33 / 59
33 無効化
しおりを挟む
ー“白い探し物”とは、一体何だろう?ー
ユラに付いている護衛は、イーデン様がリューゴ商会で雇っている護衛だった。どうやら、シーフォールスにやって来てからは、その護衛と共に“白い探し物”を探していたそうだ。
「色々考えたんです。白い物は何なんだろう?って。生き物だろうと言う事は分かっていたんですけど……アラスター様に直接訊こうかと思ったけど、どうしても驚かせたくて。それで、色々調べてみたら、この世界には普通の動物以外にも、魔獣と呼ばれる生き物が居るって事を知って…」
この世界に魔獣が存在すると言う事は、この世界に来てからすぐに教えてもらってる筈だ。メグは既に知っていたのだから。どれ程ユラが不勉強なのかがよく分かる。
ー白色の生き物か……ー
生き物─普通の動物にとっての白は、色んな意味で大変だったりもする。種や住んでいる土地によって普通である白なら問題無いけど、白変種による白は、それだけで色々と狙われやすくなる。珍しいからペットに─なんてものはいい方で、毛皮目的で狩られたりもする。中には、幼獣の方が毛並みが綺麗で皮も柔らかいから─と、幼獣が狩られる事もある。
ヴェルティル様が、そう言う意味で手に入れたいとは思ってはいないだろうけど。嫌な予感しかないのは、ユラが関係しているからだ。
「この森の中に、その探し物かもしれないものが居るんです」
ユラが指し示したのは、王都から少し離れた場所にある森だった。王都にある森でありながら、奥の方は鬱蒼として暗くてよく見えない。それでも、嫌な感じはしないから穢れはないだろう。穢れが無いと言う事は、魔獣が出る訳でもないだろう。
「この森で、よく白い生き物が目撃されるそうなんです。とっても毛並みの綺麗な白い生き物が!」
「…そうなんだね」
こんな森に白色の生き物とは─白狼とか?白狼は、地域によっては神の遣い手とも呼ばれたりするから、もし白狼なら、ユラの手から守らなければならない。本当に…面倒事を持ち込む天才かもしれない。
「取り敢えず、中に行きましょう!」
ユラは意気揚々と森の中へと進んで行った。
******
「なかなか出て来ませんね」
「そうだね」
「…………」
森の中を歩き始めて1時間。白色の生き物どころか、小動物の一匹すら目にしていない。
「?」
それと、何故かずっと感じている違和感。その違和感が気になって仕方無い。
「この森全体に、目くらましのような魔法が掛かっているようだね。だから──」
「なるほど!だから、白色の生き物が居ないように見えてるんですね!?」
「その可能性はある。だから─」
「それなら任せて下さい!私、魔法を無効化にする魔道具を持ってるんです!」
「「は?」」
ー何でそんな高価な魔道具を持ってるの!?ー
「ユラ、何故そんな──今はそれは置いといて!ユラ、それを使っては──」
「無効化!!」
「「ユラ!!!!」」
その魔道具を使ってはいけない!──
と、ヴェルティル様が止めようするよりも前に、ユラが無効化の魔道具を発動させてしまった。
パンッ─と何かが弾けるような音と同時に鬱蒼とした森に光が溢れた。
ーヤバい!!ー
本当に色々とヤバい!国王のお膝元にある森全体に掛けられていた魔法と言う事は、国王が意図的に掛けた魔法である可能性が高い。その魔法を、他国の人間が解いてしまったのだ。それと─無効化の魔法と言う事は、私に掛けている魔法も解けると言う事だ。勿論、私に掛けている魔法は、私自身が番を認識できなくなる魔法だ。その魔法が解けてしまったら───
ドクンッ───
「─────っ!!」
爽やかなのに、甘さを含んだ香り。
その香りが、欲しくて欲しくて──この手を伸ばして、掴んで、捕らえて──捕らえたら────
ー二度と離さないー
「ユラ!今すぐその魔道具を停止させるんだ!でなければ、俺達は犯罪者になるかもしれない!」
「え?む…無理です!これは一度発動させると数時間は止まりません」
「──っ!」
ーしっかり…しろ!私!!ー
手を伸ばすな
その手を捕らえるな
彼は…私のモノではない
「ユラ、その魔道具を───クレイオン嬢?」
「──っ!!」
どうやら、私の異変に気付いたようだ。
「クレイオン嬢、大丈夫?顔色が……」
「だっ……いじょ…ぶなので……今はユラを……」
ーそれ以上、私に近付かないで!ー
「クレイオン嬢?」
「っ!!」
「クレイオン嬢!!」
私の方へと伸ばされたヴェルティル様の手から逃れる為に、私はその場から走り出した。
ーヴェルティル様から、離れないと!逃げないと!ー
「クレイオン嬢!」
「えっ!?ちょっ!アラスター様!?」
その場に留まっているユラと護衛を置いたまま走り出した私と、私を追ってくるヴェルティル様。
ーこのままでは…追い付かれる!ー
そして、暫く走り続けた後──
「クレイオン嬢!」
私は獣化して、更に走り続けてヴェルティル様から逃げ切った。
ユラに付いている護衛は、イーデン様がリューゴ商会で雇っている護衛だった。どうやら、シーフォールスにやって来てからは、その護衛と共に“白い探し物”を探していたそうだ。
「色々考えたんです。白い物は何なんだろう?って。生き物だろうと言う事は分かっていたんですけど……アラスター様に直接訊こうかと思ったけど、どうしても驚かせたくて。それで、色々調べてみたら、この世界には普通の動物以外にも、魔獣と呼ばれる生き物が居るって事を知って…」
