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第六章ー帰還ー
☆ネージュの呟き☆
しおりを挟む我が主の名は“ハル”─ハルノミヤ=コトネ─
そして、我が名は、レフコース改め─ネージュ─
主以外の者であれば、どちらの名を呼んでもらっても構わぬ。どちらの名も─我にとっては大切で大好きな主に付けてもらった名に、変わりはない故に─。
脆かった繋がりが、主の意思によって断たれたと分かった時、我は主に嫌われた─と思った。それから、主を必死に探したが、見付からなかった。
『ハルは…元の世界に還ったんだよ─。』
あの魔法使いから、そう聞いてからの事は、よく覚えておらぬ。ただ、もうこの世界に主が居ないと言う事と、我はまた間違えたのだ─と言う事だけが残った。
その日も、主が寝ていたベットの上で丸まっていた。
ピクリッ
『─っ!?』
体全身で反応する。
『主だ─!主の魔力を感じる─!』
我は元の大きさに戻り、久し振りのその優しい魔力を追うように、その部屋から飛び出した。
『レフコース!!お…落ち着いて!!私、潰れるからね!?』
我はまた、主を潰してしまうところだった。
それから、我はまた主と名を交わせた、今度こそ真名で交わせたのだ─。久し振りに我の中に流れ込んで来た主の魔力は、やっぱり優しい魔力だった。それに、前よりも─強いように思う。主の瞳と同じ光りに包まれたかと思えば、身体中がほんのり温かくなって─。
気が付けば─擬人化していた。
ーふむ。これが擬人化かー
目の前の主を見ると
ー小さいなー
いつもは、我が主を見上げている。主を見上げて首を傾げると、主はいつも我に抱き付き撫で回す─が、今は逆だ。主が我が“信じられない”みたいな顔をして見上げている。そんな小さな主が─可愛い。
ムギュッと抱き付けば、丁度良い具合に我に収まった。抱き付いていると、主の優しい魔力と匂いで落ち着く故、そのままでいると
『ミヤさん…私は…“開いてはいけない扉”の意味が…解りそうです。』
よく意味は分からぬが、主は開けてはいけないドアを開けようとしているらしい。聖女が鍵を掛けろと言っていたから、開けずに済むと思うが、(何処のドアかは分からぬが)主が怪しいドアを開けぬように、我もしっかり見張っておこう。
それから、いつもの小さいフェンリルの姿に戻った後、主と聖女から撫で回されたが─久し振りの事で、嬉しくて少し泣いてしまったのは、内緒である。
ー主、おかえりー
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