裏切られた聖女は、捨てられた悪役令嬢を拾いました。それが、何か?

みん

文字の大きさ
44 / 58

44 その後

しおりを挟む
「今すぐ会いには無理だけど、手紙ならお兄さんに届ける事はできるわよ?」
「本当ですか!?」

私には頼もしい風の妖精トゥールが居るから。トゥールに手紙を託せば、誰の邪魔をされる事もなく飛ばした相手に届けてくれる。正しく言うと、飛ばした相手にしか受け取る事ができないのだ。

「うん。だから、いつでも良いから、手紙を書いたら私に言ってくれたら良いわ」
「チカ様、ありがとうございます」

「それじゃあ、これからどうするか…だな」
「その辺りの事は、私に任せてもらえませんか?」
「チカに?でも…」
「他国の王が介入して、後々何か言われたりするのも厄介じゃないですか?それに、私もちょっとキレてるんでオールデンさんに話をつけてもらいます」

1000歩譲って私の事は我慢したとしても、ジョセリンさんは完璧な被害者だ。これ以上ジョセリンさんが嫌な目に遭わないように、創世神オールデンさんを使っても罰は当たらない筈。

「オールデン神に話をつけるとか……チカは恐ろしいな…」
「流石はチカ様。何度も言いますけど、正真正銘本物の聖女様は言う事が違い過ぎますね。擬きは“私は聖女よ!”としか言ってませんでしたからね。擬きは一体この世界に何をしに来たんでしょうね?あぁ!そうか、態々年齢を詐称して勉強をしに来てたんですね。擬きは留学生だったんですね。なるほど─」

ネッドさんは何処にいてもどんな時でもネッドさんらしい。私の肩に座っているアイルも笑っている。

「それじゃあ、それはチカにお願いするとして、ジョセリン嬢は、これからもミスリアルでチカと一緒に暮らして行くと言うと事で良いか?」
「チカ様が許してくれるなら」
「許すも何も、一緒に暮らそうって誘ったのは私だからね。ただ……これからも一緒にと言うなら、様呼びは止めてくれる?私平民だし、何となく距離があるような気がして嫌なのよ」
「分かりました………チカ。呼び捨ては無理ですから」
「ふふっ。それで良いわ。何なら、ネッドさんも様呼びは───」
「え?それは無理ですから。私如きがチカ様を“さん”呼びなど……どんだけ傲岸不遜なんですか。私とチカ様の間には、間があって良いんです。寧ろ間がなければ私は呼吸の仕方も分からなくなりますから。チカ様は私を殺す気ですか?そりゃあチカ様に殺されるなら本望かもしれませんが──」
「ネッドさん、様呼びで良いです。死なないで下さい。これからも宜しくお願いしますね」
「──っ!!!!」

コクコクと無言で頷くネッドさんに、ジョセリンさんはクスクスと笑った。








******
(リリ視点)


「────マテウス!!」

目の前に居たマテウスに助けを求めるように手を伸ばしたけど、その手がマテウスを捕らえる事もなく、私は黒い光に全身を包み込まれた。
その懐かしい感覚にギュッと目を閉じて、次に目を開けた時には、真っ白な空間に独りポツンと立っていた。私が召喚される時にも訪れた空間と同じ所だろう。


『久し振りだな』

そう言って姿を現したのは、の中性的な顔をした神様のオールデン様だ。

「聖女失格って……私、まだこれからだったんですよ!?どうして──」
『ちゃんと伝えた筈だが…聖女としての器が不安定故、聖女としての訓練はキッチリするようにと。でなければ、器が堪えきれず聖女失格となると。其方は…私の世界で何をした?』
「仕方無いじゃない。学校に通いながら訓練なんて…」
20歳ハタチを超えた者が学校に通う意味を教えてくれるか?年下の王子を翻弄するのは愉しかったか?弱者を虐めるのも愉しかったか?1人の女の子を蹴落して………愉しかったか?』
「それ……は………」
『私は、全く面白くなかったがな………』

目の前に居るオールデン様は微笑んではいるが、目だけは全く笑っておらず、その視線を向けられているだけで体が震えだす。

『それでも……が出切ったのは確か。ギリギリ私の予想範囲内だ。それ故に、其方の行いには目を瞑ろう。それで、其方はこれからどうする?元の世界へ…小武こたけわたるの元に還るか?』
「それだけは──!」



ー日本にだけは還りたくないー



先輩から完璧に航さんを奪った数日後に、妊娠が嘘だとバレた。

「お前、田淵と寝たんだろう?」
「な…何よ、何でそんな……」
「昨日、田淵とお前がホテルに入って行くのを見た奴がいたんだ。それで、妊娠も嘘なんだろ?」
「…そうですよ!嘘よ!だから何?妊娠してなくても、航さんが先輩を裏切って私と何度も寝たのは本当の事じゃない!」
「妊娠なんてしてなかったら、お前となんて結婚しない!」
「なっ!私だって、航さんなんかと結婚したくないわ!田淵さんの方が航さんより上だし、将来有望だもの!私は田淵さんを選ぶわ。でも、航さんは先輩の元には戻れませんよね?可哀想……ふふっ」
「って言うか、1回寝たぐらいで恋人面するの止めてくれるかな?」
「田淵さん!?」

航さんと2人きりだと思っていたところに、田淵さんがやって来た。

「妊娠したって嘘ついて他人の婚約者奪っておいて、更に違う男に手を出すような女、こっちから願い下げだから。選ぶわって……ホント、傲慢な女だね?」
「─っ!失礼します!」

全て聞かれていたと知って、私は急いでその場から走り出して──





気が付けば、この真っ白な空間に立たされていた。



しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜

見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。 ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。 想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます

あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。 腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。 お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。 うんうんと頭を悩ませた結果、 この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。 聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。 だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。 早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ――――――――――――――――――――――――― ※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。 ※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。 ※基本21時更新(50話完結)

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです

サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――

そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。 朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。 そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。 「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」 「なっ……正気ですか?」 「正気ですよ」 最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。 こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

処理中です...