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ステップアップ
しおりを挟む「あ…その事なんだけど…お父さん、少し…私に時間をくれませんか?」
「時間はあるけど…どうした?何かあったのか?」
「何かあったのは…お父さんの方…だよね?」
「──っ!」
お父さんが、ハッとして目を見張る。
こんなゼンさん─お父さんは本当に珍しい。そんなお父さんから視線を外す事なく見つめる。勿論、恥ずかしいけど抱きついたままで。
すると、お父さんはゆっくりと瞬きをした後、軽く息を吐いた。
「そうだな…。俺の気持ちを整理したいから…明日でも良いか?」
「はい。大丈夫です。もともと、今日はパルヴァン邸に泊まる予定だったから。」
「そうか。エディオルは…どうする?」
「俺は王都に帰ります。一緒に居たいけど、明日も仕事が…ありますからね。ハル、明日…仕事が終わったら迎えに来るから。」
ディはそう言うと、未だお父さんに抱きついたままの私の頬に、軽くキスをして。
「明日、蒼の邸に帰ってからが…楽しみだ。」
と、私の耳元で囁いてから、ディはまた王都へと帰って行った。
ー“楽しみ”って…何ですか?とは…訊けないよね?ー
「「ハル様!良かったです!!」」
「ふぐぅ──っ」
記憶が戻った事をルナさんとリディさんに伝えると、喜んでくれて、やっぱり2人に抱きつかれました。
それから、ディも報告しているとは思うけど、私からもミヤさんに記憶が戻った事を手紙に書いて魔法で飛ばした。
そして、その日の夕食は、別邸からレオン様とカテリーナ様もやって来て、皆で記憶が戻ったお祝い─と言う名の宴会が開かれた。
*王城、ランバルトの自室にて*
「ハル殿の記憶が戻った!?」
「ええ、そうみたいですね。本当に良かったわ──って、また泣いてます?」
「──いや、泣いていない。」
と言いながら、私の横に座っているランバルト様は頑張って涙を耐えている。
「ふふっ。そう言う事にしときましょうか。エディオルさんも、これで一安心でしょうね。」
ーいや…エディオルさんの事だから、何かと理由をつけて、更にハルを追い込みそうよねー
と、1人クスクスと笑っていると──
横からギュッとランバルト様に抱きしめられた。
「ランバルト様?やっぱり泣いて──」
「泣いてない。ただ……私はいつまで“様”呼びなのかと…思って…。」
「はい?」
ランバルト様は、顔を私の肩に押し付けているから、どんな顔をしているのか分からない。
「ミヤ様は、私の…婚約者だろう?」
「そうですね。」
「エディオルの事は“さん”呼びだろう?」
「……」
ーあぁ、そう言う事か。本当に…この人は…可愛いよね?ー
「ふふっ──」
「……笑わなくても……」
と、ようやく私の方に向けて来たランバルト様の顔は、拗ねた様な顔で少し赤くなっていた。
「なら、私の事も“様”呼びは止めて下さいね?ルト─で良いかしら?」
“ルト”─ゲームのハッピーエンドで、ヒロインが王太子の事をそう呼んでいたな─と思い出した。それで思い切って言ってみたけど…どうやら、思考回路が停止したらしい。私を見つめたまま固まっている。
ー呼び名だけでコレとか…本当に可愛いわー
ニヤニヤしそうになるのを我慢して、そのままルトを見ていると、ポンッと音がしたように一気に顔が真っ赤になった。
「──ル…ルト!わわわわ分かった!ミー!」
ー“ミー”って!ー
と、突っ込みたくなるのを我慢する。
ルトを見ると、精一杯頑張った!と言う事が分かるから。
「じゃあ改めて─ルト、これからも宜しくお願いしますね?」
「あぁ!宜しく頼む!ミー!」
お互い笑い合って──触れるだけのキスをした。
*翌日、ランバルトの執務室にて*
「えー…何?またランバルトが気持ち悪いんだけど…。」
今日は急遽予定が変更されて、ランバルトの執務室にイリスとクレイルとエディオルが呼ばれて、クレイルが執務室にやって来て、ランバルトを見た直後の発言だった。
「今日は朝からずっとあんな感じでニヤニヤしてるんだ。どうせ…ミヤ様関連だろうけどね。」
イリスは、もう見慣れた─と言った感じで、あまり気にした様子はなかった。エディオルに至っては、いつも通りの氷の騎士ヨロシク!状態だった。
「あぁ、そうだ、忘れていたが……クレイル、イリス、昨日、ハルの記憶が戻ったんだ。だから、俺は明日から3日の休みをもらったから、宜しく頼む。」
「「えっ!?記憶が戻ったのか!?それは良かった!!」」
「──って、何で休み?」
クレイルが不思議そうに首を傾げる。
「───色々する事があるからな。」
「「………」」
ー何だ!?その間は!怖いな!ー
と、クレイルとイリスは心の中で突っ込んだ。
「あー…兎に角、ハル殿にヨロシク伝えておいて。それと、またネロに会いに行くと言っておいて……果物を持ってね。」
「それじゃあ、私はベラに報告しておきますね。きっと、喜ぶだろうね。」
ーハル殿…色々と頑張って下さいねー
と、イリスはまた心の中で呟いた。
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