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12_レヴィウス様と二人でいられるなんて光栄です③
しおりを挟む(レヴィウス、初対面のときにもそんなことを言っていたな。……本当に嘘が嫌いなのね)
彼が私に対して過去のことを教えたのは、レヴィウスが私を重用しない理由について納得してもらう必要があったというのもあるだろうけど、彼自身が父に隠し事をされて傷ついたことも関係しているのだと思う。
(人間に対してわざわざ過去の辛いことを教える必要は無いのに。誠実なのね、レヴィウスは……)
ちなみに、私は全くレヴィウスに対して誠実ではない。
今の話を聞いた上で、媚び売りと嘘は継続しようと思っている。
本当のことを言って怒りを買って始末されるのはごめんだからである。
初対面のときにレヴィウスに殺されかけた恐怖心は今も忘れていない。
(でも……レヴィウスは、ずっと色んな相手に対して不信を抱いて生きてきたってことなのよね。人間に対しても、魔族の仲間に対しても。それはしんどいだろうな)
レヴィウスとスケールは全然違うが、家の中でも安心出来ない――という辛さについては私もよくわかる。それを取り除けるものなら取り除いてあげたいと思う。
私はレヴィウスに対して完全に誠実であろうとしている訳ではないが、彼を積極的に傷つけたいとは思っていなかった。作れるものならみんなが過ごしやすい環境を作りたいと思っている。それが一番私の安寧に繋がる道だろうから。
それに、レヴィウスはカストロの一件があったからこそ人間に対して多少締め付けを厳しくしているらしい。
総合的に考えて……レヴィウスの過去のわだかまりを解決出来たら、私にとっていい影響があるのではないかと踏んでいる。
私がいずれ人間界に戻ることになっても、人間の世界に影響をもたらす魔族、魔族に対して捧げ物をする人間、という形としてレヴィウスとの関わりは継続するのだから。
(レヴィウスの話を聞いて、ちょっと気になったことがある。レヴィウスは過去に起きたことを誤解している可能性があるの。それを教えるくらいなら……怒りを買ったりしない……って思いたいな)
私は息を深く吸い、そしてレヴィウスに向き直った。
「レヴィウス様。……僭越ながら、意見を申し上げても良いでしょうか」
「意見だと?」
「今のお話をすべて聞いた上で思いました。レヴィウス様の父親……ゴルディウス様と、カストロとの間にあったこと。それについて、私の見解は少々は異なります」
「なに……?」
レヴィウスが赤い目を細めて私を睨み付ける。
「……やはり、所詮お前は人間だ。どんな話をしようと、魔族である俺と意見が合う訳はないか」
レヴィウスがどこか自嘲するように言う。
……怖い。
でも、ここで止める訳にはいかない。
「レヴィウス様。私は……あなたの苦しみに触れました。その気持ちが軽くなる可能性があるなら、進言したい……僭越ながらそう思いました」
「……。だが、もうずっと前に起きたことだ。過ぎたことはどうにもならない」
「私は、その前提に誤解があるのではないかと、そう考えています」
「誤解?」
私はレヴィウスに頷く。
「レヴィウス様は、ゴルディウス様とカストロの親睦会で起きたことは推測でしか知らないと言っておられましたよね」
「――ああ、そうだな。魔族側にも人間側にも記録は残っていないから、推測で埋めるしかなかった」
「それなら、カストロがゴルディウス様を騙して殺害したという出来事は本当は起きていなかった可能性があります」
私の言葉に、レヴィウスは首を傾げる。
「それなら……何が起きたというんだ? 父の……ゴルディウスの方がカストロを殺害したとでも言うつもりか。だが、ゴルディウスの日記が残っているのだ。これは誰に見せる訳でもなく私室の本棚に置かれていたもの。それにすら嘘が書かれていたというのは考えにくい。それに、魔族側が人間を殺そうと考えていたなら、返り討ちに遭うまでもなく殲滅していたと思うが……」
「ええ。ですから、ゴルディウス様が人間を殺害しようとしていた訳では無いと思うのです」
「なら、どういうことだ? 互いの部下が命令を無視して殺し合ったとでも言うのか?」
レヴィウスの疑問に、私は言葉を続けた。
「ゴルディウス様とカストロが開いたのが『親睦会』だというのが重要ではないかと思うのです。親交を深める会を開くとき、食事を出して歓待を行うことが多いです。お二人もそうしたのではないでしょうか」
「食事……。そういえば、日記にも人間側の食事の味を褒めている記述はあったな。魔族と人間の交流を必要以上に増やさないために、父の死後にその情報が広く伝えられることは無かったようだが……」
「これは推測になってしまいますが、魔族と人間で親睦会を開くにあたって、『互いに食材を持ち寄ろう』という話になったのではないでしょうか。そしてゴルディウス様は、歓待のために彼が作った魔石を振る舞ったのではないでしょうか? ですが、それが人間の王……カストロにとっては毒になってしまった。それが争いの発端になってしまったのかもしれません」
「――なんだと?」
私の推測に、レヴィウスは目を見開いた。
「……そうか。確かに、魔族は晴れの場では魔力を多く含んだ魔石を振る舞うことが多い。ゴルディウスの日記にも、いつもよりも魔石を多く作ったという記載が残っていた。それを食事に出したというのは本当かもしれない」
「私が魔石をいただいたとき、その魔力の強さに身体がうまく馴染みませんでした。魔族は人間の食事を何でも味わうことが出来ますが、人間の体質だと魔族の食事を味わうには工夫が必要なのかもしれません」
「だが……」
レヴィウスは顎に手を当てて考え込んでいるようだ。
「味が口に合わないなら、すぐに摂取するのを中止すればいいではないか。食べ過ぎたら毒になるようなものがあるのは否定しないが、それなら食べなければいい。カストロは何を思って魔族の食事を食べたんだ?」
「恐らく――カストロは、ゴルディウス様の気持ちを無碍にしたくなかったんです。彼が用意してくれたものは全部受け取りたかった。そして、魔族と人間は仲良くなれると部下たちにも示したかった。だから、多少無理を押してでもゴルディウス様の用意したものを食べ続けたのではないでしょうか」
クリムトから魔石を受け取ったとき、ひとつ食べるだけでも中々骨が折れた。
私はそこで食事を変更することを申し出たけど、カストロが延々と食べ続けたとしたら……。
レヴィウスは暫く沈黙していたが、やがて少し呆然とした様子で呟く。
「それでは……父の用意したものでカストロが死んでしまって、魔族側が毒を入れたと判断されて、殺し合いになった……そういうことなのか?」
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