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二度目の召喚
腹黒王太子
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*志乃達が去った後の、アレサンドルとルーファス*
「……ルーファス」
「分かっている」
「………ルーファス」
「………何だ……」
「お前の笑った顔、久し振りに見たな」
「……久し振りに笑ったからな」
そう言って、ルーファスはまた嬉しそうに笑う。
側近であり友でもあるルーファスは、4年前に笑う─微笑むのを止めた。
“微笑みの騎士”と言われ、どんな令嬢や令息相手にも常に笑顔で対応していた、ある意味優等生の騎士だった。
まぁ、そのせいで、余計にアレが調子に乗ってしまっていたのだが……
「ルーファス、分かっていると思うが、王城に着く迄に、そのだらしない顔を引き締めろよ?」
「あぁ、それは任せてくれ。この部屋を出ればちゃんと戻すし、王城では二度と無駄な笑顔を振り撒くつもりはない。喩え相手が誰であっても……」
“微笑みの騎士”が、今では“人形の騎士”だ。表情が殆ど変わらない。一体何を考えているのかサッパリ分からない。怒る事は無いが、笑う事もない。以前は、ルーファスの周りには性別関係なく人が沢山居たが、今では仲間である騎士しか居ない。その中でも心許している騎士の前でしか笑わないのだ。
ある意味、ルーファスの時間は、4年前から止まっていたのかもしれない。
それよりも──だ
「キッカ殿の言葉が本当なら、ウィステリア殿を召喚した─させたのは、アレで確定だな。」
キッカ殿の言う通り、薄々は気付いていた。ただ、証拠が無いのだ。理由だって分からない。いや、理由も何となく分かるような気もするが、それが理由なら、アレは本当に愚か者だ。魔導士1人の命を奪ったのだ。必ず報いは受けさせる。
せめてもの救いは、ウィステリア殿が無事だった事だろうか─いや、あれは無事のうちには入らないだろう。“愛し子”に手を出したのだ──
「そろそろ……やるか…………」
女神アイリーン様が目覚める前に、こちら側の意思を示す為にも、アレに対して何らかの処罰を下しておいた方が良いだろう。
「ルーファス、丁度良いタイミングだから、俺の所に戻って来い。」
「分かった。それは、今から─と言う事で良いのか?」
「そうだ、今からだ。帰城したら直ぐに国王陛下に報告しに行く。」
ーまたウィステリア殿に手を出される前にー
「あ、ルーファス、お前も……浮かれる気持ちは分からない訳ではないが……距離感を保って接しろよ?強引な事はするなよ?」
「──その辺の事は……馬車の中で反省した。」
ーあぁ、だから、馬車の中では静かだったのかー
どんな令嬢が来ても受け止めて、冷静に対応していたルーファスが、ウィステリア殿の前ではただの─素のルーファスになる。見ている俺としては面白いが、ある意味ウィステリア殿が気の毒に見えて仕方無い。
「ウィステリア殿は……また還ってしまうかもしれないが……1年位はここに居ると言うなら、俺は俺なりに、少しでも俺を見てもらえるように頑張ってみようと思う。それでも、彼女が元の世界に還ると言うなら──それはそれで、しっかりと受け入れて、彼女を送り出すよ………」
眉尻を下げて笑ってはいるが、その目は穏やかさをたたえている。
ルーファスの恋が叶うと良いな─と思うが、第一優先はウィステリア殿の幸せだ。彼女には、どこであろうとも幸せになって欲しい。
「ルーファスの恋がうまく行くと良いが──うまくいかなかった時は、私のとっておきのワインをご馳走するよ」
「それはそれは………有り難い話だな…」
2人で笑い合った後、待機させていた馬車に乗り、王城へと急ぎ帰った。
国王陛下にアマリソナ領で起こった事を報告した後、その日のうちにルーファスは私の元へ戻って来た。
そして、これから起こり得る事に関しては、王太子に一任してもらえた為、アレが行動を起こす前に─と色々と準備を整えた。
その翌日──
「アレサンドル、面会─お茶のお誘いが来たけど…どうする?」
デレクの質問に、壁際で控えているルーファスも反応する。
「勿論、喜んで受けるよ。“喜んで行く”と返事をしておいてくれ。」
「分かった。あ、そうそう、“ルーも一緒に”との事だそうだよ?」
肩を竦めながら言った後、デレクは王太子の執務室から出て行った。
王太子を誘ってはいるが、目的はルーファスだ。
ー本当に、執着心が強くて諦めの悪いヤツだなー
「ルーファス、お前も連れて行くからな。」
「“来るな”と言われても、付いて行きますよ。王太子殿下付きの近衛ですからね。」
