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二度目の召喚
エメラルドとルーファス
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『───何で……ルー様は……ウィステリアなんかに…微笑むの?』
私達の目の前で、儚げに涙を流し出したエメラルド。
「「…………」」
私とルーファスさんの目の前で泣かれても、どうにもならないよ?なんて思う私は、嫌な奴なのかもしれない。泣いて許されると言うのなら、誰だって泣くだろう。
その前に、儚げに涙を流して庇護欲を掻き立てるような姿ではあるけど……私を蔑むような言葉を発した後だって事……気付いてないよね?きっと、エメラルドは私を蔑んでいると言う自覚がないんだろう。無自覚に、私を下に見ているんだ。
はぁ───と、ルーファスさんが溜め息を吐くと、それに反応するようにエメラルドの肩がビクッと揺れた。
「──“ウィステリアなんかに”か……今のでよく分かった。」
顔を上げたエメラルドは、未だにポロポロ泣きながらルーファスさんを見つめている。“ルーファスさんが助けてくれる”と思っているような目で─。
「もう一度言うが、“ルー”とは呼ばないでもらいたい。本来、名前呼びも許した覚えはない。」
ーまさかの、名前呼びを飛び越えての愛称呼びだったの!?ー
「でも、シアもそう呼んでいたでしょう?だから─」
「アリシア様は王女だったから、そう呼ばれても否とは言えない。でも、仲の良い王女がそう呼んでいるからと言って、エメラルド殿も“ルー”と呼んでも良いと言う理由にはならない──と、何度か伝えた筈だけどね。」
ー伝えられていたのにも関わらずの愛称呼び。凄いな…余程自分に自信?があるのか、ただの───馬鹿なのかー
「バーミリオン殿とアズール殿が、エメラルド殿や騎士達に何も言わなくなったのは、ウィステリア殿を守る為だったが…エメラルド殿が何もしなかったのは、ウィステリア殿を下に見ていたから。“女魔導士”と、蔑ろにされていたウィステリア殿を見ていて……愉しかったのか?それとも……優越感を覚えていたのか?」
エメラルドがパチパチと大きく瞬きをした後、ピタッと涙が止まった。
ー何処かに、涙のスイッチがあるんだろうか?ー
「エメラルド殿の周りは…エメラルド殿にとって都合の良い者達しか居なかったから、誰も注意してくれる者は居なかっただろう?アズール殿は、何度か注意を促してはいたが、聖女2人が態度を改めず、それが更に悪化させた。それを、エメラルド殿は理解していないのだな。」
「私は…ウィステリアを…女魔導士だからと蔑んだりなんて………」
「─してないとは言わせない。まぁ…エメラルド殿が理解していようがしてまいが、この際もう関係ないな。俺がどうしてウィステリア殿に笑うのか──」
「え?」
ルーファスさんは一度口を噤むと、私の手にソッと手を添えて、今迄の冷たい目はどこへやら。フワリと優しく私に向かって微笑んだかと思うと
「俺は、ウィステリア殿を目にするだけで、自然と笑顔になる─と言うだけだ」
ーぐは────っー
勘弁して下さい!不意打ちも止めて下さい!至近距離での砂糖口撃と顔面攻撃も止めて下さい!
言葉にできない分、ギッ─と睨んでみると「可愛らしい反応だな」と、更に笑われただけだった。
ー何が可愛かったんだ!?眼科に行こうか!?ー
言葉が乱れてしまったのは仕方無い!
「何で───っ!」
ーはっ!エメラルドが居た事、忘れかけてたよ!ー
軽く手を動かしてルーファスさんの手を離して──くれないだと!?
1人焦る私と、そんな私を楽しそうに見ているルーファスさんに、エメラルドは声を張り上げた。
「何で、ウィステリアなの!?私の方が先に好きになったのに!私は聖女として頑張ったのに、どうして私が怒られなきゃいけないの!?だって、シアと騎士達が言っていたんだもの。女魔導士なんて要らないって!」
「なるほど、それが、エメラルド殿の本音か…」
ここでようやく私から手を離して、また改めてエメラルドへと冷たい視線を向けるルーファスさん。私に向けられているわけではないのに、自然と背筋が伸びてしまう。
「好きになるのに順番は関係無い。あったとしても、俺は他人を見下して笑っているような人を好きになったりはしない。嫌悪感しかない。聖女として頑張った事は知っているし、それは有り難いとも思うが、それは、バーミリオン殿やアズール殿は勿論の事、ウィステリア殿だって同じだ。女神アイリーン様によって選ばれてしまっただけで、そこに優劣は無い。聖女だから特別でも無い。勝手に優劣を付けていたのは……アリシア様とエメラルド殿と、その周りの人間達だけだ。」
「でも、穢れを浄化できるのは聖女だけでしょう!?」
「そう、聖女だけだ。でも、アズール殿は今でも国中を駆け回って魔獣を狩っているし、バーミリオン殿は城付きの魔導士でありながら、相手の身分関係無く助けを求められればそれらに応じて動いている。それで…エメラルド殿は?旅が終わってからのこの4年の間、何をしていた?」
「私は……神殿で………」
