4 / 84
❋ループ編❋
4 終わりの始まり
しおりを挟む
「エヴェリーナ、私に何か…言いたい事は無い?」
「言いたい事……ですか?」
ー言いたい事なんて……ー
「いえ…何も………」
「そうか……なら…もういい………」
カタン─と音を立てて椅子から立ち上がったハロルド様は、私に背を向けて、一度も私を振り返ることなく図書室から出て行った。
“エヴェリーナ”
いつからだったか……ハロルド様が“リーナ”ではなく、“エヴェリーナ”と呼ぶようになったのは。
最後に優しい眼差しを向けてくれたのは…いつだっただろか?
今もそうだ。図書室で勉強をしていた私に声を掛けて来たのはハロルド様なのに。その声はとても冷たくて…目には何の色も映してはいなかった。
声を掛けられたのは……いつぶりだった?
王城に呼ばれる事が無くなって、お茶をする事もなくなった。学園でも話す事はなかった。ハロルド様の隣には、いつもいつも………ジュリエンヌ様が居た。何故、ジュリエンヌ様が居るのか。
ーそこは…私の場所だった筈なのにー
「エヴェリーナ!」
「エヴェリーナ……大丈夫か?」
「フルール…ジョナス様………」
どうやら、先程のやり取りを、フルールとジョナス様に見られていたようだ。
「大丈夫──と言うか……ハロルド様は一体、何が言いたかったのか……」
私には、サッパリ分からない。ハロルド様が何を考え思っているのか。言いたい事や訊きたい事は…たくさんある。話したい事だって、たくさんある。だから、お伺いの手紙を書いた。
“会って話がしたい”
“忙しいから”
そうやって、話す時間を作ってくれなかったのはハロルド様だ。忙しくて、婚約者との時間は作れなくても、ジュリエンヌ様との時間は作れるようだ。
「あぁ…そうか………」
「エヴェリーナ?」
ージュリエンヌ様と一緒に居たいから、私との時間がとれないのかー
ストン─と腑に落ちた。
ハロルド様はトルトニアの第二王子。ジュリエンヌ様はトワイアルの第一王女だ。結婚するのに、何の問題もない2人だ。きっと、竜王様も反対はしないだろう。
「婚約に関して…考え直さなければいけないのかもしれないわ……。」
「エヴェリーナ……」
ポツリと呟いた言葉に、フルールには泣きそうな顔をされ、ジョナス様は怒っているような感じだった。
辛くない─とは言えないけど、私の事を思ってくれる人が側に居てくれると言うのは、嬉しい事だ。
もともと、傷物となった時、結婚どころか恋愛も諦めた。そんな私でも、恋をする事ができたのだ。学園生活も残り2ヶ月。卒業から1年後に結婚予定だったから、早目にお父様に相談しなければ──。
そう思っていたところに、久し振りにハロルド様から王城に来て欲しいと言う手紙が届いた。
私の両親と兄は今、視察の為に領地に戻っていて、後1週間程帰って来ない。その為、両親に婚約解消についての話もできないまま、私は1人で王城に行く事になった。念の為、フルールとジョナス様には手紙を書いて報告した。ハロルド様から手紙があり、明日、王城に行くと。
それが、一度目の終わりの始まりになるとは──思わなかった。
******
「婚約破棄…ですか?」
「そうだ。」
「…………」
「“解消”ではなく、“破棄”とした理由は何でしょうか?それと、念の為確認させていただきますが、この事は、国王両陛下は承諾済みなのでしょうか?」
そもそも、この婚約は国王両陛下からの願いで調ったものだ。ハロルド様だけの意思で解消─破棄する事はできないだろう。寧ろ……この婚約は、ハウンゼント家に主導権があるんじゃないかしら?
