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みん

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第四章ー未来へー

聖女の真実

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「───ん……」

ー何だか、体が怠いー

起きなければ─と思うのに体が動かないから、目を開けて、目だけで辺りを見回す。

ーここは…どこ?ー

窓はあるのに、室内は薄暗い。記憶にあるのは、放課後の学園。今居る場所がどこかは分からないけど、もう夜になっているみたいだ。
今、私が横たわっているのは、どこかの部屋のソファー。手足が拘束されている感じはないけど─

この右手に嵌められているモノは、おそらく、魔力を封じる枷だろう。そのせいで、体が怠くて動かなくなっている。

学園の部屋に居らず、オスニエル邸にも帰らず、登城もしていないとなれば、ダレルさんもモンテルアーノ様も私を探してくれている筈。後は、ここがどこで、この場所をどうやって知らせるかだ。



『ナディア先生、シェイラが階段を踏み外して足を怪我してしまって…医務室に連れて行ったけど、先生が居なくて……』



医務室に向かう途中で、何かを囁かれて──あの声はシェイラ=ペイトリンだった。それと同時に壊れてしまった魔具。その魔具のお陰で、シェイラが発動させただろう魔法に掛かる事はなかったみたいだけど、次にまた魔法を発動されたら防ぎようはない。魔具が壊れたと言う事は、シェイラの魔力はかなり強いと言う事。その上、私は今魔力を封じる枷を嵌められている。

ーどうすれば良い?ー

「あ、先生、目が覚めました?」

ソファーに横たわったまま思案していると、薄暗いこの部屋とは場違いの楽しそうな声がした。

シェイラ=ペイトリンだ。

「ペイトリン……さん…」

ふふっ─と笑っているその顔は……ローゼ=ルードモントと重なって見えた。全く違う顔で、同じなのは赤い瞳だけなのに。

シェイラは後ろ手で扉を閉め、そのまま1人だけで、ソファーに横たわっている私の側までやって来た。

「私には、どうしても思い通りにできなかった人が、2人居たんです。」

悲しげに微笑んで、そのまま言葉を続ける。

「どうしても欲しかった彼の心を掴んでいた、あの女の事が大嫌いだった。それでも、何とかして彼の心を手にしたと思ったのに、最後はあの女が、彼も。」

ー何を…言っているの?ー

「あの女のせいで、全てを失った。ナディア先生。貴方は、その女と……同じ瞳をしてるんですよ。」

スッと目を細めて、横たわっている私を見下ろす。

「その瞳で、私の邪魔をするナディア先生には、ここから居なくなって欲しいんです。ようやく…も見付けましたし、彼とは別に、良い人も見付けましたけど。」

ーまさか…シェイラも……ー

「ただ、は少し手強いから……取り敢えず、ナディア先生を先に何とかしようかな─って。ふふっ。ナディア先生は孤児院育ちだから…孤児院や修道院の生活には、慣れてるでしょう?だから、また、その生活に戻ってもらおうかと…私、色々と準備をしたんですよ?気に入ってもらえると良いんですけど…。」

「“見付けた”って…“今の彼”って……一体…」

「どうせ、これで最後だろうから、教えてあげますよ。信じてもらえるかは先生次第ですけど……私、前世の記憶があるんです。と言っても、思い出したのはつい最近ですけどね。私、その前世でも、聖女だったんです。聖女ローゼ=ルードモントだったんです。」

ーやっぱり!ー

「その前世で、私の邪魔をしたあの女─スペイシーの令嬢に似た瞳を持ったナディア先生が邪魔なんです。あの女、死んだだけじゃなくて、彼も一緒に連れて行ったんですよ。お陰で、第二王子と結婚する羽目になって……既にお腹に居た子は…王子の子だと誤魔化す事ができない容姿だったから、王族に入るどころか、貴族としての立場さえ……本当に、最後は惨めな生涯だった。」

つい最近思い出した─それは、1学期が終わり、長期休暇に入った時だろう。だから、それ迄のシェイラとは別人のようになった。ローゼは聖女としては完璧だったから、記憶が蘇ったと同時に、魔力も強く大きくなり……禁忌の魔法も使えるようになったのだ。それなら、ルシエント様が掛かってしまったのも、仕方無いかもしれない。

ただ─

“彼”とは…私の婚約者だった彼の事?ローゼが手に入れたかったのは、第二王子ではなく、彼だった?その彼もまた、生まれ変わっている?一体、誰が───

ガチャ

と、ノックも無く扉が開かれて、がたいのいい男2人が入って来た。

「もう来たのね。ナディア先生、残念ですけど…ここまでのようです。後は、この2人に先生の相手をお願いしているので………今から3人で下さいね?ふふっ」

ヒュッ─と息を呑む。

『時間が経ったら、ちゃんと、私があげますから、それ迄は……』と花が綻ぶような笑みを浮かべながら、シェイラは部屋から出ていった。






❋エールを頂き、ありがとうございます❋
♪₍₍ ٩( *ˊ ᵕ ˋ*)و ⁾⁾♪


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