上 下
168 / 203
第六章ー帰還ー

☆ネージュの呟き☆

しおりを挟む

我が主の名は“ハル”─ハルノミヤ=コトネ─

そして、我が名は、レフコース改め─ネージュ─



主以外の者であれば、どちらの名を呼んでもらっても構わぬ。どちらの名も─我にとっては大切で大好きな主に付けてもらった名に、変わりはない故に─。









脆かった繋がりが、主の意思によって断たれたと分かった時、我は主に嫌われた─と思った。それから、主を必死に探したが、見付からなかった。


『ハルは…元の世界に還ったんだよ─。』


あの魔法使いから、そう聞いてからの事は、よく覚えておらぬ。ただ、もうこの世界に主が居ないと言う事と、我はまた間違えたのだ─と言う事だけが残った。












その日も、主が寝ていたベットの上で丸まっていた。


ピクリッ

『─っ!?』

体全身で反応する。

『主だ─!主の魔力を感じる─!』

我は元の大きさに戻り、久し振りのその優しい魔力を追うように、その部屋から飛び出した。









『レフコース!!お…落ち着いて!!私、潰れるからね!?』

我はまた、主を潰してしまうところだった。



それから、我はまた主と名を交わせた、今度こそ真名で交わせたのだ─。久し振りに我の中に流れ込んで来た主の魔力は、やっぱり優しい魔力だった。それに、前よりも─強いように思う。主の瞳と同じ光りに包まれたかと思えば、身体中がほんのり温かくなって─。


気が付けば─擬人化していた。



ーふむ。これが擬人化かー


目の前の主を見ると


ー小さいなー


いつもは、我が主を見上げている。主を見上げて首を傾げると、主はいつも我に抱き付き撫で回す─が、今は逆だ。主が我が“信じられない”みたいな顔をして見上げている。そんな小さな主が─可愛い。

ムギュッと抱き付けば、丁度良い具合に我に収まった。抱き付いていると、主の優しい魔力と匂いで落ち着く故、そのままでいると

『ミヤさん…私は…“開いてはいけない扉”の意味が…解りそうです。』

よく意味は分からぬが、主は開けてはいけないドアを開けようとしているらしい。聖女が鍵を掛けろと言っていたから、開けずに済むと思うが、(何処のドアかは分からぬが)主が怪しいドアを開けぬように、我もしっかり見張っておこう。

それから、いつもの小さいフェンリルの姿に戻った後、主と聖女から撫で回されたが─久し振りの事で、嬉しくて少し泣いてしまったのは、内緒である。








ー主、おかえりー














しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

イアン・ラッセルは婚約破棄したい

BL / 完結 24h.ポイント:32,589pt お気に入り:1,572

すきにして

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:624pt お気に入り:0

気づいたら転生悪役令嬢だったので、メイドにお仕置きしてもらいます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:539pt お気に入り:6

女装人間

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:227pt お気に入り:12

俺、悪役騎士団長に転生する。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:12,255pt お気に入り:2,504

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

BL / 連載中 24h.ポイント:5,206pt お気に入り:2,717

モブ令嬢に魔王ルートは荷が重い

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,913pt お気に入り:1,183

処理中です...