「そう。エメラルド殿は、1日数名限定で貴族相手に祈りを捧げていた。平民には……見向きもせずにね。」
私達の目の前で、儚げに涙を流し出したエメラルド。
「「…………」」
私とルーファスさんの目の前で泣かれても、どうにもならないよ?なんて思う私は、嫌な奴なのかもしれない。泣いて許されると言うのなら、誰だって泣くだろう。
その前に、儚げに涙を流して庇護欲を掻き立てるような姿ではあるけど……私を蔑むような言葉を発した後だって事……気付いてないよね?きっと、エメラルドは私を蔑んでいると言う自覚がないんだろう。無自覚に、私を下に見ているんだ。
はぁ───と、ルーファスさんが溜め息を吐くと、それに反応するようにエメラルドの肩がビクッと揺れた。
「──“ウィステリアなんかに”か……今のでよく分かった。」
顔を上げたエメラルドは、未だにポロポロ泣きながらルーファスさんを見つめている。“ルーファスさんが助けてくれる”と思っているような目で─。
「もう一度言うが、“ルー”とは呼ばないでもらいたい。本来、名前呼びも許した覚えはない。」
ーまさかの、名前呼びを飛び越えての愛称呼びだったの!?ー
「でも、シアもそう呼んでいたでしょう?だから─」
「アリシア様は王女だったから、そう呼ばれても否とは言えない。でも、仲の良い王女がそう呼んでいるからと言って、エメラルド殿も“ルー”と呼んでも良いと言う理由にはならない──と、何度か伝えた筈だけどね。」
ー伝えられていたのにも関わらずの愛称呼び。凄いな…余程自分に自信?があるのか、ただの───馬鹿なのかー
「バーミリオン殿とアズール殿が、エメラルド殿や騎士達に何も言わなくなったのは、ウィステリア殿を守る為だったが…エメラルド殿が何もしなかったのは、ウィステリア殿を下に見ていたから。“女魔導士”と、蔑ろにされていたウィステリア殿を見ていて……愉しかったのか?それとも……優越感を覚えていたのか?」
エメラルドがパチパチと大きく瞬きをした後、ピタッと涙が止まった。
ー何処かに、涙のスイッチがあるんだろうか?ー
「エメラルド殿の周りは…エメラルド殿にとって都合の良い者達しか居なかったから、誰も注意してくれる者は居なかっただろう?アズール殿は、何度か注意を促してはいたが、聖女2人が態度を改めず、それが更に悪化させた。それを、エメラルド殿は理解していないのだな。」
「私は…ウィステリアを…女魔導士だからと蔑んだりなんて………」
「─してないとは言わせない。まぁ…エメラルド殿が理解していようがしてまいが、この際もう関係ないな。俺がどうしてウィステリア殿に笑うのか──」
「え?」
ルーファスさんは一度口を噤むと、私の手にソッと手を添えて、今迄の冷たい目はどこへやら。フワリと優しく私に向かって微笑んだかと思うと
「俺は、ウィステリア殿を目にするだけで、自然と笑顔になる─と言うだけだ」
ーぐは────っー
勘弁して下さい!不意打ちも止めて下さい!至近距離での砂糖口撃と顔面攻撃も止めて下さい!
言葉にできない分、ギッ─と睨んでみると「可愛らしい反応だな」と、更に笑われただけだった。
ー何が可愛かったんだ!?眼科に行こうか!?ー
言葉が乱れてしまったのは仕方無い!
「何で───っ!」
ーはっ!エメラルドが居た事、忘れかけてたよ!ー
軽く手を動かしてルーファスさんの手を離して──くれないだと!?
1人焦る私と、そんな私を楽しそうに見ているルーファスさんに、エメラルドは声を張り上げた。
「何で、ウィステリアなの!?私の方が先に好きになったのに!私は聖女として頑張ったのに、どうして私が怒られなきゃいけないの!?だって、シアと騎士達が言っていたんだもの。女魔導士なんて要らないって!」
「なるほど、それが、エメラルド殿の本音か…」
ここでようやく私から手を離して、また改めてエメラルドへと冷たい視線を向けるルーファスさん。私に向けられているわけではないのに、自然と背筋が伸びてしまう。
「好きになるのに順番は関係無い。あったとしても、俺は他人を見下して笑っているような人を好きになったりはしない。嫌悪感しかない。聖女として頑張った事は知っているし、それは有り難いとも思うが、それは、バーミリオン殿やアズール殿は勿論の事、ウィステリア殿だって同じだ。女神アイリーン様によって選ばれてしまっただけで、そこに優劣は無い。聖女だから特別でも無い。勝手に優劣を付けていたのは……アリシア様とエメラルド殿と、その周りの人間達だけだ。」
「でも、穢れを浄化できるのは聖女だけでしょう!?」
「そう、聖女だけだ。でも、アズール殿は今でも国中を駆け回って魔獣を狩っているし、バーミリオン殿は城付きの魔導士でありながら、相手の身分関係無く助けを求められればそれらに応じて動いている。それで…エメラルド殿は?旅が終わってからのこの4年の間、何をしていた?」
「私は……神殿で………」
「そう。エメラルド殿は、1日数名限定で貴族相手に祈りを捧げていた。平民には……見向きもせずにね。」
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