巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

文字の大きさ
117 / 203
第五章ー聖女と魔法使いとー

閑話ーサエラー

しおりを挟む
*お気に入り登録が、300を超えたお礼の閑話の2話目です。良ければ読んで下さい。勿論、読まなくても本編には影響はありません*









私はサエラ。

今は、ベラトリス=ウォーランド王女付きの侍女をしております。

もともとは、ベラトリス王女の母君である、現王妃様付きの侍女をしておりましたが、私の結婚を機に辞職し、主人の領地で過ごしておりました。
ですが、主人と息子を流行り病で亡くし、領地も主人の弟が継ぐ事になり、これからどうしようか…と思っていたところ、王妃様に、娘であるベラトリス王女付きの侍女になって欲しいと声を掛けて頂き、また王城勤めに戻って参りました。






「お兄様は…何故、恋愛事に関してはあんなにも…へっぽ…ダメダメなのかしら?」

ーベラトリス様、言い直しをされても意味がありません。殆ど仰っていますー

数ヶ月前、このウォーランド王国に、3人の聖女様達と、それに巻き込まれた女の子の4人が、異世界から召喚されて来ました。3人の聖女様達は、成人された女性で、元の世界でも自立していたらしく、王太子殿下相手にも遠慮する事なく、ハキハキとした態度で対応されているとか…。
その王太子殿下が、どうやら聖女様であるミヤ様に一目惚れをされたようです。

ー脈は…無さそうですがー

聖女様達には、元の世界に婚約者が既にいらっしゃるそうで、この国を浄化した後は、元の世界に帰る─と、断言されました。
それでも─と、王太子殿下は諦めきれない様子で…と言いますか…ただ何をする訳でもなく…遠くから眺めているだけと言いますか…あの目は少し…いえ、正直に言いますと、捕まりますよ?と、不敬な事を思ってしまっております。

実際、王太子殿下は…やってしまわれました。
えぇ…恋愛が絡んだ王太子殿下は…本当にへっぽこでした!ベラトリス様の言う通りでした!本当に…“脳内お花畑のヒーロー気取り(byベラトリス)”でございました!

ーコホン。失礼致しましたー

あぁ…エディオル=カルザイン様も…そうでした…。


噂にしか聞かないハル様を見た時、心臓が痛みを覚えた程でした。
聖女様達より若い女の子。少しやつれていて、顔を真っ青にして震えていました。

エディオル=カルザイン様は、騎士ではなかっただろうか?弱き者を守る騎士ではなかっただろうか?気が付けば、身分など関係なく、エディオル=カルザイン様に口を出していました。

その事に関しては、間違った事はしていないと思っております。

ただ…その時には気付きませんでしたが…エディオル=カルザイン様も…恋愛に関しては…素直な方ではなかったようです。

王太子殿下の様な目付きではなく、ハル様を遠くから見守る─その様は、騎士然りでした。決してハル様には近付かない。

ある日、図書館に居るハル様の様子を見にハル様を探していると、ハル様が机に突っ伏して寝てしまっているのを見付け、起こそうかと近付こうとした時。

エディオル=カルザイン様が、ハル様にそっと、ショールを掛けるのを目撃してしまいました。その時のエディオル=カルザイン様の顔が…何とも幸せそうなお顔をされていました。

ーその顔を、ハル様に向ければ良いのにー

ハル様と距離をとるのは…何か事情があるのかもしれません。そう思いながら、私はその場をソッと離れました。












『サエラさん、サエラさんが来てくれなかったら…私の側に居てくれなかったら、私は壊れてしまっていたと思います。サエラさんの優しさに救われました。そんなサエラさんが、私は…大好きです。今日迄…本当にありがとうございました。』


控えめでいて、いつも一生懸命だったハル様。自分の娘の様に思っていました。お別れは寂しいものでした。もう会う事はないけれど、ハル様が元の世界で、笑って…幸せになって欲しいと願っております。


さて、このショールとハル様から預かったお礼を、エディオル=カルザイン様に渡しに行きましょうか。


それらを渡すと、エディオル=カルザイン様は、少し切なそうな顔をされました。

ーあぁ、この人は、本当にハル様の事を…好きだったのかー













あれから1年以上の月日が流れました。
そして、最近よく耳にする…

“氷の近衛騎士が恋に落ちた”

エディオル=カルザイン様も、遂に恋をしたようです。ハル様の事が、思い出に…できたのでしょう。
今度こそは、間違えないように見極めていただきたいと、切に願っております。


王太子殿下は…未だにミヤ様を引き摺っているご様子…。


「お兄様も、ここまで来ると…情けないとしか言えませんわね…。」

と、相変わらずベラトリス様はズバッと王太子殿下を切り捨てます。そのベラトリス様は、ようやくイリス=ハンフォルト様との婚約が調い、幸せそうな日々を送っております。



ハル様。ハル様は、お元気でいらっしゃいますか?あの庭には、今でも綺麗にかすみ草が咲いております。ハル様が見たら、きっと─

『わぁー、キレイー』

と、言っていただけただろうなと…思う程に─。











*自分では考えてなかったサエラさん視点でしたが、書いていて楽しかったです。リクエスト、ありがとうございました。(*´∇`*)*



しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います

黒木 楓
恋愛
 伯爵令嬢のリリカは、婚約者である侯爵令息ラルフに「水魔法しか使えないお前との婚約を破棄する」と言われてしまう。  異世界に転生したリリカは前世の知識があり、それにより普通とは違う水魔法が使える。  そのことは婚約前に話していたけど、ラルフは隠すよう命令していた。 「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」  そう言われ続けてきたけど、これから命令を聞く必要もない。 「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」  飲んだ人を強くしたり回復する聖水を作ることができるけど、命令により家族以外は誰も知らない。  これは前世の知識がある私だけが出せる特殊な水で、婚約破棄された後は何も気にせず使えそうだ。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

藍生蕗
恋愛
 子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。  しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。  いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。 ※ 本編は4万字くらいのお話です ※ 他のサイトでも公開してます ※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。 ※ ご都合主義 ※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!) ※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。  →同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。 全123話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

処理中です...