「両陛下には、これからの話にはなるが、お前─エヴェリーナの行いを伝えれば、すぐ様納得していただけるだろう。」
「“行い”──ですか……。」
「今この場で、それらの行いを認め、反省して謝罪をすれば……修道院送りで済むだろう。」
何が…修道院送りで済むのか。済まなければ、一体私をどうするつもりなのか…。
「この行いについてですが、これらを私がやったと……調べて確認したのでしょうか?」
「……数人の証言は得たし、ジュリー…エンヌ様に関しては、本人から直接いつも聞いていたからね。」
「…………」
“ジュリー”
“いつも聞いていた”
ーなるほどー
第一王女殿下の事を“ジュリー”と呼ぶ程の仲となり、婚約者との時間は作れないけど、その愛しいジュリーの為にはいくらでも時間が作れて、いつでも話を聞いてあげていたのだろう。
それからの、『エヴェリーナ、私に何か…言いたい事は無い?』と言う発言─質問だったと言う事だろう。
してもいない筈の事に数人の証言者が居る─と言うのは不思議だけど、今そこを追求したところで、ハロルド様からは何も教えてはくれないだろう。それに─
ここまで一言も喋らず、ハロルド様の横に座っているジュリエンヌ様が……不気味だ。こんな嘘をついてまでハロルド様との仲を深める意味は…あるのだろうか?
ージュリエンヌ様の目的は?ー
兎に角、ここは一旦引き下がるべきだろう。そうして、両陛下とお父様に相談するべきだ。
「申し訳ありませんが、私はこれで下がらせていただきます。」
王族2人に頭を下げて、私は踵を返した。
「言いたい事……ですか?」
ー言いたい事なんて……ー
「いえ…何も………」
「そうか……なら…もういい………」
カタン─と音を立てて椅子から立ち上がったハロルド様は、私に背を向けて、一度も私を振り返ることなく図書室から出て行った。
“エヴェリーナ”
いつからだったか……ハロルド様が“リーナ”ではなく、“エヴェリーナ”と呼ぶようになったのは。
最後に優しい眼差しを向けてくれたのは…いつだっただろか?
今もそうだ。図書室で勉強をしていた私に声を掛けて来たのはハロルド様なのに。その声はとても冷たくて…目には何の色も映してはいなかった。
声を掛けられたのは……いつぶりだった?
王城に呼ばれる事が無くなって、お茶をする事もなくなった。学園でも話す事はなかった。ハロルド様の隣には、いつもいつも………ジュリエンヌ様が居た。何故、ジュリエンヌ様が居るのか。
ーそこは…私の場所だった筈なのにー
「エヴェリーナ!」
「エヴェリーナ……大丈夫か?」
「フルール…ジョナス様………」
どうやら、先程のやり取りを、フルールとジョナス様に見られていたようだ。
「大丈夫──と言うか……ハロルド様は一体、何が言いたかったのか……」
私には、サッパリ分からない。ハロルド様が何を考え思っているのか。言いたい事や訊きたい事は…たくさんある。話したい事だって、たくさんある。だから、お伺いの手紙を書いた。
“会って話がしたい”
“忙しいから”
そうやって、話す時間を作ってくれなかったのはハロルド様だ。忙しくて、婚約者との時間は作れなくても、ジュリエンヌ様との時間は作れるようだ。
「あぁ…そうか………」
「エヴェリーナ?」
ージュリエンヌ様と一緒に居たいから、私との時間がとれないのかー
ストン─と腑に落ちた。
ハロルド様はトルトニアの第二王子。ジュリエンヌ様はトワイアルの第一王女だ。結婚するのに、何の問題もない2人だ。きっと、竜王様も反対はしないだろう。
「婚約に関して…考え直さなければいけないのかもしれないわ……。」
「エヴェリーナ……」
ポツリと呟いた言葉に、フルールには泣きそうな顔をされ、ジョナス様は怒っているような感じだった。
辛くない─とは言えないけど、私の事を思ってくれる人が側に居てくれると言うのは、嬉しい事だ。
もともと、傷物となった時、結婚どころか恋愛も諦めた。そんな私でも、恋をする事ができたのだ。学園生活も残り2ヶ月。卒業から1年後に結婚予定だったから、早目にお父様に相談しなければ──。
そう思っていたところに、久し振りにハロルド様から王城に来て欲しいと言う手紙が届いた。
私の両親と兄は今、視察の為に領地に戻っていて、後1週間程帰って来ない。その為、両親に婚約解消についての話もできないまま、私は1人で王城に行く事になった。念の為、フルールとジョナス様には手紙を書いて報告した。ハロルド様から手紙があり、明日、王城に行くと。
それが、一度目の終わりの始まりになるとは──思わなかった。
******
「婚約破棄…ですか?」
「そうだ。」
「…………」
「“解消”ではなく、“破棄”とした理由は何でしょうか?それと、念の為確認させていただきますが、この事は、国王両陛下は承諾済みなのでしょうか?」
そもそも、この婚約は国王両陛下からの願いで調ったものだ。ハロルド様だけの意思で解消─破棄する事はできないだろう。寧ろ……この婚約は、ハウンゼント家に主導権があるんじゃないかしら?
