33 / 42
33 私、本物の猫に…?
かつて、アーサーは猫の事を天使だと例えた。
私も以前はそう思っていた。
今は違う。
猫役をするために実際に猫と接してみて、考えが変わった。
私の場合は、猫は天使にも悪魔にも見える事がある。
そして、奇妙な事に――天使のときも悪魔のときも、かわいいのだ。
猫は、いつだって気ままに生を謳歌している。
だからこそ、かわいくて愛おしく見えるのかもしれない。
思えば、私が王宮に来てから一番達成感があったのは、傷ついた猫を助けられた時かもしれない。
あの時は自分自身の考えに従って行動したからだ。
これから何かに迷う場合は――天使でも悪魔でもなく、猫に従いたい。
そうすれば、どんな選択をしても胸を張って進めるようになるだろう。
「……、はっ」
目を開けた私は、見慣れない光景に瞬きをした。
私は洞窟の中にいる。地面にはタオルが敷かれていて、私はそこに寝かされていたらしい。
夢を見ていた……、というより、意識が混濁していたんだろうか。
なんだか、胡乱な事を考えていたような気がする……。
ここは……私がクロードを回復させるために、何度も通った場所だ。
なのに見慣れないと感じたのは、今の私の身体が、かつてのものとは違うから。
具体的には、私の身体はとても小さくなって……。
「目を覚ましたか」
視界にゆらりと揺れる豊かな尻尾が目に入った。のそりと私を覗き込むのは、青い目に黒と白の長毛の猫だ。
クロードだ。
よく見知った相手だが――この視点になってわかった事がある。
クロードは、大きい。
どっしりしていて、抱きしめられたら何処までも沈んでいきそうだ。
そんなクロードがそっと私の顔に近づいてきて、ざらついた舌で私の毛皮を舐めた。
…………。
毛皮?
舌の感触に違和感があって、私は自分自身の身体を見る。
私の身体には、ミルクティー色の毛が生えていた。手にはピンク色の肉球が、下半身には太い尻尾が付いている。そんな私の全身をクロードは丁寧に舐めていく。
これは……、猫のグルーミングだ。
どういう訳だか、私は――猫になっている。
ぺろぺろと舐められながら、私は過去にクロードが言っていた事を思い出していた。
獣人は眷属を作る事が出来る。
あの時のクロードはその気は無いと言っていたが――、王宮での私の様子を見て、改めて獣人に引き込もうとしてこんな事をしたのだろうか。
クロードと話そうとして口を開けるも、私の口からは猫の鳴き声がするばかりだ。
「……ふむ。まだ眷属になってから時が浅いと、人の身のように言語がうまく使えないのか。まあ、いい。私が目を離さなければいいだけの話だからな」
クロードはくゆりと尻尾を揺らして、前足で私の身体をむにむにと揉んだ。私の全身を検分するように見つめながら、クロードは口を開く。
「猫の身体にすると、お前は存外小さく、弱い。これで既に成人していると考えると、強くなる見込みがないな。――だが、私と共に在れば問題ない。私は臣下と定めた者は傷が付かないように守る。かつてお前が私にしてくれたようにな」
「……、ううー」
「なんだ。不満なのか?」
こんな事は望んでいない。私は尻尾をぶんぶんさせたり前足を威嚇するように掲げたりして、必死にクロードに訴える。
クロードは首を傾げて考え込んでいるようだ。
「……妙だな。アーサーから解放してやったのに、今のお前は前よりも不満があるように見える。私とアーサーと、何が違うというのか……」
「にゃー、うー」
「……そういえば、お前とアーサーの所に行った時、ずいぶん熱に浮かされたように奴を見ていたな。アーサーもお前をその目で見ていた。この姿になっても、あの熱が恋しいのか。――なら、私はそれを叶えよう」
「……、う?」
「人間がどのように愛情を発散するかは知識にある。臣下を満足させる為と思えば、私が面倒を見るのもやぶさかではない」
そして、ゆっくりとクロードの顔が近づいてくる。
……愛情?
発散?
クロードに人間と同じような感性があるのかはわからない。でも、人間の行動をなぞる事は出来るという事か。
私が愛情に飢えていると判断したならば、クロードがアーサーの代わりに愛情を……。
あなたにおすすめの小説
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!