「ははっ─そうだったな。」
ーさぁ、奪われる側の気持ちを…教えてやろうー
「……ルーファス」
「分かっている」
「………ルーファス」
「………何だ……」
「お前の笑った顔、久し振りに見たな」
「……久し振りに笑ったからな」
そう言って、ルーファスはまた嬉しそうに笑う。
側近であり友でもあるルーファスは、4年前に笑う─微笑むのを止めた。
“微笑みの騎士”と言われ、どんな令嬢や令息相手にも常に笑顔で対応していた、ある意味優等生の騎士だった。
まぁ、そのせいで、余計にアレが調子に乗ってしまっていたのだが……
「ルーファス、分かっていると思うが、王城に着く迄に、そのだらしない顔を引き締めろよ?」
「あぁ、それは任せてくれ。この部屋を出ればちゃんと戻すし、王城では二度と無駄な笑顔を振り撒くつもりはない。喩え相手が誰であっても……」
“微笑みの騎士”が、今では“人形の騎士”だ。表情が殆ど変わらない。一体何を考えているのかサッパリ分からない。怒る事は無いが、笑う事もない。以前は、ルーファスの周りには性別関係なく人が沢山居たが、今では仲間である騎士しか居ない。その中でも心許している騎士の前でしか笑わないのだ。
ある意味、ルーファスの時間は、4年前から止まっていたのかもしれない。
それよりも──だ
「キッカ殿の言葉が本当なら、ウィステリア殿を召喚した─させたのは、アレで確定だな。」
キッカ殿の言う通り、薄々は気付いていた。ただ、証拠が無いのだ。理由だって分からない。いや、理由も何となく分かるような気もするが、それが理由なら、アレは本当に愚か者だ。魔導士1人の命を奪ったのだ。必ず報いは受けさせる。
せめてもの救いは、ウィステリア殿が無事だった事だろうか─いや、あれは無事のうちには入らないだろう。“愛し子”に手を出したのだ──
「そろそろ……やるか…………」
女神アイリーン様が目覚める前に、こちら側の意思を示す為にも、アレに対して何らかの処罰を下しておいた方が良いだろう。
「ルーファス、丁度良いタイミングだから、俺の所に戻って来い。」
「分かった。それは、今から─と言う事で良いのか?」
「そうだ、今からだ。帰城したら直ぐに国王陛下に報告しに行く。」
ーまたウィステリア殿に手を出される前にー
「あ、ルーファス、お前も……浮かれる気持ちは分からない訳ではないが……距離感を保って接しろよ?強引な事はするなよ?」
「──その辺の事は……馬車の中で反省した。」
ーあぁ、だから、馬車の中では静かだったのかー
どんな令嬢が来ても受け止めて、冷静に対応していたルーファスが、ウィステリア殿の前ではただの─素のルーファスになる。見ている俺としては面白いが、ある意味ウィステリア殿が気の毒に見えて仕方無い。
「ウィステリア殿は……また還ってしまうかもしれないが……1年位はここに居ると言うなら、俺は俺なりに、少しでも俺を見てもらえるように頑張ってみようと思う。それでも、彼女が元の世界に還ると言うなら──それはそれで、しっかりと受け入れて、彼女を送り出すよ………」
眉尻を下げて笑ってはいるが、その目は穏やかさをたたえている。
ルーファスの恋が叶うと良いな─と思うが、第一優先はウィステリア殿の幸せだ。彼女には、どこであろうとも幸せになって欲しい。
「ルーファスの恋がうまく行くと良いが──うまくいかなかった時は、私のとっておきのワインをご馳走するよ」
「それはそれは………有り難い話だな…」
2人で笑い合った後、待機させていた馬車に乗り、王城へと急ぎ帰った。
国王陛下にアマリソナ領で起こった事を報告した後、その日のうちにルーファスは私の元へ戻って来た。
そして、これから起こり得る事に関しては、王太子に一任してもらえた為、アレが行動を起こす前に─と色々と準備を整えた。
その翌日──
「アレサンドル、面会─お茶のお誘いが来たけど…どうする?」
デレクの質問に、壁際で控えているルーファスも反応する。
「勿論、喜んで受けるよ。“喜んで行く”と返事をしておいてくれ。」
「分かった。あ、そうそう、“ルーも一緒に”との事だそうだよ?」
肩を竦めながら言った後、デレクは王太子の執務室から出て行った。
王太子を誘ってはいるが、目的はルーファスだ。
ー本当に、執着心が強くて諦めの悪いヤツだなー
「ルーファス、お前も連れて行くからな。」
「“来るな”と言われても、付いて行きますよ。王太子殿下付きの近衛ですからね。」
「ははっ─そうだったな。」
ーさぁ、奪われる側の気持ちを…教えてやろうー
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