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20 現れた本性
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「お呼びでしょうか?」
「ようやくのお出ましだな。私からの再三の呼び出しに全く応じなかったから、私が態々ここに来る事になったんだ」
「申し訳ありません。ですが、あの手紙の内容での呼び出しでは、登城する必要は無いと判断致しました─と、お返事をさせていただいた筈ですが?」
「まぁ…公爵令嬢ともあろうベレニス様が、王太子様に反抗なさるとは……」
「やっぱり、ベレニス様は傲慢な方なんだな」
「これなら、モモカ様を虐めていたと言うのも真実なのでは?」
王太子からの呼び出しに応えなかったベレニス様。本来ならとっくに、不敬罪などで罰せられていてもおかしくないのに、何も罰せられていないと言うなら、不敬罪に値しないと言う事。それに、リッカルド様も何も言わないのだから、ベレニス様は間違っていないのだろう。
「本当に、ベレニスは生意気になったのだな。なら、この場でハッキリ伝えさせてもう。私は、ベレニスとの婚約を破棄して、新たにモモカを婚約者にする事にした。この事は、国王両陛下の承認済みで、これはもう覆る事はない」
王太子がそう断言すると、この場に居る殆どの生徒達から歓声が上がった。ただ、私達を含め少数ではあるが、少し困惑している生徒も居る。そりゃあ、困惑するのも分かる。だって、王太子とベレニス様は婚約なんてしていないのだから。それを知らなかった王太子にも驚きだ。
「兄上が、ここ迄馬鹿だとは思わなかった…」
「ウィル……」
一番ショックを受けているのはリッカルド様。そのリッカルド様に同情している─ように見せ掛けて愉快そうな目をしているのはウィル様だ。
「もう、ここ迄来たら、リッカルドが立太子するしかないな?きっとアレは……廃嫡だろうから」
ー廃嫡……は、聞かなかった事にしようー
「ベレニスがモモカにして来た事は許せるものではないが、ここで素直に謝罪すれば、婚約破棄だけで済ましてやろう」
「失礼ですが、私がモモカに何をして、何故謝罪をしなければならないのでしょうか?」
「ベレニスが、モモカに嫉妬して色々苛めていると報告を受けているから、今更しらばっくれても──」
「私が何故、モモカに嫉妬するのでしょうか?私は、べつに聖女の力が欲しいと思った事は一度もありません」
「聖女の力ではなく、婚約者の私をモモカに取られる事に嫉妬して──」
「そんな事に嫉妬なんてしませんわ!」
「は?そんな事だと!?」
「ハッキリと、もう一度申し上げさせていただきますが、もともと私は王太子様の婚約者ではありません」
「──は?」
「兄上は……本当に知らなかったのか……」
「ありゃ、重症だな……くっ……」
勿論、リッカルド様は更にショックを受け、ウィル様は笑いを堪えている。そして、会場に居る生徒達は動揺している。
「それに、私は王太子妃にも王太子様本人にも全く……全く興味はありません。ですから、私がモモカに嫉妬する事も苛める事もありません。私の事は気にぜずにモモカと2人で婚約なり結婚なりして下さい。おめでとうございます」
最後にニッコリ微笑むベレニス様は、何とも清々しい顔をしている。ようやく、言いたい事が言えたからだろう。
そんなベレニス様とは対象的に、困惑しているのは王太子様。モモカに至っては──
「え?婚約者ではない……なら……何故モモカを?モモカ、本当にベレニスに………」
「………本当に……馬鹿で情けない男ね………」
「え?モモカ?」
いつも笑顔のモモカとは一転して、スッと表情を消したモモカに違和感を覚える。
「女1人も処理できないなんて…まぁ、ベレニスは違うようだから良いけど……」
「ベレニスは違う……とは?」
「私が処理したかったのは……コユキとアンバーだったみたいね」
「「え?」」
ーコユキと私?ー
モモカがスッと片手を挙げると、会場に居る生徒達がバタバタと倒れだした。
「えっ!?」
何が起こっているのか分からない。
「あら…予想外ね。ウィルも残るとは…」
生徒達がバタバタと倒れて行く中、倒れずに残ったのは、私とウィル様の2人だけだった。
「お前…人間ではないのね?」
「え?」
「そう言うモモカも、人間ではないのか?」
そう言いながら、ウィル様が私を護るように、私の前に立つ。
「さっきまでは何も感じなかったけど、今のモモカからは異様な力を感じる。これは…魔力ではないだろう?」
「ふふっ…そうね。魔力ではないわ。この力は、この世界には無いモノよ」
ーあぁ……何故、今迄気付かなかったんだろうー
私は、この力を覚えている。
この世界には無いモノで、私にとっては懐かしいモノでもある。
「私が用があるのはコユキとアンバーだけだから、アンバーを渡してくれれば、ウィルは見逃してあげるわ」
「断ると言ったら?」
