシャワシャするのに!今は我慢だ!ー

「どうして、会った方が良いと?」

私は、レフコースの頭を、ある意味我慢してソッと撫でながら答える。

「私…今迄忘れてたと言うか…の記憶が曖昧でよく覚えていなかったんですけど…。あの魔導師…日本語─私の元の国の言葉を喋ったんです。」

「─え?」

「絶対にその言葉だったか?と訊かれると…私も正常な状態ではなかったので、100%断定はできないんですけどね?でも、否定もできない。だから…会って確認してみたいんです。」

「…会って確認して…どうする?」

「どうする─と言うか…。お姉さん達もそうでしたけど、召喚されてこちら側に来たと同時に聖女としての力を得ました。巻き込まれただけの私だって…魔力を得ました。あの魔導師が私と同じ日本人で、何らかの理由でこちら側に来たとしたら、彼も何らかの力を手に入れているかもしれないと思って。それが…あの黒いモヤと関係があったら?と…。」

エディオル様は黙ったまま少し思案した後

「分かった。先ずはこの話し、国王陛下とランバルトとクレイルに報告して、それからどうするか…話し合ってみよう。今のハル殿には2~3日の安静が必要だから、会うとしても…それ以降だ。」

「はい。それは、分かっています。」

「そうか…」

エディオル様はそう言って、私の頭を軽くポンポンと叩いて微笑んだ。








「すっかり話し込んで、中途半端な時間になってしまったが…今から少しでも眠れそうか?」

「はい。えっと…泣いちゃって…スッキリしたせいか…眠れそうです。本当に…ありがとうございました。カ─エディオル様も…少しでも寝て下さいね?」

「あぁ…。それじゃあ…また後で迎えに来る。」

フワリと微笑んで、私の頬をソッと撫でてから、この部屋から出て行った。

ーカ…エディオル様が…あ…甘い…ですー

「レフコース!!」

ガバッとレフコースに抱き付いて、赤くなった顔をレフコースのモフモフに埋め込んでグリグリとする。

『主…どうした?』

コテンと首を傾げて訊いてくるが、何故か嬉しそうに尻尾がブンブンと揺れている。

ーその尻尾…千切れたり…しないよね?ー


「レフコース…どうしよう?どうしたら良い?」

『何がだ?』

「カル─エディオル様がね…甘いの!甘くて…困るの!どうしたら良い?」

『どうして困るのだ?甘い─がよく分からぬが…あの騎士が主に優しいのは…前からだろう?』

「そう…なの?あー確かに…そう…だよね?あれ?」

『ならば、それは、が変わったからーではないのか?』

「私の…意識……」

ー好きと…自覚したから…ー

ボンッと、また一瞬で真っ赤になる。

「レフコース…」

と、またグリグリと抱き付く。

『ふっ…主に…大切な者が増えたな?我は…嬉しい。』

レフコースは、アイスブルーの綺麗な瞳をキラキラ輝かせながら、私の頬にスリスリと鼻を擦り付けてくる。

ー可愛い!うちの子が可愛い!!ー

お互いがギュウギュウとスリスリとし合って、暫くは眠る事を忘れていた。













それからお昼前まで寝て、起きてからマリンさんに診察をしてもらった。魔力も安定していて特に問題が無かった為、帰宅の許可もおりた。



「パルヴァン邸に連絡を出してあるから、何処かでランチを食べてから、パルヴァン邸まで送ろう。」

と、カル─エディオル様が私を迎えに来てくれた。

「と言っても、2~3日は安静にと言われているから、何処かでテイクアウトして、パルヴァン邸でゆっくり食べる事にしようか。」

「─はい。でも…本当に近衛の方は…大丈夫なんですか?」

近衛騎士は所謂エリートコースだ。誰でもがなれるものではない。きっと、カルザイン様だって、誇りを持って務めている筈なのに。私が倒れたせいで…

ポンポン

と、また頭を軽く叩かれる。

「ハル殿は…勘違いをしていないか?」

「勘…違い?」

「そう。勘違い。ハル殿の付き添いに関して…王太子殿下に命令されたと…思ってる?」

ーん?そうじゃ…ないの?ー

ちょっと理解できなくて、ジッとカルザイン様を見つめる。

「──っ…。」

カルザイン様は何かを耐えるように、眉間に皺を寄せた後、軽く息を吐き

「ハル殿の付き添いに関しては、俺から殿下にお願いしたんだ。」

「…………え?」

ーオレカラ  デンカニ  オネガイシタンダー

「ハル殿が心配で…俺が、ハル殿の側に居たかったから。」

「………なっ……!?!?」

ーレフコー…居ない!?だと!??ー


口だけをパクパクして顔を赤くするハルと、綺麗な笑顔を浮かべるエディオルを、レフコースは離れた所から嬉しそうに眺めていた。


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