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みん

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第四章ー未来へー

動き出した聖女

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「彼女……大胆に動き出しましたね。」
「そうだね……」


スペイシー邸にお泊りをした翌週。
学園に来てみれば、聖女シェイラの周りには3人の令息達が居た。先週、解呪をした者ではない。しかも、先週は伯爵家の令息達だったが、今回は3人のうち2人が侯爵家の令息だ。嫡男ではなく、2人とも次男ではあるけど。

「しかも…見た感じだと、先週の2人よりも深く掛けられている感じがする。下手したら……可能性がある。」
「──っ!?」

普段、何があっても穏やかなダレルさんから、ピリッとした殺気に近い魔力が溢れる。

「ダレルさん!」

思わずダレルさんの手を掴んで名前を呼ぶと、ハッとして、その溢れた魔力を落ち着かせた。

「──ナディア、ありがとう。ついつい………」

少し情けないような顔で謝るのは、いつも通りのダレルさんだ。

「ダレルさんの気持ちも…分かりますから。ただ、落ち着いて対処しないと……後々後悔しないように…気を付けていきましょう。」
「そうだね。」

ダレルさんではなく、自分に言い聞かせる為の言葉だ。未だに、最期に見た彼の瞳は怖い。ただ──あの時、彼から逃げずに向き合っていれば、あんな結末にはならず、もっと違う未来があったのかもしれない─と思う。

彼のような者や、アドリーヌわたしのような者を出してはいけない。

「どうしますか?」
「取り敢えず、今回もまた……解呪をするしかない。」
「…何なら、いっその事、彼女も……呼び出しますか?」
「……いや、今日は、あの3人だけで。多分、今日1日だけで解呪は無理だと思う。少しずつ解呪してから……今週末、その時に、あの3人と彼女を呼び出して様子をみてみよう。」

それ迄に、シェイラが何らかの魔法を使っていると言う証拠を手にする事ができれば──と思いながらシェイラと3人を見つめた。




3人を毎日呼び出す事には無理があり、初日だけは呼び出して手伝いをさせている間に解呪の魔法を掛けたが、その日以後は、授業中などに掛けると言う事になった。
3人に毎日少しずつ解呪の魔法を展開させているダレルさん。かなりの負担になっている筈なのに、顔色一つ変える事なく授業を行っている。
終業後には、必ず上級ポーションが机の上に置かれるようにもなった。



そんな日々を送り、ついにやって来た、その週の学園最終日。

3人に掛けられている魔法は、完璧には解呪できなかった。解呪の魔法を掛けていたのと同時に、彼女も魔法をかけ直していたのかもしれない─と、ダレルさんは言っていた。

兎に角、予定通りにその3人とシェイラを放課後に呼び出して、4人の様子を確認する事にした。

そして、その4人が来るのを待っていると、各部屋に設置されている連絡用の魔道具がリンリンと鳴り響いた。



『学園内で、生徒が魔法を発動させ、生徒が怪我をした。』


生徒同士でトラブルになり、魔法を使って攻撃してしまい、相手が怪我をしたようで、現場の確認をして欲しい─と、魔道士のダレルさんに要請が掛かった。

「私には解呪はできませんが……手伝いをしてもらいながら、4人の様子を確認しておきます。なので、ダレルさんは、取り敢えず行って来て下さい。」

学園が休みになってしまうと、3人がこの週末にどうなるか分からない。何かが起こる前に、今の状況を確認して、少しでも早くモンテルアーノ様に報告して対処してもらうのがベストだ。

「そうだね…ただ…魔具もあるから大丈夫だと思うけど、もし、何か彼女にがあったら、先ずは…自分の身を守る事。良いね?」

「はい。分かりました。」

言い方は悪いけど、令息3人は既に何かを掛けられているから、今守ったところで─と言う事なんだろう。それに、後から何とかできる─と言う事もあるんだろう。なら、私は、これ以上被害が出る事を避けるようにするだけだ。

少し心配そうな顔をしながらダレルさんは部屋から出て行き、私はそのまま4人が来るのを待った。

それから5分程経った頃、4人のうち侯爵の令息2人が慌てて部屋へとやって来た。

「ナディア先生、シェイラが階段を踏み外して足を怪我してしまって…医務室に連れて行ったけど、先生が居なくて……」

あぁ、ひょっとしたら、ダレルさんが呼び出された場所に、養護の先生も呼び出されているのかもしれない。

「分かったわ。私が行くわ。」

ー怪我をしたなら仕方無い。今日は帰ってもらって、私は急いで登城しようー

前を行く2人の後を追い掛けるように医務室へと急ぐ。

ーん?ー

ピリピリと、耳に僅かな痛みを感じた。

ー魔具が…反応してる!?ー

そう気付いたのと、その場の空気が揺れた様に感じたのは、同時だった。

『*******』
「──っ!?」

耳元で誰かに何かを囁かれた瞬間、魔具がパンッと音を立てて砕け散り、目の前の景色が暗転した。









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