異世界で守護竜になりました

みん

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17 巻き込まれ

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保護している女性が書いた文字──

カイルスさんの腕の中で寝ていた女性が、目を覚ました。彼女の瞳もやっぱり黒色だ。

「貴方は───」
「────っ!!!!」

私が声を掛けようとすると、彼女はカイルスさんから離れて、私の方へと走り寄って来た。

「「マシロ!!」」
「大丈夫だから、何もしないで!」

カイルスさんとレナルドさんからすると、彼女が私を攻撃するように見えるのかもしれないけど、その可能性は───ゼロだ。

「ふぐぅ────っ」

彼女は走り寄って来た勢いのまま、私に飛び掛かるように抱きついてきた。ある意味では攻撃だった。それでも、後ろに倒れるのをなんとか踏ん張って彼女を抱き留めた。そのまま、よしよし─と、彼女の背中を撫でる。

「もう大丈夫だから。ここには、貴方を害そうとする人は居ないから」
「うっ………にほ………ご………わたっし……」
「うんうん。分かってるから。大丈夫大丈夫」
「う……うわー」

と、彼女は声を上げて泣き出した。

「マシロ、彼女は知り合いなのか?」
「知り合いじゃないけど、彼女がどこの国の人なのかは知ってる」
「え?」

黒色の髪と瞳
何処の国の物か分からない文字

「この人も、から来た人です」


日本人だ───






声を上げて沢山泣いた女性は、今度は私に抱きついたまま眠ってしまった。これで安心するのなら─と、私も離そうとはしなかった。私も、ライオン姿のリオナさんの側に居る事に安心した記憶があったから。私の側が安心すると言うのなら、喜んで側に居るだけだ。

「この世界の人達って、色んな意味でカラフルでしょう?それが怖かったりもして、同じ黒色を見ると安心するみたいな感じがあって。だから、この人も黒色のカイルスさんに安心したのかも」
「なるほど………」

アルマンさんは青色の髪で、マイラさんは金髪でイネスは水色。キースは黒髪だけど瞳が黄色だから、慣れない日本人からすればホラーに近い。カイルスさんと私は黒色の髪と瞳。レナルドさんとお母さんも黒色だから、この4人はこの人にとっては安全地帯と言えるかもしれない。

「これからの事は、目を覚ましてからだね」

レナルドさんとお母さんが居れば、直ぐには無理かもしれないけど、日本に還せるかもしれない。お母さんが帰って来たら、レナルドさんと3人で話をする時間を作らないとね。



******


そろそろ夕食の時間──と言う頃に、お母さんが帰って来た。

「茉白、大丈夫?」
「お母さん、お疲れ様。私は大丈夫」

女性は、まだ私にしがみついて寝たままだ。

「まさか、日本人だとは思わなかったわ」

誰も思わないだろう。そんなしょっちゅう召喚されたら、たまったもんじゃない。

「取り敢えず、キースにこの事をバージルさん達に報せて、色々調べてもらうようにお願いしてもらってるの。詳しい事は、この人が目を覚まして話を聞いてからになるけど」

この世界のどの国に渡って来たのか
この世界に渡って来てからどれ位経っているのか
今迄、どんな生活を送っていたのか

「茉白と同じぐらいかしら?」
「同じか、年下かな?」

顔の半分が、私の胸元で隠れているからきっちりと顔の確認はできないけど、お母さんがその顔を覗き見る。

「え?この子………」
「お母さん……知ってるの?」
「知ってるも何も………この子、、私と同じバスに乗ってた子よ」

のバス”

5年前、転落事故を起こした、お母さんが乗っていたバスだ。そう言えば、行方不明者はお母さんを含めて2人居ると言っていた。

「それじゃあ、この人は5年もの間どこかに居たと言う事?」
「でも……ハッキリとは覚えていないけど、5年前とあまり変わってないわ。茉白は3年で大人っぽくなってて驚いたけど」

分からない事だらけだけど、この人が本当にその時の人なら、この人もまた自分勝手なフィンの被害者と言える。

ーフィンも、あれからどうなったのか?ー

どうなっていようとも私には関係無いし、すっかり忘れていたけど。

「あの魔法陣は不完全な物だったから、同じタイミングで巻き込まれたとしても、同じ場所に転移するとは限らなかったのかもしれないな。ある意味、生きて五体満足で辿り着けた事は奇跡に近い」

完全な魔法陣でも、その魔法陣から外れると無事に転移できるかどうか分からないと言われている。
お母さんと同じ場所に転移できていたら、この人はこんな目に遭う事もなかったのに。

「やっぱり、あの魔法陣は完璧に破壊するべきだな」

“聖女召喚”

正式なものは女神やら何やらが絡んでいて、お母さんみたいに力を付与されて保護されるから問題無いのかもしれないけど、結局それは、この世界だけの都合の良い話で、召喚された側からすれば、迷惑以外の何ものでも無い。

「時間は掛かるだろうけど、あの魔法陣は必ず破壊する」

レナルドさんの言葉に、お母さんも私も反対するとは言わなかった。



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