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中止

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「パルヴァンの森の大樹に、呪術を掛けられた可能性がある。」

「呪術!?」

急ぎグレン様の元へと戻り、リュウが報告をする。

「ハルが浄化─解呪した後だから、俺はソレを目にした訳でも聞いた訳でもないから、可能性としての話になるけどね。で、ここ最近、知らない奴とかが森に入ったりしていなかったか?」

パルヴァンの森は特殊な森だから、基本的には立ち入り禁止になっている。その森への入り口は、このパルヴァン邸の前を通らなければ行けない為、誰かが森に入ろうとしても直ぐに見つける事ができる。

「いや、森を巡回する騎士以外が立ち入ったと言う報告は受けていない。」

ーじゃあ、一体誰が、どうやって?ー

「兎に角、来週の森の視察は中止した方が良い。呪術が関係している可能性が高いから、魔導師のクレイルや呪術に詳しい者に調べてもらった方が良い。それにハルもね。実際、その赤色のモヤが見れたのはハルだけだし…何より、いざと言う時は…色々と頼りになるからな。本当に…ハルと居ると…飽きないな?」

リュウが苦笑する。

「ゔー…否定できない自分が悔しい。」

「それじゃあ、俺はこの事を王太子に伝えに戻るよ。俺も、ハル達の手伝いができたら良いんだけど…できたとしても、残りの視察を終えて、一旦帰国してから─になると思う。」

「リュウは、あくまでも隣国の魔法使いだからね。自国の事を優先するのは当たり前だよ。どうしても助けて欲しい時はお願いするかもしれないけど。」

「ありがとう、ハル。でも、無理はするなよ?」

と笑った後、リュウは転移魔法陣を展開させた。







*王族所有の離宮にて*


「パルヴァンの森の視察が…中止ですか?何故ですか?ひょっとして…穢れが?」

リュウがランバルトに報告した後、自身に充てられた部屋に視察団のメンバー4人を呼び寄せ、パルヴァンの森の視察の中止を告げた。

「パルヴァン辺境伯から連絡があって、詳しい事はまだ分からないが、少し問題が上がったようなんだ。」

“呪術”に関しては伏せておくことになった。

「それは…残念ですが…仕方無いですね。」

パルヴァンの森は特殊な場所である事は、隣国の者でも知っている為、パルヴァン辺境伯がノーと言えば仕方無い─と言う意見で一致した。

「それで、視察の日程の変更はどうなりますか?パルヴァン辺境地へ行く事事態が中止ですか?」

「もともとパルヴァンには、森の視察だけだったからな。その森に入れないなら、行く必要はない─と思っている。それに、森に問題がある今、私達が行けば迷惑だろうしね。」

「──そうですか…」

「サリス、そんなにもパルヴァンの森に行きたかったのか?」

「勿論ですよ。あそこは特殊な場所ですからね。以前より興味があったんです。守り神に会えるかも─とか、淡い期待もあったんです。」

「守り神─って、ある意味伝説級の話だろう?」

はははっ─と、リュウとサリス以外の3人が軽く笑う。

ーネージュの事…だよな?本当に居ると知ったら…驚くだろうな。絶対俺からは言わないけどー

「まぁ、サリスにとっては残念だが、今回は諦めるしかないだろう。」

「───はい…」

「よほど行きたかったんだな?また…機会があれば、辺境伯に訊いてみるから元気を出せ。」

と、ショゲたサリスの背中をポンポンと叩いた。

「──っ!ありがとう…ございます!」



そうして、視察団一行はパルヴァン辺境地へと行かず、その離宮に2日程滞在した後王城に戻り、予定より3日程早く隣国に帰国した。









*蒼の邸*


「ディ、おかえりなさい。」

「ハル、ただいま」

リュウ達が帰国してから更に3日後。ようやくディが蒼の邸へと帰って来た。

「旦那様、おかえりなさいませ。夕食は不要と聞いていましたが…軽食か何かご用意しましょうか?それとも、入浴をされますか?」

「ありがとうバート。先ずはお風呂に入りたい。それから…何か軽い物を頼むよ。」

「承知しました。」

バートさんは指示を出す為か、そのまま邸の奥へと下がって行った。

「ディ、お疲れ様でした。お疲れだと思うから、私も邪魔しないように今日は自分の部屋で──」
「─寝かせる訳ないだろう?そもそも、ハルが邪魔になるなんて事はないからな。俺は今からお風呂に入るけど、ハルはそのまま俺の部屋で待っててくれたら良いから。」

と、頬をスルリと撫でられながら微笑まれて

「わ…分かりました!」

と返事をするだけでいっぱいいっぱいだった。

ー久し振りに至近距離で見たディの笑顔の破壊力は…半端なかった。心臓が痛いですー






そして、言われるままディの部屋で久し振りに話をして……夫婦の部屋で一緒に過ごしました。



ーあれ?1ヶ月に及ぶ視察で、疲れてないの?ー

と、訊きたくなるほど……。


気を失う前、窓の向こうが少し明るいかな?なんて…きっと…気のせいだった…筈。


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