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甘い時間
しおりを挟む「ディとここに来るのは久し振りですね。」
「俺が、隣国から帰って来て…寝ているコトネを見付けた時以来だな。」
「うー…あの時は、ネージュも一緒に居たんですけどね?」
ディの連休2日目の今日は、何となくパルヴァンの森に似ている、ネージュお気に入りの森に来ている。私は時々ネージュやネロと一緒に来たりしているけど、ディと来るのは久し振りだ。
その森の大樹に背中を預けてディが座り、私はそのディに背を預けて、ディの足の間に座っている。何と言うか……恥ずかしいしドキドキもするけど、この座り方が最近では当たり前になってきている。
あの時は驚いたよね。まだ隣国に居ると思っていたディに……お姫様抱っこされていたから…。でも、穢れと魔獣の居る隣国から無事に帰って来てくれて、本当に良かった。
「コトネ、あの時は…俺に会いに隣国迄来てくれてありがとう。あの時は…本当に嬉しかったんだ。」
「えっと…迷惑じゃなくて良かったです。」
ふふっ─と笑えば、後ろからディにギュッと抱きしめられた。
今ではこの温もりが、すっかり安心できる場所にもなっている。
ーこのまま、幸せな日々がすごせますようにー
ー何度も言うけど、フラグなんて立ててません!ー
*****
「この度は、視察をさせていただける事、ありがとうございます。こちらは、わが国王陛下より頼まれたお礼の品で御座います。」
「リュウ殿、久しいな。元気そうで良かった。お礼の品も、ありがとう。」
ここは、王城内にある謁見の広間。
今日、そこに隣国からの視察団─5名がやって来た。勿論、その視察団を仕切っているのはリュウだ。
「改めまして、王太子殿下、聖女ミヤ様、この度は御婚約おめでとうございます。こちらも、国王陛下よりお祝いの品を預かっております。」
「あぁ、ありがとう───と言うか、リュウ殿に改まられると…何だか変な感じがするな。」
と、ランバルトは苦笑する。
「──殿下?」
すると、ランバルトの横に居るミヤが、ランバルトに視線を向けてニッコリと微笑む。
「んんっ。すまない。」
ー王太子様は、もうミヤ様の尻に敷かれているのかー
と、リュウが思ったのは秘密である。
「コトネ?」
「──うん??」
誰かに呼ばれた気がして、目を開けると───
「あれ?ディ?」
リュウ達がやって来て始まった視察巡りも、今日で一週間。その間のディは、一度も蒼の邸には帰って来れなかった。それでも、手紙をくれたり、ノアが伝言を伝えてくれたりと連絡は取り合っていた。それでも、何となく寂しくて…今日は、夫婦の部屋ではなくて、ディの私室にあるベットで寝ていたんだけど…。
「え?何で居るの?」
「ん?明後日から地方の方に出て泊まりになるから、明日1日休みがもらえたんだ。で、急いで帰って来たら、コトネが寝室に居なかったから…探したらここで寝ていたのを見付けたんだ。」
「えっ!?」
「俺に会えなくて…寂しかった?」
「えっ!?」
ハルの部屋でも、夫婦の部屋でもなく、ディの部屋のベットで寝ている私を、真正面から抱き寄せて至近距離でとっても綺麗な笑顔で私を見ているディ。
「え??いや…あのっ…」
ーめちゃくちゃ恥ずかしい!!ー
逃げようにも、ガッチリホールドされていて逃げられない。
「ん?」
ペシペシとディの胸を叩いてみるけど、更にディが嬉しそうに笑うだけだから、逃げる事を諦めて、グリグリと頭を擦り付けた。
「──ディ、おかえりなさい。」
「あぁ、ただいま。コトネの顔が見たいんだけど?」
ーその言い方はズルいよね?ー
ソロソロと顔を上げると──
ーあ、ヤバイー
と思った時は既に遅しで、噛み付く様なキスをされて、そのままディに何度も追い立てられました。
ー本当に、そろそろ手加減を覚えていただけませんか?ー
そんな事を思いながら、私は意識を手放した。
*エディオル視点*
視察が始まり一週間。その間は、一度も蒼の邸には帰れず、コトネにも会えなかった。
「明後日からは地方に出るから、明日は1日休め。」
「え?良いのか?」
今日1日の視察が終わった後、ランバルトの執務室で今日の報告書を纏めていると、ランバルトに休めと言われた。
「明日は外には出ないからな。それに、お前もハル殿が気になっているだろう?まだまだ新婚だしな。」
「断る理由はないから、休ませてもらう。」
と、俺はサクッと蒼の邸へと帰った。
で、帰って来たら───
コトネは、自室でも夫婦の部屋でもなく、俺の部屋のベットで寝ていた。
ー可愛い過ぎるだろう!ー
少し大き目の俺のベットに、端の方で申し訳なさそうに、枕を抱いてくるまるようにして寝ているコトネ。そんなコトネを目にして、ぐうっ─と我慢した俺を褒めて欲しい。
ルナやバートに、呼ぶまでは来るなと指示を出した後、俺も布団に潜り込んで、そっとコトネから枕を外して俺の方へと抱き寄せてからコトネの名を呼んだ。
それからのコトネの行動は──
やっぱり、コトネは俺を(無自覚に)煽る天才だと思う。そんなに煽られたら、手加減なんてできる筈が……ない。
いつものように、俺の腕の中でクッタリとするコトネをもう一度俺の腕の中に閉じ込める。
「コトネ、愛してる。」
そう囁いてから、コトネを閉じ込めたまま眠りに就いた。
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