消えた治癒士への執着は棄てて下さい

みん

文字の大きさ
43 / 45

43 光と溺愛

*ミツ視点*


私のお父様(深影みかげ)は黒妖犬で、お母様(菊花きくか)は3尾の妖狐で、双子の弟(こう)は妖犬で、私(みつ)は妖狐。

お父様の、お母様への溺愛ぶりは凄い──としか言いようがない。本来、狐は犬が天敵だけど、お父様はお母様が可愛すぎて仕方がないらしい。そんな2人を見ているからか、私も好きになった人と結婚したいなと思っていた。

ー溺愛は要らないけどー




「一度、手合わせしてもらえないか?」

と言ってきたのは、バズラスの第三王子ラドルファス様の側近で鷹獣人のアーニーさんだった。

「良いですよ」



アーニーさんとの手合わせは、楽しかった。
妖力がある分、私の方が実力は上だけど、アーニーさんもなかなかのものだった。

ーまぁ、最後には私がやり込めたけどー

それから、何故かアーニーさんが私に声をかけてくるようになり、気が付けば一緒に居る事が当たり前になっていた。
私の方が強いのに、アーニーさんが傍に居ると安心している自分がいる事に気が付くと、後は簡単だった。

「私、アーニーさんの事が好きなんだと思います。あ、好きです」
「え?」
「でも、色々と問題もあるんですよね……お父様とかお父様とかお父様とか……」
「あぁ……深影さんか…………」

そう。私を溺愛するお父様が最大の難所だけど、それ以外にも、異世界、異種族の問題もある──けど、その辺りは相談できる強い味方が居るから、大丈夫だと思っている。

「まぁ、その前に、アーニーさんの気持ちが私にあるかどうか──」
「俺もミツさんが好きなので、それは問題ないです!」

と、満面の笑顔を浮かべるアーニーさんは、可愛いなと思った事は、口には出さなかった。


そうして、リヴィ様に挨拶をしてから、アーニーさんと一緒に私の世界に戻り、お父様とお母様に、私達2人の事を報告しに行った。


「弱い男に光はやらない」

はい、お父様から予想通りの言葉をもらいましま。そのお父様の後ろで、お母様と晃が呆れた顔をしている事に気付いていないのは、お父様とアーニーさんだけ。

それから、アーニーさんがお父様に挑んでは叩きのめされる──を繰り返す日々。
そうして、10日ほど経った頃、ついにお母様がキレた。

「娘の幸せを本当に思っているならやめなさい!」

本気でキレたお母様は初めて見た。娘の私から見ても本当に怖かったけど、何故かお父様は嬉しそに笑っていた。
その上、主様からもお小言を喰らったようで、お父様もアーニーさんとの仲を認めてくれた。アーニーさんはボロボロで、暫くの間、左腕が使い物にならなくなってしまったけど、嬉しそうに笑っていた。

ー本当に、アーニーさんは可愛いー



「深影さん、相変わらずですね」

と言いながらやって来たのは、お母様の大切な者─志乃しの様だ。

「かなりヤられたな……大丈夫か?」

と、アーニーさんを心配しているのは、志乃様の旦那様のルーファス様。
この2人が、異世界結婚した2人だ。志乃様が召喚された先の世界に居たルーファス様。それから色々あって、最終的にはルーファス様が志乃様こっちの世界に来て結婚する事になった。

「深影さん、娘が好きになった相手を大事にしないと、娘に嫌われますよ?それとも、娘が信じて好きになった相手を信用できないとか?そんなわけ……ないですよね?」
「…………勿論だ」
「…………」

ニッコリ笑う志乃様。“母は強し”と言ったところかな?渋々返事をしたお父様の横で、微妙な顔をしているルーファス様は、お父様の気持ちも分かる──と言ったところだろう。ルーファス様もまた、娘のゆかり様を溺愛しているから。勿論、志乃様も溺愛している。

ー溺愛だらけだー

「志乃様、ありがとうございます」
「お礼なんて要らないわ。光が幸せになってくれたら良いわ」
「あの……これから色々と相談にのってもらっても良いですか?」
「勿論よ!ルーファスさんにも、いつでも相談してくれたら良いよ」
「ありがとうございます」

それから、お父様を慰める為に、お母様の姿を2日ほど見かける事ができなかったけど、その間、志乃様とルーファス様から色んな話を聞く事ができた。
おそらく、アーニーさんと結婚できれば、アーニーさんがこの世界に来る事になるだろうから、ルーファス様の話はありがたかった。


そうして、リヴィ様の元に戻れたのは、2週間後だった。




******


ルベール様に丸め込まれて、早々に結婚したリヴィ様。結婚前から溺愛が始まっていたけど、結婚してからは更に酷くなった──のは気のせいじゃない。

“溺愛は紙一重”

お母様と志乃様が口を揃えて言っていた。きっと、リヴィ様もそう思ってるいるはず。そのうち、「菊花さんお母様と話がしてみたい」と言われるかもしれない。




過剰な溺愛は要らないけど、愛し愛され仲の良い夫婦になれれば良いな──と思っている。


感想 9

あなたにおすすめの小説

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい〜long version

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。 *こちらは元の小説の途中に、エピソードを追加したものです。 文字数が倍になっています。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

夫と息子に捨てられたので、全部置いて出て行きます。明日から、タオルがなくても知りません。

夢窓(ゆめまど)
恋愛
夫と息子に裏切られ、すべてを奪われた女は、何も言わずに家を出た。 「どうせ戻ってくる」 そう思っていた男たちの生活は、あっけなく崩壊する。 食事も、金も、信用も失い、 やがて男は罪に落ち、息子は孤独の中で知る。 ――母がいた日常は、当たり前ではなかった。 後悔しても、もう遅い。

【完結】「まずい」と騒ぐだけの毒見役は不要だと追い出されましたが、隣国王子の食卓を守ったら手放してもらえなくなりました

にたまご
恋愛
「穢れた血の孤児が王族の食に触れるな」 七年間、王宮の毒見役として「まずい」と言い続けた少女は、ある日追い出された。 誰も知らなかった。彼女が「まずい」と言うたびに足していた調味料が、食事に混ぜられた毒を中和していたことを。 辿り着いた国境の村の宿屋で、フィーアは初めて自分の料理を作った。 毎日通い詰める無口な旅の商人は、体調が悪そうなのに、フィーアの料理だけは「美味い」と言ってくれて—— 彼の銀杯のワインを一口もらった時、フィーアの舌が反応した。 「……にがい」 ※短編完結/追放/ざまぁ/溺愛

婚約破棄された悪役令嬢ですが、面倒なので全部放置します

かきんとう
恋愛
 王都の大広間に、どよめきが広がった。  天井から吊るされた巨大なシャンデリアが、何百もの蝋燭の光を反射し、きらきらと輝いている。その光の中心に立つ私は、妙に他人事のような気分で、その場の空気を眺めていた。 「エレノア・フォン・リーベルト! 私は貴様との婚約をここに破棄する!」  高らかに宣言したのは、第一王子であり私の婚約者でもあったアルベルト殿下だった。  周囲の貴族たちが一斉に息を呑み、次の瞬間には小声のざわめきが連鎖のように広がっていく。  ――ああ、ついに来たのね。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。