43 / 62
父娘
しおりを挟む一通りの話が終わり、今はグレン様が中心となって、今後の話をしている。私はと言うと、そんなグレン様やお父さん達を何とは無しに眺めながら、今迄の事を考える。
信じられないような話だけど、私の母がこの世界のパルヴァンの巫女の末裔の“ユイ”だった事は…本当の事なんだろうと思う。
真名ではないのに、ネージュと名を交わせた事。
サリスの持っていた巫女の血に、私が反応した事。
私の強い?魔力がこの世界に馴染んでいる事。
きっと、そう言う事なんだろう。
後は───
ーお兄さんは喜んでくれたけど、問題はお父さん─ゼンさんだよねー
ゼンさんは、ずっと“ユイ”を探していて…きっと、今でも自分の妻として好きなままだった筈。
それなのに、自分とは違う男性との間にできた私の事を……
「拒絶されても…おかしくないよね?」
「ん?どうした?ハル。」
思わず口に出した時、グレン様達と話し込んでいたディが私の方へと戻って来ていた。
「いえ、何でもないです。」
ー兎に角、また改めて、お父さんに時間を作ってもらわないとねー
「大丈夫か?」
「んー…まぁ…色々と複雑?な感じはありますね。」
と、正直な気持ちを口にすると、ディはそのまま私の横に腰を下ろした。
「気持ちに関しては、ゆっくり自分の中で向き合って整理をしていくしかないが、話しを聞く位はできるからな?その相手が俺なら嬉しいが……俺には話せない事があったら、ミヤ様をはじめハルにはハルを大切に思ってくれている人が沢山居るから、我慢せずに周りを頼れば良い。」
「ディ…ありがとうございます。」
そうだ。ディの言う通り、還れなかったあの時とは違って、私には私を思ってくれている人が居るんだ。
「あの…ディ…今日は……」
「分かってる。あらかた話も終わったから、今から行ってくると良い。その代わり、明日からは俺を優先してもらうからな?」
「ゔっ──お手柔らかに───」
「─する訳ないだろう?」
ーですよね!?分かってた!知ってました!ー
「えーっと…兎に角…行ってきます。」
「行ってらっしゃい。─くくっ…」
と、笑いながら手を振るディをじとりと一瞥してから、私はお父さんの所へ向かった。
「お父さん!あの──」
「ハル、丁度良かった。今から少し…時間はあるか?」
「え?時間?はい!あります!時間、すごくあります!」
私がお父さんに言おうとした事を、先にお父さんに訊かれて慌てて答える。
「グレン様、ここで失礼しても良いですか?」
「あぁ、大丈夫だ。もう必要な話は終わったからな。父娘でゆっくり話して来い。」
「ありがとうございます。」
グレン様はニカッと笑った後、お父さんと私以外の人達に声を掛けて、このサロンから出て行った。
「記憶が戻ったと思ったら、こんな展開になったが…ハルは大丈夫か?」
「私は大丈夫です。」
皆が出て行った後、お父さんがお茶を淹れ直してくれて、今は3人掛けのソファーに横並びで座っている。
「まさか、ユイが…ハルの世界で生きていたとはな。でも…そのお陰で、ユイは死なずにすんだのかもしれないな。大怪我をした状態で川に流されていたら…きっと…。」
それから一度、お父さんはゆっくり瞬きをする。
「俺が、ユイを幸せにしたかった。」
「……」
「でも、俺が─では無くても、ユイは幸せだったんだろう?記憶を失って、異世界に飛ばされて…でも、そこで親となる人に助けてもらって……夫ができて…ハルが生まれて。ユイが幸せだったなら……本当に良かったなと…。」
「おと──ゼンさんは…本当に母を…ユイさんの事を…好きで大切だったんですね。」
「あぁ──今でも愛してる。もう二度と会う事はないが…ロンと……ハルを残してくれた。俺にはそれで…十分だ。」
「…私の事…嫌じゃ…ない?私は……」
ゼンさんは少し驚いたように目を見開いてから、私の両手を握り締めてきた。
「嫌な訳ないだろう?ハルの母親がユイであってもなくても、俺はハルの事を本当の娘のように思っている。」
「これからも…“お父さん”と…呼んでも良い?」
「勿論だ。これからも、ずっと…ハルは俺の娘だからな。」
「はい!ありがとうございます!お父さん!」
私は、そのままギュウッ─とお父さんに抱きつくと、お父さんは私の背中をポンポンと優しく叩いた。
*****
次々に──本当に色々な事が起こって疲れていたのだろう。
ハルが、俺に抱きついたまま寝てしまった。
『…私の事…嫌じゃ…ない?私は……』
ー俺がハルを嫌う?──有り得ないー
『これからも…“お父さん”と…呼んでも良い?』
ー俺以外に“父”の座を渡す気などさらさら無いー
もともと義理とは言え、本当の娘のように大切にしてきた。それが…ユイの子供だと知れば……愛おしさが増しただけだった。
「ユイ…もう二度と会えないのは…残念だし辛いけど…ロンとハルを残してくれて…ありがとう。俺は…幸せだ。」
少しだけハルの寝顔を眺めた後、本当に…本当に!癪だが─寝ているハルを抱き上げて、エディオルの居るであろう部屋へと運んで行った。
110
あなたにおすすめの小説
聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~
夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力!
絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。
最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り!
追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~
水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。
彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。
失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった!
しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!?
絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。
一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。
【完結】レイハート公爵夫人の時戻し
風見ゆうみ
恋愛
公爵夫人である母が亡くなったのは、私、ソラリアが二歳になり、妹のソレイユが生まれてすぐのことだ。だから、母の記憶はないに等しい。
そんな母が私宛に残していたものがあった。
青色の押し花付きの白い封筒に入った便箋が三枚。
一枚目には【愛するソラリアへ】三枚目に【母より】それ以外、何も書かれていなかった。
父の死後、女性は爵位を継ぐことができないため、私は公爵代理として、領民のために尽くした。
十九歳になった私は、婚約者に婿入りしてもらい、彼に公爵の爵位を継いでもらった。幸せな日々が続くかと思ったが、彼との子供を授かったとわかった数日後、私は夫と実の妹に殺されてしまう。
けれど、気がついた時には、ちょうど一年前になる初夜の晩に戻っており、空白だったはずの母からの手紙が読めるようになっていた。
殺されたことで羊の形をした使い魔が見えるようになっただけでなく『時戻しの魔法』を使えるようになった私は、爵位を取り返し、妹と夫を家から追い出すことに決める。だが、気弱な夫は「ソラリアを愛している。別れたくない」と泣くばかりで、離婚を認めてくれず――。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。
雨宮羽那
恋愛
聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。
というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。
そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。
残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?
レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。
相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。
しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?
これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。
◇◇◇◇
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます!
モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪
※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。
※完結まで執筆済み
※表紙はAIイラストです
※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)
「女のくせに強すぎて可愛げがない」と言われ婚約破棄された追放聖女は薬師にジョブチェンジします
紅城えりす☆VTuber
恋愛
*毎日投稿・完結保証・ハッピーエンド
どこにでも居る普通の令嬢レージュ。
冷気を放つ魔法を使えば、部屋一帯がや雪山に。
風魔法を使えば、山が吹っ飛び。
水魔法を使えば大洪水。
レージュの正体は無尽蔵の魔力を持つ、チート令嬢であり、力の強さゆえに聖女となったのだ。
聖女として国のために魔力を捧げてきたレージュ。しかし、義妹イゼルマの策略により、国からは追放され、婚約者からは「お前みたいな可愛げがないやつと結婚するつもりはない」と婚約者破棄されてしまう。
一人で泥道を歩くレージュの前に一人の男が現れた。
「その命。要らないなら俺にくれないか?」
彼はダーレン。理不尽な理由で魔界から追放された皇子であった。
もうこれ以上、どんな苦難が訪れようとも私はめげない!
ダーレンの助けもあって、自信を取り戻したレージュは、聖女としての最強魔力を駆使しながら薬師としてのセカンドライフを始める。
レージュの噂は隣国までも伝わり、評判はうなぎ登り。
一方、レージュを追放した帝国は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる