魔力無しの黒色持ちの私だけど、(色んな意味で)きっちりお返しさせていただきます。

みん

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1 不吉な色

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『**も**と同じよ』
『**が私達を忘れただけ…』



『行かないで下さい…***』
『………**、**ごめんなさい……』

白色と金色が揺らめいている。それは、**には無い色であり、憧れの色でもあった。



『お前達だけは────』



それが、最期だった──








!いつまで寝ているの!?」
「──っ!ごめんなさい!」
のくせにゆっくり寝るなんて。さっさと起きて働きなさい!」
「はい!」

そう言ってバンッと大きな音を立てて扉を閉めて出て行ったのは、この邸の侍女長のメレーヌさん。
私はベッドから出て、急いで服を着替えて部屋から飛び出した。

ー懐かしい夢を見た気がするけど……ー

フルフルと頭を振る。

「今日も朝食は無し…だよね……」

それも慣れた。朝食抜きはよくある事だから。それに、午前中の仕事を済ませれば昼食は必ず食べられるから。

「うん。今日も1日頑張ろう」

そう自分に言い聞かせて、キュッと手を握りしめてから、私は急いで裏庭へと向かった。
私の午前中の仕事は洗濯だ。

ここは、ウェザリア王国のウェント伯爵家。
私は一応………そのウェント伯爵家の次女となっているけど、実際のところは使用人と言ったところだ。朝は早く起きて洗濯をする。殆どが1人でしないといけないから、午前中は洗濯で終わる。午後からは、邸や庭園の掃除をさせられる事もあれば、一応伯爵令嬢だから勉強をさせられる事もある。ただ、勉強も間違ったりすればをするから、勉強よりも掃除の方がマシだと思ってしまう。

「あら、アンバーじゃない」 
「……おはよう…ございます」

裏庭に向かう途中で、私に声を掛けて来たのはフランシーヌ。ウェント伯爵家の長女であり私の姉だ。金色に煌めく綺麗な髪にピンク色の瞳で、とても綺麗な顔立ちをしている。

「相変わらず暗い顔だな」

そう言ってニヤニヤと笑っているのはエイダン。ウェント伯爵家の長男で私の兄。この兄もまた、金色に水色の瞳でとても綺麗な顔立ちをしている。
そんな2人とは対象的に私は──

「長い黒色の髪なんて…見てるだけで気分が下がるわ。早く私達の視界から消えてくれる?」
「……失礼しました………」

ーわざわざ呼び止めたのはフランシーヌなのにー

私は軽く頭を下げてからその場を後にした。



そう、私は──真っ黒な髪に琥珀色の瞳で、兄と姉どころか父と母とも似ていない。私だけが違う色持ちなのだ。

ー血が繋がっていないから当然よねー



私が5歳頃の時、記憶を失った状態で倒れているところを、ウェント伯爵に拾われたのだ。この国で、不吉とされている黒色の髪の私を。


この国の神話にもなっている


母となる神様が、自身の数人の子達それぞれに世界を創らせた。そして、その子達もまたそれぞれの子達に国を創らせた。そのうちの一つがこの世界でありこの国であるウェザリア王国だ。そして、ウェザリア王国の他にも数ヶ国の神様となったのがアンブロンズ神様。その神様の元、この国は創られ平和な時間を過ごしていたが、そこへ、ある時、黒色の魔女が現れた。その黒色の魔女は強い魔力を持っていて、人々の助けとなるよう動いていたのだが、ある日、彼女は豹変して人々を虐げ始め、最後にはアンブロンズ神に手を掛けた。そして、アンブロンズ神は姿を隠してしまい、この世界に暫くの間混沌とした時代があったとされている。
最終的には、現在の国王の始祖となる騎士が魔女を打ち倒して、聖女がアンブロンズ神を目覚めさせ、またこの世界に平和が訪れた。

そんな神話があり、黒色は不吉な色とされている。そもそも、この国で黒色持ちは滅多に生まれない事もあり、極希に生まれる黒色持ちは更に忌避される存在となり迫害を受ける対象となった。




『黒色持ちだからと言って、その者全てが悪ではない』


と、黒色持ちに対する偏見を無くそうとする者が国王となったのは、200年程前の話だ。それは今現在の国王にも引き継がれているけど、そう簡単に人々の意識は変えられない。その為、黒色持ちが生まれると、良くてその子は隠され、最悪の場合捨てられたり、生まれなかった事にされたりもしていた。
それでは駄目だ─と、今から100年程前に出された政策が、“黒色持ち保護育成の為の補助金制度”だった。

黒色持ちが生まれ、国に申請すれば、黒色持ちを育てる為に国がお金を補助してくれるもので、それは実子は勿論の事、黒色持ちだと捨てられた子を保護して養子にした場合にも適応される事になった。

そう。それが、私なのだ。

ウェント伯爵が、不吉とされる黒色持ちの私を保護したのは、その補助金目当てだったのだ。




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