この世界に魔獣が存在すると言う事は、この世界に来てからすぐに教えてもらってる筈だ。メグは既に知っていたのだから。どれ程ユラが不勉強なのかがよく分かる。
ー白色の生き物か……ー
生き物─普通の動物にとっての白は、色んな意味で大変だったりもする。種や住んでいる土地によって普通である白なら問題無いけど、白変種による白は、それだけで色々と狙われやすくなる。珍しいからペットに─なんてものはいい方で、毛皮目的で狩られたりもする。中には、幼獣の方が毛並みが綺麗で皮も柔らかいから─と、幼獣が狩られる事もある。
ヴェルティル様が、そう言う意味で手に入れたいとは思ってはいないだろうけど。嫌な予感しかないのは、ユラが関係しているからだ。
「この森の中に、その探し物かもしれないものが居るんです」
ユラが指し示したのは、王都から少し離れた場所にある森だった。王都にある森でありながら、奥の方は鬱蒼として暗くてよく見えない。それでも、嫌な感じはしないから穢れはないだろう。穢れが無いと言う事は、魔獣が出る訳でもないだろう。
「この森で、よく白い生き物が目撃されるそうなんです。とっても毛並みの綺麗な白い生き物が!」
「…そうなんだね」
こんな森に白色の生き物とは─白狼とか?白狼は、地域によっては神の遣い手とも呼ばれたりするから、もし白狼なら、ユラの手から守らなければならない。本当に…面倒事を持ち込む天才かもしれない。
「取り敢えず、中に行きましょう!」
ユラは意気揚々と森の中へと進んで行った。
******
「なかなか出て来ませんね」
「そうだね」
「…………」
森の中を歩き始めて1時間。白色の生き物どころか、小動物の一匹すら目にしていない。
「?」
それと、何故かずっと感じている違和感。その違和感が気になって仕方無い。
「この森全体に、目くらましのような魔法が掛かっているようだね。だから──」
「なるほど!だから、白色の生き物が居ないように見えてるんですね!?」
「その可能性はある。だから─」
「それなら任せて下さい!私、魔法を無効化にする魔道具を持ってるんです!」
「「は?」」
ー何でそんな高価な魔道具を持ってるの!?ー
「ユラ、何故そんな──今はそれは置いといて!ユラ、それを使っては──」
「無効化!!」
「「ユラ!!!!」」
その魔道具を使ってはいけない!──
と、ヴェルティル様が止めようするよりも前に、ユラが無効化の魔道具を発動させてしまった。
パンッ─と何かが弾けるような音と同時に鬱蒼とした森に光が溢れた。
ーヤバい!!ー
本当に色々とヤバい!国王のお膝元にある森全体に掛けられていた魔法と言う事は、国王が意図的に掛けた魔法である可能性が高い。その魔法を、他国の人間が解いてしまったのだ。それと─無効化の魔法と言う事は、私に掛けている魔法も解けると言う事だ。勿論、私に掛けている魔法は、私自身が番を認識できなくなる魔法だ。その魔法が解けてしまったら───
ドクンッ───
「─────っ!!」
爽やかなのに、甘さを含んだ香り。
その香りが、欲しくて欲しくて──この手を伸ばして、掴んで、捕らえて──捕らえたら────
ー二度と離さないー
「ユラ!今すぐその魔道具を停止させるんだ!でなければ、俺達は犯罪者になるかもしれない!」
「え?む…無理です!これは一度発動させると数時間は止まりません」
「──っ!」
ーしっかり…しろ!私!!ー
手を伸ばすな
その手を捕らえるな
彼は…私のモノではない
「ユラ、その魔道具を───クレイオン嬢?」
「──っ!!」
どうやら、私の異変に気付いたようだ。
「クレイオン嬢、大丈夫?顔色が……」
「だっ……いじょ…ぶなので……今はユラを……」
ーそれ以上、私に近付かないで!ー
「クレイオン嬢?」
「っ!!」
「クレイオン嬢!!」
私の方へと伸ばされたヴェルティル様の手から逃れる為に、私はその場から走り出した。
ーヴェルティル様から、離れないと!逃げないと!ー
「クレイオン嬢!」
「えっ!?ちょっ!アラスター様!?」
その場に留まっているユラと護衛を置いたまま走り出した私と、私を追ってくるヴェルティル様。
ーこのままでは…追い付かれる!ー
そして、暫く走り続けた後──
「クレイオン嬢!」
私は獣化して、更に走り続けてヴェルティル様から逃げ切った。
1,317
あなたにおすすめの小説
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】そう、番だったら別れなさい
堀 和三盆
恋愛
ラシーヌは狼獣人でライフェ侯爵家の一人娘。番である両親に憧れていて、番との婚姻を完全に諦めるまでは異性との交際は控えようと思っていた。
しかし、ある日を境に母親から異性との交際をしつこく勧められるようになり、仕方なく幼馴染で猫獣人のファンゲンに恋人のふりを頼むことに。彼の方にも事情があり、お互いの利害が一致したことから二人の嘘の交際が始まった。
そして二人が成長すると、なんと偽の恋人役を頼んだ幼馴染のファンゲンから番の気配を感じるようになり、幼馴染が大好きだったラシーヌは大喜び。早速母親に、
『お付き合いしている幼馴染のファンゲンが私の番かもしれない』――と報告するのだが。
「そう、番だったら別れなさい」
母親からの返答はラシーヌには受け入れ難いものだった。
お母様どうして!?
何で運命の番と別れなくてはいけないの!?
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる