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「このチョコレート、美味しかったからお裾分けにどうぞ」
「ありがとうございます」
「疲れた時は甘い物、飴をどうぞ」
「ありがとうございます」
「ランチ、それだけで足りるの?」
「足ります。大丈夫です」
「………アラスター、貴方はいつからリュシエンヌの母親になったの?」
「………母親………」
ここは学校内にある食堂で、私は今、リリアーヌ様とヴェルティル様と3人でランチを食べている─のだけど。
私が二度もヴェルティル様の前で体調を崩したからか、最近特にヴェルティル様からの餌付け─気遣いが増えた。ヴェルティル様に『あげる』と言われて断れる筈もなく、いつも貰ってしまっているけど……
ーリリアーヌ様からすれば、見ていて気持ちの良いものではないよねー
自分の恋人が、自分以外の女性─しかも、獣人に何かをあげたりしていたら、腹立たしく思っていてもおかしくない。私なんかのせいで、2人が仲違いするなんて事は……
「絶対駄目だ!」
「「何が?」」
リリアーヌ様とヴェルティル様が、同じような顔をして私を見ている。並んでいる2人を見ると、やっぱりお似合いだな─と思う。
「何もありません。ただ、いつも気を遣っていただいて、ありがとうございます。もう大丈夫なので、気にしないで下さい」
ランチが終わると、学年の違う2人とは別れて、私は午後の授業を受ける為に教室へと向かった。
『もう大丈夫』とは言ったものの、本当は、あれから体調がイマイチな日が増えた。それはとても軽いもので、軽い頭痛や立ちくらみ、体が怠いと言った感じだ。
「クレイオンさん、ちょっと良いかしら?」
「はい…何でしょうか?」
教室への廊下を歩いていると、2人の令嬢に呼び止められた。制服のリボンのカラーが赤色だから3年生だと言う事が分かる。
「私達、リリアーヌ様とは仲良くしていただいているのだけど、リリアーヌ様が貴方に言わないから、私から言わせてもらうわね。貴方、最近ヴェルティル様と親しくし過ぎよ。ヴェルティル様が声を掛けてくれるのは、リリアーヌ様が貴方の事を気に掛けてくれているからであって、貴方に気を向けているからではないのよ」
「ヴェルティル様は誰にもでもお優しい方だから、貴方にも優しいだけだから、勘違いはしないように。リリアーヌ様は公爵令嬢で、もともと王太子様と婚約するのではないか─と言われていたのに、それよりもヴェルティル様を選んだ位の仲なんだから、その2人の邪魔などしない事ね」
“王太子よりも…ヴェルティル様を選んだ”
ーそれは、知らなかったー
「勿論です。私は……リリアーヌ様とヴェルティル様お2人が並んでいる姿に憧れているだけなので!これからは気を付けます!」
「あら、そうなの?それなら問題無いわね。兎に角、これからは気を付けなさい」
ツンとしたまま、その2人の令嬢は去って行った。
リリアーヌ様が、他人を使って態々忠告をするとは思えないから、あの2人が自分の意思で私に忠告をしに来たんだろう。傍から見れば、私がヴェルティル様に近過ぎるように見えるから。言われた通り、優しくされて調子にのっていたのかもしれない。
「気を付けないとね……」
聖女様の事があるから、必要以上に距離を空ける事は難しいかもしれないけど、それなりの距離を保たないとね…。
「駄目だ…やっぱり体が怠い……」
もともと重く感じた体が、更に重みを増したように息苦しくなってしまい、結局私は、そのまま早退する事にした。
そして、その夜から熱を出し、暫くの間学校を休む事となった。
******
「リュシー、大丈夫?」
『体が熱くて……』
「第二次成長期が早いのは、シロの影響かしら?普通なら3日程で治まるのだけど…何か欲しい物はある?何か口にできそう?」
ベッドで寝込んでいる私の側に付き添ってくれているのは、お母様だ。
『冷たい水が欲しい……』
「今すぐ持って来るから!」
バンッと大きな音を立てて扉を開けて出て行ったのは、二つ年上のクロエお姉様。
“第二次成長期”
獣人には、身体に変化が起こる成長が二度ある。
第一次成長期は、赤ちゃんから幼児になる頃に起こる。赤ちゃんの頃は獣の姿で過ごし、第一次成長期を迎えると共に人の姿へと変化できるようになる。
そして、第二次成長期は、成人となる時に起こる。平均的には20歳前後に起こるのだけど、何故か、私は16歳の今現在、その第二次成長期を迎える事となってしまったのだ。
この二つの成長期には、身体がガラリと変わってしまう為、高熱が出て数日は寝込む事になる。そして、ある意味弱っているせいで、人ではなく獣姿になってしまうのだ。だから、私も今、豹の姿でベッドに横たわっている。豹になるのも久し振りだ。学校に通い出してからは、ずっと人の姿をしていたから。
「リュシー、大丈夫か!?」
『……お兄様?』
これまたバンッと大きな音を立てて扉を開けて入って来たのは五つ年上のローランドお兄様。今日は、早番だったのか、まだ明るいうちに帰って来たようだ。
「お兄様!もっと静かにできないの!?リュシーの体に障るじゃない!」
「ああ!すまない!」
「クロエもローランドも落ち着きなさい」
そんな2人を窘めたのは、お母様だった。
「「すみません」」
相変わらずのお兄様とお姉様に、なんだかホッとします。
「ありがとうございます」
「疲れた時は甘い物、飴をどうぞ」
「ありがとうございます」
「ランチ、それだけで足りるの?」
「足ります。大丈夫です」
「………アラスター、貴方はいつからリュシエンヌの母親になったの?」
「………母親………」
ここは学校内にある食堂で、私は今、リリアーヌ様とヴェルティル様と3人でランチを食べている─のだけど。
私が二度もヴェルティル様の前で体調を崩したからか、最近特にヴェルティル様からの餌付け─気遣いが増えた。ヴェルティル様に『あげる』と言われて断れる筈もなく、いつも貰ってしまっているけど……
ーリリアーヌ様からすれば、見ていて気持ちの良いものではないよねー
自分の恋人が、自分以外の女性─しかも、獣人に何かをあげたりしていたら、腹立たしく思っていてもおかしくない。私なんかのせいで、2人が仲違いするなんて事は……
「絶対駄目だ!」
「「何が?」」
リリアーヌ様とヴェルティル様が、同じような顔をして私を見ている。並んでいる2人を見ると、やっぱりお似合いだな─と思う。
「何もありません。ただ、いつも気を遣っていただいて、ありがとうございます。もう大丈夫なので、気にしないで下さい」
ランチが終わると、学年の違う2人とは別れて、私は午後の授業を受ける為に教室へと向かった。
『もう大丈夫』とは言ったものの、本当は、あれから体調がイマイチな日が増えた。それはとても軽いもので、軽い頭痛や立ちくらみ、体が怠いと言った感じだ。
「クレイオンさん、ちょっと良いかしら?」
「はい…何でしょうか?」
教室への廊下を歩いていると、2人の令嬢に呼び止められた。制服のリボンのカラーが赤色だから3年生だと言う事が分かる。
「私達、リリアーヌ様とは仲良くしていただいているのだけど、リリアーヌ様が貴方に言わないから、私から言わせてもらうわね。貴方、最近ヴェルティル様と親しくし過ぎよ。ヴェルティル様が声を掛けてくれるのは、リリアーヌ様が貴方の事を気に掛けてくれているからであって、貴方に気を向けているからではないのよ」
「ヴェルティル様は誰にもでもお優しい方だから、貴方にも優しいだけだから、勘違いはしないように。リリアーヌ様は公爵令嬢で、もともと王太子様と婚約するのではないか─と言われていたのに、それよりもヴェルティル様を選んだ位の仲なんだから、その2人の邪魔などしない事ね」
“王太子よりも…ヴェルティル様を選んだ”
ーそれは、知らなかったー
「勿論です。私は……リリアーヌ様とヴェルティル様お2人が並んでいる姿に憧れているだけなので!これからは気を付けます!」
「あら、そうなの?それなら問題無いわね。兎に角、これからは気を付けなさい」
ツンとしたまま、その2人の令嬢は去って行った。
リリアーヌ様が、他人を使って態々忠告をするとは思えないから、あの2人が自分の意思で私に忠告をしに来たんだろう。傍から見れば、私がヴェルティル様に近過ぎるように見えるから。言われた通り、優しくされて調子にのっていたのかもしれない。
「気を付けないとね……」
聖女様の事があるから、必要以上に距離を空ける事は難しいかもしれないけど、それなりの距離を保たないとね…。
「駄目だ…やっぱり体が怠い……」
もともと重く感じた体が、更に重みを増したように息苦しくなってしまい、結局私は、そのまま早退する事にした。
そして、その夜から熱を出し、暫くの間学校を休む事となった。
******
「リュシー、大丈夫?」
『体が熱くて……』
「第二次成長期が早いのは、シロの影響かしら?普通なら3日程で治まるのだけど…何か欲しい物はある?何か口にできそう?」
ベッドで寝込んでいる私の側に付き添ってくれているのは、お母様だ。
『冷たい水が欲しい……』
「今すぐ持って来るから!」
バンッと大きな音を立てて扉を開けて出て行ったのは、二つ年上のクロエお姉様。
“第二次成長期”
獣人には、身体に変化が起こる成長が二度ある。
第一次成長期は、赤ちゃんから幼児になる頃に起こる。赤ちゃんの頃は獣の姿で過ごし、第一次成長期を迎えると共に人の姿へと変化できるようになる。
そして、第二次成長期は、成人となる時に起こる。平均的には20歳前後に起こるのだけど、何故か、私は16歳の今現在、その第二次成長期を迎える事となってしまったのだ。
この二つの成長期には、身体がガラリと変わってしまう為、高熱が出て数日は寝込む事になる。そして、ある意味弱っているせいで、人ではなく獣姿になってしまうのだ。だから、私も今、豹の姿でベッドに横たわっている。豹になるのも久し振りだ。学校に通い出してからは、ずっと人の姿をしていたから。
「リュシー、大丈夫か!?」
『……お兄様?』
これまたバンッと大きな音を立てて扉を開けて入って来たのは五つ年上のローランドお兄様。今日は、早番だったのか、まだ明るいうちに帰って来たようだ。
「お兄様!もっと静かにできないの!?リュシーの体に障るじゃない!」
「ああ!すまない!」
「クロエもローランドも落ち着きなさい」
そんな2人を窘めたのは、お母様だった。
「「すみません」」
相変わらずのお兄様とお姉様に、なんだかホッとします。
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