「両陛下には、これからの話にはなるが、お前─エヴェリーナの行いを伝えれば、すぐ様納得していただけるだろう。」
「“行い”──ですか……。」
「今この場で、それらの行いを認め、反省して謝罪をすれば……修道院送りで済むだろう。」
何が…修道院送りで済むのか。済まなければ、一体私をどうするつもりなのか…。
「この行いについてですが、これらを私がやったと……調べて確認したのでしょうか?」
「……数人の証言は得たし、ジュリー…エンヌ様に関しては、本人から直接いつも聞いていたからね。」
「…………」
“ジュリー”
“いつも聞いていた”
ーなるほどー
第一王女殿下の事を“ジュリー”と呼ぶ程の仲となり、婚約者との時間は作れないけど、その愛しいジュリーの為にはいくらでも時間が作れて、いつでも話を聞いてあげていたのだろう。
それからの、『エヴェリーナ、私に何か…言いたい事は無い?』と言う発言─質問だったと言う事だろう。
してもいない筈の事に数人の証言者が居る─と言うのは不思議だけど、今そこを追求したところで、ハロルド様からは何も教えてはくれないだろう。それに─
ここまで一言も喋らず、ハロルド様の横に座っているジュリエンヌ様が……不気味だ。こんな嘘をついてまでハロルド様との仲を深める意味は…あるのだろうか?
ージュリエンヌ様の目的は?ー
兎に角、ここは一旦引き下がるべきだろう。そうして、両陛下とお父様に相談するべきだ。
「申し訳ありませんが、私はこれで下がらせていただきます。」
王族2人に頭を下げて、私は踵を返した。
71
あなたにおすすめの小説
断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
古堂 素央
恋愛
【完結】
「なんでわたしを突き落とさないのよ」
学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。
階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。
しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。
ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?
悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!
黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
四人の令嬢と公爵と
オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」
ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。
人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが……
「おはよう。よく眠れたかな」
「お前すごく可愛いな!!」
「花がよく似合うね」
「どうか今日も共に過ごしてほしい」
彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。
一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。
※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください
【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか
まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。
己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。
カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。
誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。
ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。
シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。
そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。
嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。
カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。
小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。
悪役令息(冤罪)が婿に来た
花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー
結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!?
王女が婚約破棄した相手は公爵令息?
王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした?
あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。
その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。
彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。
そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。
彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。
その数日後王家から正式な手紙がくる。
ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」
イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。
「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」
心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ!
※ざまぁ要素はあると思います。
※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。
恋の締め切りには注意しましょう
石里 唯
恋愛
侯爵令嬢シルヴィアは、ウィンデリア国で2番目に強い魔力の持ち主。
幼馴染の公爵家嫡男セドリックを幼いころから慕っている。成長につれ彼女の魔力が強くなった結果、困った副作用が生じ、魔法学園に入学することになる。
最短で学園を卒業し、再びセドリックと会えるようになったものの、二人の仲に進展は見られない。
そうこうしているうちに、幼い頃にシルヴィアが魔力で命を救った王太子リチャードから、
「あと半年でセドリックを落とせなかったら、自分の婚約者になってもらう」と告げられる。
その後、王太子の暗殺計画が予知されセドリックもシルヴィアも忙殺される中、シルヴィアは半年で想いを成就させられるのか…。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。なろうサイトでは番外編・後日談をシリーズとして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる