巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

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第七章ー隣国ー

デレ?

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「エディオル、明日、あんたをウォーランド王国に還すから。」

俺が泊まっている宿に、突然現れたリュウ殿が、開口一番そう言った。

「明日?」

「そう。あの聖女様がすぐに動いてくれたみたいでね。詳しくは言えないけど、政権交代もスムーズにいきそうなんだ。後の報告は、国同士でやり取りされるだろうから、あんたはもう帰っても良いだろうと思って。」

「そうか─。なら、俺は断る理由はないから、帰らせてもらう。」

ようやく帰れるのか─と思うと、自然と口元が緩んでしまったようで─

「くくっ…良かったな?ようやく…ハルとゆっくり会えるな?」

「──お前にだけは…言われたくないが…」

と、リュウ殿を一睨みすると、「確かにね─」と、肩を竦めた。

それから、直ぐに“明日、ウォーランド王国に帰る”と手紙を飛ばしてもらい、俺も急いで帰る準備を始めた。














「それじゃあ、取り敢えず、ありがとう。また…国が落ち着いたら、ジークフラン殿下が改めてお礼をすると言っていた。俺も─その時に罪を償いに来る。」

そう言って、俺をウォーランド王国の王城近くに転移させた後、リュウ殿はすぐに隣国へと転移して行った。

“罪を償いに”─か。何となく…ハル殿が動きそうだな─と思うのは…俺だけじゃないだろうな─と思いながら、久し振りのウォーランド王国の王城に足を向けた。









「老害タヌキ達がすまなかったのう。」

帰国の報告を─と、国王陛下とランバルトが居ると言う国王陛下の執務室に向かうと、王太后様と王妃陛下も居て、何故か王太后様に謝られた。

ー“老害タヌキ”とは、よく分からないがー

「それは─王太后様と王妃陛下のせいではありませんので…。どうか頭をお上げ下さい!」

「本当に、陛下とランバルトがごめんなさいね?2人には…キッチリと言ってあるから─。」

ニッコリ笑う王太后様と王妃陛下とは対照的に、げっそり顔の国王陛下とランバルト。その2人の顔を見て、少し溜飲が下がった─のは、ここだけの秘密だ。


「それとな、ハル殿はパルヴァン預かり。聖女ミヤ様はハル殿預かりとなる。国の管理下には置かぬ。今回、阿保な提案をした老害タヌキどもは貴族院を退任し、領地へ引っ込む予定だ。もう、ハル殿─魔法使いの事で貴族院を気にする必要は無い。」

ーそうか、ハル殿はパルヴァンに…良かったー

「ふふっ。エディオルは、本当にハル様の事が好きなのね?ハル様の話が出た途端に…優しい顔になったわよ?」

と、王妃陛下に微笑まれながら指摘された。

「──失礼しました。」

「それこそ、謝る必要はなかろう。あぁ、そうじゃ。そなた、隣国での働きも大変だったであろう?も、色々再教育やら世代交代やらでバタバタするであろうから、そなたは1週間から2週間程休んでおれ。その間、そこなボンクラとお馬鹿が呼び出そうとも、登城禁止じゃ。良いな?」

ーボンクラとお馬鹿?ー

チラリと国王陛下とランバルトを見遣ると…げんなり顔のまま、2人が頷いた。

「あーエディオル。おかえり。無事に帰って来てくれて良かった。それで…ハル殿は、今も王都のパルヴァン邸に居るそうだ。」

少し気まずそうに話すランバルト。それにコクリと頷き、隣国についての話しと、ジークフラン殿から預かった親書を渡してから王城を後にした。









「エディ、おかえり。」

「エディ、おかえりなさい。」

王城を出た後、俺はカルザイン邸へと帰って来た。

「父上、母上、只今戻りました。」

丁度、父も休みだったようで、2人揃って出迎えてくれた。

「色々話もあるだろうけど、取り敢えずは食事を用意してあるから、先にゆっくり食べなさい。」

「父上、ありがとうございます。話したい事があるので、食後に時間をもらえますか?」

「分かった。食後に、サロンででも話を聞こう。」

と、父との話の時間を確保した。








食後、サロンに行くと、既にお茶が用意されてあり、父と母が待っていてくれた。

「一体話とは…と言っても、何となく分かっているけどね。」

と、俺が椅子に座るなり、父が苦笑しながら口を開いた。

「だったら…話が早くて助かります。俺は─もう、今回の様な思いをするのは…嫌なんです。それに…俺は、彼女じゃなければ…嫌なんです。彼女以外は…要らない。」

「エディ、あなたの気持ちは分かったけど、彼女はどうなの?無理強い…なんてしていないでしょうね?」

いつも我が子一番の母が、珍しくハル殿相手の事を気に掛ける。

「…無理強いは……してません。」

「…エディ?その間は何なの?あなた、まさか─」

母が珍しく顔色を悪くし、纏う雰囲気がピリッとなる。

「ルーチェ、少し落ち着こうか?」

すると、父が母の背中を撫でながら母を落ち着かせる。

ーこんな母は初めて見るなー

と不思議に思っていると

「ルーチェ─お母さんが元女騎士だったと知っているだろう?お母さんにとって、パルヴァンの三強は、尊敬する騎士なんだ。それで、ハル殿はその三強が可愛がる娘であり、グレン殿とゼン殿の命の恩人だから…。どうやら、可愛い可愛い息子のエディより、ハル殿の方が…少し優先順位が上になるようだよ?」

「─あぁ…成る程…」

ーハル殿に、また保護者が増えたなー

「エディ、誤解しないでよ?私にとってエディも大切な息子に変わり無いのよ?ただ─本当に無理強いはしていないのね!?」

「───はい。」

「だから!その間は何なの!?」

「ルーチェ、落ち着いて?エディは無理強いはしていないよ。ただ、彼女が気付かないように外堀をガッツリ埋めて、今、彼女本人がエディの気持ちに気付いてないから、エディが彼女を攻めまくってるだから。、無理強いにはなっていないんだ。」

「───え?」

父が無意識に、軽く俺の心を抉って来る。

「………」

「─エディ?泣いて良いのよ?」

「泣きませんよ!それに─が、ハル殿の可愛いところなんです。」

「─やだっ!ルイス、聞いた!?エディが可愛い!」

「ルーチェ、落ち着いて?それで?エディが話したい事とは、グレン殿に婚約の申し入れをして欲しい─とかかい?」

はしゃぐ母とは対照的に、父は落ち着いている。

「いえ、逆です。俺の気持ちは、既にグレン様もシルヴィア様も知っています。後は─俺とハル殿次第なんです。俺は、ハル殿の気持ちが俺にしっかり向いてから、俺から、俺の気持ちを伝えたいと思ってるんです。だから、父上と母上には、黙って…見守っていて欲しいんです。ただ、一つだけお願いがあって─」

「あぁ、エディに来る釣書の事かな?」

「─そうです。それらは…今迄通り突っぱねて下さい。」

「分かった。それに関しては問題ないよ。ハル殿には、最強の布陣の保護者達が沢山居るからね?何があっても、相手が誰でも─簡単に一蹴できるからね?」

と、父はニッコリ笑った。

“最強の布陣の保護者達”

確かに。最強メンバー揃い踏みだな─







「本当に、エディが可愛いわー」

「ルーチェも可愛いよ?」













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