「お前も排除するだけよ」
そう言うと、モモカから一気にその力─妖力が溢れ出した。
「ようやくのお出ましだな。私からの再三の呼び出しに全く応じなかったから、私が態々ここに来る事になったんだ」
「申し訳ありません。ですが、あの手紙の内容での呼び出しでは、登城する必要は無いと判断致しました─と、お返事をさせていただいた筈ですが?」
「まぁ…公爵令嬢ともあろうベレニス様が、王太子様に反抗なさるとは……」
「やっぱり、ベレニス様は傲慢な方なんだな」
「これなら、モモカ様を虐めていたと言うのも真実なのでは?」
王太子からの呼び出しに応えなかったベレニス様。本来ならとっくに、不敬罪などで罰せられていてもおかしくないのに、何も罰せられていないと言うなら、不敬罪に値しないと言う事。それに、リッカルド様も何も言わないのだから、ベレニス様は間違っていないのだろう。
「本当に、ベレニスは生意気になったのだな。なら、この場でハッキリ伝えさせてもう。私は、ベレニスとの婚約を破棄して、新たにモモカを婚約者にする事にした。この事は、国王両陛下の承認済みで、これはもう覆る事はない」
王太子がそう断言すると、この場に居る殆どの生徒達から歓声が上がった。ただ、私達を含め少数ではあるが、少し困惑している生徒も居る。そりゃあ、困惑するのも分かる。だって、王太子とベレニス様は婚約なんてしていないのだから。それを知らなかった王太子にも驚きだ。
「兄上が、ここ迄馬鹿だとは思わなかった…」
「ウィル……」
一番ショックを受けているのはリッカルド様。そのリッカルド様に同情している─ように見せ掛けて愉快そうな目をしているのはウィル様だ。
「もう、ここ迄来たら、リッカルドが立太子するしかないな?きっとアレは……廃嫡だろうから」
ー廃嫡……は、聞かなかった事にしようー
「ベレニスがモモカにして来た事は許せるものではないが、ここで素直に謝罪すれば、婚約破棄だけで済ましてやろう」
「失礼ですが、私がモモカに何をして、何故謝罪をしなければならないのでしょうか?」
「ベレニスが、モモカに嫉妬して色々苛めていると報告を受けているから、今更しらばっくれても──」
「私が何故、モモカに嫉妬するのでしょうか?私は、べつに聖女の力が欲しいと思った事は一度もありません」
「聖女の力ではなく、婚約者の私をモモカに取られる事に嫉妬して──」
「そんな事に嫉妬なんてしませんわ!」
「は?そんな事だと!?」
「ハッキリと、もう一度申し上げさせていただきますが、もともと私は王太子様の婚約者ではありません」
「──は?」
「兄上は……本当に知らなかったのか……」
「ありゃ、重症だな……くっ……」
勿論、リッカルド様は更にショックを受け、ウィル様は笑いを堪えている。そして、会場に居る生徒達は動揺している。
「それに、私は王太子妃にも王太子様本人にも全く……全く興味はありません。ですから、私がモモカに嫉妬する事も苛める事もありません。私の事は気にぜずにモモカと2人で婚約なり結婚なりして下さい。おめでとうございます」
最後にニッコリ微笑むベレニス様は、何とも清々しい顔をしている。ようやく、言いたい事が言えたからだろう。
そんなベレニス様とは対象的に、困惑しているのは王太子様。モモカに至っては──
「え?婚約者ではない……なら……何故モモカを?モモカ、本当にベレニスに………」
「………本当に……馬鹿で情けない男ね………」
「え?モモカ?」
いつも笑顔のモモカとは一転して、スッと表情を消したモモカに違和感を覚える。
「女1人も処理できないなんて…まぁ、ベレニスは違うようだから良いけど……」
「ベレニスは違う……とは?」
「私が処理したかったのは……コユキとアンバーだったみたいね」
「「え?」」
ーコユキと私?ー
モモカがスッと片手を挙げると、会場に居る生徒達がバタバタと倒れだした。
「えっ!?」
何が起こっているのか分からない。
「あら…予想外ね。ウィルも残るとは…」
生徒達がバタバタと倒れて行く中、倒れずに残ったのは、私とウィル様の2人だけだった。
「お前…人間ではないのね?」
「え?」
「そう言うモモカも、人間ではないのか?」
そう言いながら、ウィル様が私を護るように、私の前に立つ。
「さっきまでは何も感じなかったけど、今のモモカからは異様な力を感じる。これは…魔力ではないだろう?」
「ふふっ…そうね。魔力ではないわ。この力は、この世界には無いモノよ」
ーあぁ……何故、今迄気付かなかったんだろうー
私は、この力を覚えている。
この世界には無いモノで、私にとっては懐かしいモノでもある。
「私が用があるのはコユキとアンバーだけだから、アンバーを渡してくれれば、ウィルは見逃してあげるわ」
「断ると言ったら?」
「お前も排除するだけよ」
そう言うと、モモカから一気にその力─妖力が溢れ出した。
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