魔法使いの恋

みん

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壱拾伍*シリウス=マーレン*

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「顔に傷痕があるから……何なんですか?誰かに迷惑を掛けましたか?掛けていませんよね?寧ろ、この傷は他人ひとを護った時にできたもの─と聞いています。ならば……褒められる事はあっても、蔑まれる事はないと思いますけど?そもそも、貴方は大きな勘違いをされてますけど……私一緒に居たくて一緒に居るので、貴方の助け?は全く必要ありませんから。」

「──なっ!」
「………」

次男坊が顔を赤くした後腹が立ったのか、怒りを顕にしてヴィオラ嬢に手を伸ばした─が、私よりも早くヴィオラ嬢本人がその手をサッと弾き飛ばした。

「い──っ!このっ…優しくしたら調子に乗って…お前、一体誰に手を上げたか分かっているのか!?」

「すみませんが、挨拶もされていないので全く分かりません。それに、先に手を出そうとしたのは…そちらでは?証人も沢山居るので…確認してみますか?」

「なっ!?」

この馬鹿次男坊は、そこでようやく今の状況に気付いたようだった。

『確かに、あの人が先に手を出そうとしてたな。』
『彼女は正当防衛よね?』
『それに、あの人は、あの第一騎士団の副団長様よね?』
『確か…魔法使いリュウ様と共にジークフラン様を支えてる──』
『前の国王の時代から、俺達平民を護ってくれた─』

「こっ……今回の事…は!見逃してやる!」

馬鹿次男坊は、そう吐き捨ててからその場から走り去って行った。

「「「「……………」」」」

私とヴィオラ嬢は勿論の事、周りに居た者達も暫くは何も言えず……誰かが「ぷっ」と吹き出したのを切っ掛けに、皆で大笑いしてしまった。

一頻り笑った後─

「副団長様、いつも護ってくれてありがとう」
「あの馬鹿にハッキリ言ってくれて、スッキリしたわ!」

と、お礼を言われながらその場を後にして、王都で有名な庭園を見て回ってから王城への帰路に就いた。







「マーレン様、今日は誘っていただいて、ありがとうございました。とっても楽しかったです。」

王城迄帰って来て、そのまま彼女に充てがわれている部屋迄の通路沿いにある小さな庭園迄やって来ると、ペコリと頭を下げてお礼を言われた。

ーあぁ、これで…ここで別れてしまうのかー

そう思うと、何とも寂しい気持ちになってしまい、何と返事をすれば良いのか分からなくなり、ついつい黙り込んでしまった。

「──あの……あの時、言った事は本当の事ですから。」

「あの時?」

「“私一緒に居たくて一緒に居る”─って、言った事……です。」

ーえ?ー

足元に落としていた視線をヴィオラ嬢に向けると、そこには綺麗な水色の瞳があった。その瞳が、私をしっかりと見つめている。

「私は…まだ成人もしていない子供ですけど……恋愛対象として…見られないかもしれないですけど……でも、それでも、私は…マーレン様の隣に──」
「すまない!そこから先は、私から言わせて欲しい!」
「───はい!?」

「「…………」」

お互い顔を赤くして見つめ合ったまま、暫くは沈黙が続き──

「──私には…顔に醜い傷痕がある。あぁ、勿論、この傷を負った事を後悔した事はない。ヴィオラ嬢が言った通り、この傷一つで領民の命を救えたのなら何て事もない傷だから。ただ、一緒に居るヴィオラ嬢に迷惑を掛けた事は申し訳無く思う。それに、私は31歳で…ヴィオラ嬢はまだ17歳と若くて…きっと、これから沢山の出会いが待っているだろうと思う。」

その沢山の出会いの中で、ヴィオラ嬢が好きになる者が居るかも知れない。私みたいな年の離れたおじさんよりも、若くて男前な相手が現れるかもしれない。その方が、ヴィオラ嬢は幸せになれるかもしれない。

しれないが────

「それでも、私は……私の側に、これから先、ヴィオラ嬢が居てくれなら良いな─と…思っている。」

ヴィオラ嬢はパチパチと瞬きをした後、パアッと満面の笑顔になって、ポンッと顔を更に赤くしたと思えば、両手で両頬を押さえて「夢!?都合の良い夢ですか!?」と呟き出した。先程迄の凛とした姿はどこへやら─

ー可愛いなー

フッ─と自然と顔が緩んで、張り詰めていた緊張が解れて、そのまま、未だ両頬を押さえているヴィオラ嬢の手の上に私の手を添えて、私の方へと顔を持ち上げた。

「夢にされると、困るんだけどね?夢にしないでくれるかな?」

「は………はい!私もそれは嫌なので、夢にはしません!」

そこでまた見つめ合ったまま黙り込んだ後、ヴィオラ嬢がフワリと微笑んで、その笑顔を見てまた、私の心が温かくなった。







ーこれからの問題……越えなければならないのは……カルザイン殿とゼン殿……だろうか?ー





❋騎士達の再会の宴から、ヴィオラとシリウスのデートの話の裏側の話を“置き場”に投稿しました。時間がある時にでも覗いていただければ幸いです❋




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